遊天楼
4話 遊天楼
「五十一、五十二、五十三……」
フーッ指立てはこれくらいにして、ううっ指に感覚が。
「ニュウ、肩ぐるまだ」
指立てで背に乗っていたニュウを肩に乗せて、膝曲げ百回だ。
「い〜ち、にぃ、さん……」
「やけにはりきってるなアロン……この間、ボコられたのが、よほどこたえたとみえる。あまり無理しても良くないぞ。ほどほどにな。出かけてくる」
「いってらっしゃい師匠」
「いってらっしゃ~い。ししょー!」
腕に重りをつけ、前に出し。
ニュウを肩に乗せ中座のまま停止だ。
「ニュウ、数を数えて」
昨晩、ニュウが。
「どうしたのアロン。元気ない……」
「ああ……ボクなぁ小さい頃からさぁ……。なさけないよ。チンピラにボコられ、カネ巻き上げらて……かわいい女の子の前で気を失い運ばれるなんて……まったく、なさけない無力でダメな男だよ……」
「アロン……元気だして」
ニュウが、いつも大事にしている鞄からなにか取り出した。
それは、本?
「アロン、強くなる法力がある!」
「法力?! その本は魔導引の術書か」
ニュウは本をめくりだす。
「本とか、持ってきてニュウ……字が読めるのか?」
「小さいときから教わった」
「今も小さいけどな……」
「あった。魔導引の法術だよ。『魔王の拳』……魔天より魔王の力を呼び寄せ我が力とする……」
「魔王の力を我が力にするだって、そんなコト……出来るのか」
「それには……魔王力にたえられるだけの強靭な体力と精神が必要と書いてある」
「強靭な体力と精神」
「まだ、ある。それに力を我がものにする人間は、善良で純粋な心の持ち主であること……あと童貞に限るだって。その血も必要……血もいるのか」
「アロン、童貞か?」
「あ、まあこの歳だし。あはは」
「じゃアロンなら大丈夫だ……けど、童貞って?」
はあ、なんていえばニュウにもわかるんだ?
「それは、だな……まだ大人じゃないということだ」
なんてーのでいいか。
「そういうことか。アロン。あたしもまだドーテーだ!」
「あのなぁ女の子は童貞という言葉はつかわないんだ」
「そうなの? じゃなんてーの」
「はぁあ〜それはだな……女の子は生娘って」
「木娘? そういうのか……わかったニュウは木娘だ」
「百八十一、百八十二、百八十三……」
体力つけて体を。
ニュウは魔導引派の娘で、あの歳で字も読める。
ニュウを信じてもいいか。
魔王の力を得て強くなるんだ。
午前の鍛練を終え、昼寝しているニュウを
おいて外へ出た。
あの子は…。
まえの場所には居なかった。
あとは。
「あの、すみません」
道行く太った大男に声をかけた。
「ゆうてんろうって何処だか知ってます?」
「遊天楼。知ってるよ。俺は今からソコに行くとこだ。おまえも行くのか?」
「え、まあ……」
「そうか、初めて行くんだな。あそこはな、イイ娘がたくさん居るぞ」
イイコがたくさん?
「俺がイイ娘紹介してやろうか」
「あ、いや知り合いが居るもので……」
「そうか、まあいい。一緒に行こう」
身なりは良く金持ちそうだ。その大きな体の後ろにいたらボクは見えないだろう巨漢だ。
遊天楼。
ここが、ゆうてんろう。
「あ〜らマンさん、又来たの」
「チュー。今回は友だちを連れてきた」
「若い子ねぇ坊やはじめて?」
「あ、はい……あ、あのココにリアンという人は……」
「リアン……リァン・スーのことかしら。リァンなら空いてたわよ。誰かに聞いてきたの?」
「え、え〜一度外で会いまして……」
「そう。じゃ二階のカワズの間で待ってて彼女ならすぐに来るから」
二階のカワズの間って。
「マンさんは、あちらの部屋に行きましょ」
「昨日のアレ、またやってくれ」
「あんたもスキねぇ」
なんだ、この部屋は寝台があるだけだ。
隅に小さな椅子が。
このまえのお礼を言いに来ただけなんだけど。
こんな部屋で待ってていいのかなぁ?
「ご指名のリァン・スーです」
あ、来た。
「あ、はい。どうぞ」
扉が開いた。
アレ?!
あの子じゃない。
ここへ一緒に来たあの人みたいな巨漢。
「え、マンさん?」
「え〜マンさんとはナニよ。あんな人と似てないわよ私。ん〜かわいい坊やね。初めてだって」
その大きな女は服を脱ぎはじめた。
「あ、あのあなた……人、人違いです」
「なに? 私ね、こう見えて床上手なの」
コレは、ヤバい逃げなくちゃ。
アレ、扉が開かない!
「どうしたの、他人に最中に開けられないようにちゃんと締めたわよカギ」
ええ、カギかけたの。
「さあ、早くあんたも脱ぎなさいよ」
わぁ肉おばけに捕まった。
なんてぇ力だ。服を脱がされた。
ボクは最後の一枚でなんとか巨漢女をつきはなし、扉に体当たりをした。
扉は壊れたがそのまま廊下に。
上に女が乗ってきた。
岩かこいつは。
動けない。
「助けてくれ!」
「おや、若いのどうした?」
廊下を歩くおっさんたちが集まってきた。
「おい、そいつはイイ女だぜ!」
「名器の持ち主だ。あやかりたいぜ!」
あははは
「あんた、私だって人気あって忙しいのよ間違いですまないわよ。ホラ、さっさとヤって終わらせましょ」
「まだ、まだダメなんだ。ボクは魔王の力が……」
「なに、わけのわからないコトを……。廊下ではやっぱりまずいわね」
ボクは巨漢女に抱えられた。
バケモノかこの女、動けない。
もう終わりかなぁニュウ。
魔王の力が欲しかった。
「廊下でなんの騒ぎかしら?」
つづく