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天々楼へ

36話 天々楼へ


「え、今のはおまえか?」


 足元に居る犬を見たら?


「なんだ、おまえ犬かと思ったぞ。なんで頭の上に耳が……」

「アロン、よく見ろ。そいつは立てるぞ、亜人の子だ」

「ホントだ、立った。普通に着物を着た女の子だ。ボクの足にしがみついた。亜人の子……はじめて見た」


「師匠!」


「マン・ケイたちだ」


「屋敷に入った連中はほぼ片付けました」

「って、あんたはなにもしてないでしょ」

「まあ、私より強い方がたくさん居たもんですから」


「センさんの娘さんのアンも強かったわ。それからチャオが酔拳でない技を」


「ほおソレは見たかったな……」

「相手が多いと酔拳より使える大河イェン拳をね」


「ほお大河イェン拳とな、それもチャオ殿の創作か? イェンとはやはり大河英傑伝の登場人物で、たしか技の天才と言われた男。どんな技だったのか見たかったな」


「まあ腕をブンブン振り回す子供の頃ケンカみたいな技よ」

「子供のケンカだぁ……ああ見えて大勢の相手と戦うのには最適な拳法だ。まだ、ある棍術では…」


「コレはすまん、ウチのがご迷惑を……」


と、町中から坊主頭のがたいのいいおっさんが、ボクの足もとの子供をかかえた。


「コノヤロードサクサにまぎれて逃げやがって」


と尻尾を掴んで宙吊りに。


「おい、おっさんやめろよそいつは何も悪さをしてない」


「あ、私ねその奥の曲がった所で天々楼とゆう店をやってましてね。私、見てました。あなた方の活躍。あっという間にむこうの大将をたおしてしまいになって助かりましたよ。こいつは店が襲われたとき逃げ出しましてね」


「あんたのトコは遊郭か? そんな亜人の子も」


「えぇ、亜人ですからねぇ。こう見えても子供じゃありません。他にも亜人を……世の中けっこう好きモンが多くて。中には普通の女より亜人が好みな客も」


「まだ居るのか? 亜人は」


「おや、お坊さん。興味がおありで。そうだ、町を救ってくれたお礼もあるし、どうぞウチに」


「天々楼かぁ久々の娼館じゃないですか師匠! 行きましょう」


「そちらのおかたは?」


「弟子だが、かまわぬか?」


「お弟子さんなら、どうぞ」


「旦那さん亜人とやらは他にどんな?」


「先日荒れ地の遺跡で見つけましたトカゲ女とか。こいつがまあ肌触りが冷たくて良いと。トカゲと言っても見てくれは女で尻尾があるダケですからキモチ悪くありません、あと人気なのは黄狐の娘で髪は金色で容姿端麗で、言葉も達者。頭には耳がなければ王宮にも出せる美人で」


「黄狐……女狐か。アロン、もしや」


「旦那さん、そいつはいつ頃から?」


「お若いお弟子さんも興味がありますか。あれが来たのは……」


「とにかく、行ってみるか」


 ボクは師匠の後を。


「師匠私も……面倒だ荷物は置いていく」


「ああ、行っちゃった。男ってやーねー」


「おまえは生娘か? 女を欲するのはおとこサガだ。ナニ、ヤキモチをやいてる」

「ナ〜ニ? なんでわたしがヤキモチを」

「アロンはあんたの男だろ、そこに子供まで居るし……ゴメン、子供が居るんだから生娘ってことはないか」


「チャオ、ニュウは木娘だ!」


「だろうな……」


「でも、アロンとリァンは親じゃない!」


「アレ、違うのか。てっきり」


「アレは怪しまれないための師匠ついたウソよ。それより、この荷物どうするのよマン・ケイ。こんなとこに置いていくなんて」


「それならあたいが」


 チャオが肩掛けに腕を通して肩に、力を入れて持ち上げた。


「おお、さすが大河のチャオ!」


 あれ、どうしたの?


「動けない、この荷物には何が入ってるんだ……うっ……あの太っちょはとんでもない怪力だぁ」


 ずどんと、荷物を背負ったまま尻もちをついたチャオ。


「そうね、みんなの着替えや非常食。それに鍋と椀かな……あ、こないだお婆ちゃんの用心棒代もあるわね」


「ニュウの魔導引書もある!」

「そうだ、ニュウ。荷物は魔導引の法でどうにかならないの?」


 すこし考えたニュウは荷物から自分の鞄を取り出すと中の本を読んだ。


「魔導引だって、ニュウは本が読めるのか……」


「あった。黒竜巻の法」


「チャオどけて……さて、黒き名の旋風よ。われの名にしたがえよ、トイ・ラフ、トスロ!」


「おあ、黒い小さな竜巻が出来たぞ!」


 竜巻は荷物に向かうと荷物を巻き上げた。


「よし、そのままニュウたちについてこい!」


「すごいわ、これなら荷物運びいらないわニュウ」

「コレは持続力が弱いから荷物運びには使えない」



 天々楼。


 僕らは二つの部屋に。マン・ケイだけが別部屋だ、まあ寝台が三つある部屋は無いそうで。


「お客様、どのような女性を」


 入ってきたのは、あのがたいのいい坊主頭の旦那ではなく。遊天楼の女将にも負けない美しい女将だ。

 あ、遊天楼の女将は師匠のおかみさんだった。ごめん師匠。


「旦那様に言われてます無料ですので好きな女性のごじょうけんを……」


「旦那さんに黄狐と呼ばれる亜人がおると」


「で、そちらのお若い方は?」


「あ、あのそうだなぁ……あの犬みたいな耳の亜人の子を……」


 待ってるとすぐに美しい黄金の髪をした女性が。頭のうえに耳が。

 でも、切れ長でまつ毛の長いその虚ろな目はあの森で会った女狐とは違っていた。


 その人の腕にはあの亜人の子が抱かれていた。

 でも亭主は見た目は子供だが違うと。犬や猫の子が一年もするど一人前になるのと一緒かな。

 狐の女性は、その子をボクのひざの上に。


「また会えたね、名前は?」


「ツアンレン、忘れたか。わたしはあんたより早く地上におりた。ちょっとしくじってな亜人の腹の子の中に。私はな、半分は人だ。グールという亜人の子。名は……店の女将が付けたアルだ」


 ツアンレンより先におりたって。


「お客様、いかがなさいましょ?」

「久々に動いたんで体をモンでいただこう」

「モムだけでよろしいですか?」


「ああ」


「では、お着物を脱いで寝台に腹ばいになってください」


 師匠は裸になり寝台に。


                 つづく

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