ニュウの薬草風呂
54話 ニュウの薬草風呂
開運道場の裏は主の豪邸。
ボクらは宿をとることなく、部屋をあてがわれた。
師匠と旅に出て依頼はじめての一人部屋。
寝台があるだけの狭い部屋だが。
それでも安宿のトコに布一枚のゴロ寝に比べたら、ぜんぜん違う。しかもタダだ。
いつもマン・ケイ、師匠の三人だったからなんかちょっと寂しい。
マン・ケイは隣の部屋だ。一人だとナニしてるのか。
「マン・ケイ、なにしてんの……」
「アニキ、戸を叩いてから開けてくれ!」
マン・ケイは寝台で布団を抱きしめていた。
「床技の練習だよ、いつあの女主人と……」
「それは……ないと。あの人は師匠と、こもりきりだ。二人共昨日の夜から見てない」
「そう言えば、朝飯のときも……」
外の稽古場に行くとチャオが。
「師範から許しは出ている、おまえたちに我が大河拳法を教えよう」
あの主人のおかげでチャオの大河拳法をひろめる機会が出来たな。
良かったなチャオ。
「あ、ニュウ。何処に行くんだ?」
「アロン、お風呂だ! ウーちゃんとリーちゃんが、もう入ってる。アロンも来い。今日のは色がついてる!」
来いって、女風呂には行けない。
「色?」
「ニュウが薬草を作って入れた! 緑の湯で疲れがとれる!」
「疲れって、リーさんたちそんなに……。あの人は風呂好きか……」
「実はニュウはお風呂はアロンたちと会って、はじめて入った。気持ち良くってハマった!」
「そうか……入れるときに楽しめよ。また風呂の無いとこにも行くだろうから」
なんだかんだとみんな楽しそうだな。
カツラの町にでも行って見るか。
「アロン、ドコへ行くの?」
「リァン、町へ。リァンも行くかい」
「うん!」
リァンと二人で町に出るのは人形売りに出たとき以来だな。
カツラの港。
「港は、まえのビレの町と同じようだな」
「そうね、売ってる物も似てる」
「やあ、お二人さんカツラの町は初めてかい?」
「なんだ? キミは」
子供だ。三つ編みおさげの女の子。
「カツラの町の観光案内をしてるマオってんだ」
「観光案内。そんなのいらないよ。好きなトコ勝手に見るから」
「そんなもったいない、カツラには知られざる名所が沢山あるんだ。後で人に言われて知らなかったは、損だ」
「いや、もう来ないかも知れないから……いいよ」
「オイ、マオ。また勝手に商売してるな」
「おお、コレはお客人じゃないですか。ご迷惑でしょう。こいつ」
開運道場の人たちか。
シャツの胸のあたりに開運道場と書いてある。
「おいっマオ、商売したければウチでちゃんと許可とりな!」
「ヤダね、許可代払ったら儲けが減るだろ!」
「イテッ、コラ待てガキ!」
「すみませんお客人。オイ、ガンほっとけ!」
「しかし、あのガキオレの足を蹴ったんで」
「そりゃーおまえの修行がたりないからだ。ガキの蹴りも避けられないのか、あっあいつ」
マオという少女を追った男が、デカい男に。
「お客人、お騒がせします。では。おい、ガン、どうした」
「今、俺の足を踏んだよな」
「わざとじゃねぇ。スマン!」
「開運道場のあんちゃんよぉスマンですむと思ってんのかい」
「ギャン、踏み変えしたらどうだ」
「ギャンに踏まれたら三日、四日歩けねぞ」
「ソレは勘弁してくれ……仕事が」
「開運のあんちゃんよ。許すかわりに俺の股をくぐって、ワンと鳴け」
「そりゃいい、オイヤれよ!」
「オイ待て! おまえら覚醒道場の」
「ああそうだ。開運のぉデカい面して、町歩いてんじゃねーよ。町の半分は覚醒のジン先生の縄張りだ」
「縄張りだぁ〜そんなの貴様らが勝手に。ガンを離せ」
「こいつは、ウチのギャン兄ィの足を踏んだんでよ、わびをいれさすとこだ。おまえも見てな」
「すまねぇアニキ……」
「なんだか、もめてるみたいだな。どうする」
「お世話になってるからね、ほっとけないわアロン」
「ホレ、早くギャンの股をくぐって、ワンと鳴け!」
「ガン、やめろ! わざと足を踏んだんじゃないだろ。普通のわびで」
「おい、やられたらやり返せが俺達の流儀だが、ギャンに踏まれたんじゃケガするからな、それなら無傷で済む、わびのやり方だ」
「そんなの屈辱的すぎる! 貴様ら、我ら道場の門弟がケンカ出来ないのをいいことにぃ」
「やめろ、チン。俺のせいで罰をうけるぞ」
「おまえら開運トコの師匠に尻たたかれるのか、あの美人にならオレたたかれてぇぜ!」
「俺、あの美顔で頭突きされてぇ〜」
「貴様、死ぬぞ。師匠をあまくみるな!」
「あの美人に蹴られて死にてぇ。アハハハハ」
「なら、いつでもウチの道場に来い入門は歓迎だ。オイ、ガン。立て、股などくぐっる必要はない。頭を下げろ。それでいいだろ」
近くまで行くと開運道場のガンとかいう男が大男に頭を下げた。
「なに!」
大男は、頭を下げた男に膝蹴りを。
「ナニをする!」
「誰が頭、下げろと言った」
「このヤロー」
「待て、ケンカはだめなんだろ」
ボクは腕を上げた開運道場の男の手首を掴んだ。
「お客人……」
腕に力が入っていて震えてるのがわかった。
つづく




