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才能有り

32話 才能有り


 大会三日目が始まる前に。


「とうとう、決勝を前にして大会中止をしなければなりません!」


 会場内は、どよめきと罵声の中。そこへ甲冑姿の男が闘技台に現れて。


「私は華中国中央隊、臨時隊長のラ・ムゥである。辺境の小国が猛威をふるい、今日にでも周辺に姿を現すと思われる。大会は、私も楽しみにしていたが、状況が状況なので仕方あるまい。で、そこでなんだが、大会参加者でも、観客でもこの町の防衛軍に参加を求む」


「臨時隊長?! 本来のコン将軍はどうした!」


「たしかに本来はコン将軍なのだが。将軍は、前戦で戦死なさったのだ……」


「コン・キョンマーといえば華中で五本の指に入る将軍ですよね師匠」

「うむ」

「ソレが脱国した小国との戦で……」

「だから、止められずにこの辺りまで。なかなか強力な兵を持ったらしいな小国とやらは」


「ここまでくると、戦の話は実感しますね師匠」

「私、町に居たら徴兵されてたかも。軍隊なんか入りたくない!」

「マンケー。兵隊になれば痩せるぞ!」

「そんな痩せ方したくないです!」


 大会場に特設入隊受付が出来た。

 大会中止で気が抜けた男たちで戦で気を晴らそうという連中が、受付にならんでるのかも。

 しかも丁度武術大会で華中の猛者たちが集まってる。兵士募集には絶好の場所だ。


「裏の武術家では、戦で名をあげるのが手っ取り早いと考えてる者も多いのだろう。平和な時代では出来ないことだからな」


「でも、大会とは違う。殺し合いだ。死んで名があがっても。意味がないですね。さすがにポォやチャオは……」


「あたしらがなんだって?」


「チャオ、ポォ師匠も」


「二人は兵隊には志願しないと」


「あたりまえだろ。なんで戦でいばりくさった上官に命令され死にいく」


「二人は、今回の戦は、ヤバいと」


「だろ、都の将軍コン・キョンマーが戦死したんだ、ヤバいだろ。武術家は負けるとわかった戦いはしない……と、お祖父ちゃんが」


「そうだな、さすが師匠の孫だ」


「師匠って、坊さんの師匠はポォの爺ちゃんか。ラン・ロウシュン! じゃアロンはラン師匠の孫弟子か」


「アロンはあたしの弟子だ。まあ孫弟子に変わりないか」


「リュー師匠にはボク何も武術は教わってないんですけど……」


「教える必要ないだろ。なぁチビスケ」


「うん、アロンは強い。魔王だ!」


「魔王!」


 二人の娘武術家が声を揃えて。


「そうか……で、強いのかアロン!」



 中止になった大会会場を出て宿へ向かう道でリアンが人形を。


「アロン、大会が中止になったんだって」


「ああ、誰かに聞いたの」

「お客さんに。でも、売れたわよ。チャオとポォの人形。あ、コレは最後の一体。チャオとポォにあげるわ」


「おお、コレがあたしか。ちゃんと棍術棒も持ってる」

「あたいのはひょうたんが。コレ、何体も一晩で……コレも一つの才能だよリァン。嬉しいよ。もらうの悪いからカネ出す」


「いいわよ見本(モデル)代だと思って。安いけど」


「ちなみにボクも手伝ったんだ。顔もボクが描いた」


「へえ~アロンには、そういう才能もあったんだ」


「アロン、絵上手。特に女の裸!」

「コラッ、なに言ってんだニュウ!」


「ホントかアニキ、今度遊天楼のおねえちゃん描いてくれ!」

「私も見たいぞ。アロンの裸婦画が」


「師匠まで」


「アロン、あたしの裸を描いてくれ!」

「ポォはダメだよ。つるぺったんで筋肉質だから色気もなんにもない。その点あたいの方が胸もお尻も大きいから描きがいがあるだろアロン」


 と、チャオが悩ましいかっこうをした。

 たしかに描くならチャオだ。


「アニキ、描くときは呼んでくれ助手をするから」


「マンケが来たらやめるから」


「掛け軸にして、飾るから。『悩ましのチャオ』と、題もつける」

「そういう問題じゃないわよマンケには裸見られたくないの」


「いやぁもう見てるけど……」

 

 と、ボクのそばで小さい声でマン・ケイが。

 温泉のときにか、たしかに師匠が開けた穴から。

 ソレは知られてはまずい。


「マンケイ、あのときは湯けむりが少しばかり多かったな」

「残念です師匠」


 女たちには聞こえてないよね。


「おや、また会ったね」


 三人組じゃないか。


               つづく

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