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アロンの記憶

3話 アロンの記憶


「痛てっ!」

「あ、すみません」


 いけねぇ。女の子に見とれてたら人とぶつかった。


「おい、まてガキ!」


「は、なんですか?」


「なんですかじゃねーよ。ダチの肩、どうすんだよ」


 肩? さっきぶつかった。


「痛てぇよお、肩が、骨が砕けたよぉ」


 振り返ると男が肩をおさえて地面を転げ回ってる。


「おい、大丈夫か」


 連れの男が肩がどうとか、ちょっとふれただけじゃないか。砕けた?


「そんなバカな……」

「ダチはよぉ骨がもろくなる病気なんだ。治療費払ってもらおう」

「そんなウソだろ。そんな病気あるのか? 治療費? 出せないよ」

「役人に訴えてもいいんだが、ここで治療費もらえばなすむんだよ」


 こいつら、ゆすりたかりってヤツか。


「なら、訴えてもいいよ。時間はたっぷりあるから役人のトコに」


   ガッ


 うっ、いきなり殴られた。

 後から仲間が。


「早く治療費だせよ!」


 背中を蹴られて倒された。

 倒れたら、男たちが足で踏みつける。

 ウッ

 腹を蹴られた。


 なんだ、こいつら通りの真ん中で。

 周りの人たちは。


「やめって!」


 ニュウ、来るな。逃げろ!

 テッ、今度は尻を蹴られた。


「うるせい、ガキはどいてろ!」


「に、ニュウに……手をだすな……」

「うるせぇ黙ってカネ出しな」


 ウッまた、尻を蹴られた。

 何人居たっけ? こいつら。

 アレ、骨が砕けたというヤツも。


 誰かがボクの懐に手を。


「ちえっ、しけてやがるぜ。これっぽっちかぁ。アニキ、これじゃ治療費どころか、昼めし代にもなんねぇ」


「うっか、返せ……グッ」


 最後に蹴りをいれてヤツらが。


「おう、行くぜ……次は素直に出せよな……どけどけ! 見せもんじゃねーぞ」


「龍虎山道場のチンピラだよ、アレ」

「ひでーことすんなぁ」


「警護隊長が亡くなってから奴ら、したい放題だ。警護隊は、何してる?」

「新しい隊長はいつ来るんだ」


「噂では龍虎山道場の連中が隊長を殺ったとか」

「しっ、そんなコト聞かれたらあぶないよ」



「アロン、大丈夫?」

「イテテ……あいつらあっちこっち蹴りやがって……」

「大丈夫……キミ? あいつら武術道場のチンピラよ」


「そ……」


 目の前にあの人形売りの子が。

 見えたと思ったらボクは。


「アロン!」

「しっかりして!」



 ここは、ボクが子供の頃によく遊んだ原っぱだ。

 ボクだ。手に何か。


 ソレはボクが好きだったリンリンの人形。


「なぁにアロン、わたしを呼び出すなんて」

「あ、ありがとう。わざわざ来てくれて」


 コレは子供の頃の。


「え、コレってわたし」

「うん、ボクが作ったんだ」

「なんか、ダサい服着てない」

「ああ、いい生地買えなくってゴメン……」

「まあいいわ、もらってあげる……」


「ありがと、うわっ!」


 誰かが、背中を蹴った。

 ボクはリンリンの足もとに倒れた。


「なにやってんだ、弱虫アロン!」


 ガキ大将のトンだ。

 こいつには、よくいじめられた。


「あ、アロン。おデコにナニか」


 ん、なんだコレ? クサッ


 耳を引っ張られておこされた。


「臭っ! こいつおデコに、んこっ付けてるぞ!」


 耳をつかまれたまま野っ原に投げられた。


「おめぇみたいなクソヤローとリンリンは遊ばねぇよ。リンリンこいよ、むこうで遊ぼうぜ」


 倒されて泣いてるボクの尻をケトばしたトンと子分たちはリンリンを連れて行く。


「♪泣き虫弱虫アーロンはウンコ虫に玉かじられ死んじゃた〜」


 なんだ、その歌は。

 ソレを聞いて笑うリンリンの声が聞こえた。


 イヤな過去だ。


「ちくしょう!」


「アロン! 目が覚めたかアロン」


「気がついたかアロン……丁度、飯を食べ始めたところだ。飯は食えるか? 食えるなら早く来い。冷めてしまうぞ」


「師匠……」


 ボクは宿の寝台に寝かされていた。


「食べたい……テッでも口の中が……。ニュウがここへ?」


「違うよ、あのいい女が一緒に」


「いい女? もしかして人形売りの」


「そうだよ」


「いい女。聞き捨てならんなチビスケ、どんな女だ?」


「人形売りの少女です。ボクと同じくらいの歳の」


「子供か……」


「ゆーてんろーのおねえちゃんだよ。そう言った」


「ナニ、ゆうてんろう」


「ゆーてんろーのリアンって」

「チビスケ、その娘はゆうてんろうのリアンと言ったか……」


「師匠、知り合いですか?」


「う〜ん。もしかしたらな」


               つづく


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