再会の小旋風
29話 再会の小旋風
ボクは一人で町の中央にあるという闘技場へ行ってみた。
明日開催が予定されるから。中央には台が設置してある。あの上で闘うんだろ。
他の場所で「散打」とかいう格闘試合を見たことがある。
台上で相手を倒すか、台から落として退場させるかみたいな、感じだろう。
周りに観客がゴザや椅子を置いて見るんだろう。明日あの門の前には、おお。
もう並んでるぞ。席取りか。
「アロン、やっと来たか」
「チャオ、もう参加受付は済んだのか?」
「ああ、間に合ったよ。あたいが最後だってさ。ただ。今年は北辺の戦のせいで途中で中止になるかもしれないんで、そのときはあきらめてほしいと言われた。まあ、この大会で一勝でもすれば名が売れるからな……」
「なるほど。大河酔拳のお披露目とでもいうのかい」
「まあそんなとこだ。優勝して賞金やら寄付金がもらえれば道場でも開けるしね」
「まあ、見るがいい。あっちこっちに参加する猛者たちがうろうろしているだろ」
たしかに、いかにもな武術家らしい人間がこの町に来てるのがわかる。
「連中の中には宿がとれなくて、その辺で野宿や布張って寝てる奴らも。アロンたちは宿はとれたかい?」
「ボクらはシン……。あ、師匠の知り合いの宿に」
あのシン翁のコトは知り合いということにし。あのワン婆さんは别人ということにしよう。
チャオは、あの婆さんの前で裸で酔拳を披露したという。
男と知らない方いいだろう。
「チャオは?」
「あたしもその辺で野宿かな……あ、あたいワン婆さんに用心棒代もらっていない。あの婆さんは、どうした?」
「ああ、婆さんは、この町にある息子のトコに無事に」
「おや、チャオ殿。こんなトコにおったか」
わ、ワン婆さんだ。また変装して来たのかシン翁。
「用心棒代だよ。泊まるトコがなかったらわしの知り合いに聞いてやろうか。明日試合なら野宿はしんどいだろう」
ワン婆さんは、カネ袋をチャオに渡し。
「そいつはありがたい。お願いしたいぜ婆さん」
「そうかい、じゃついてくるがいい。アロンさんや、あのお坊様によろしくな」
「じゃなぁアロン、また明日、ここで会おう」
と、二人は町の中に。
ワン婆さんでも、この町で顔がきくのか。
闘技場を一周りして帰ろと。
「おまえたちは出ないのか、情けないね」
うわ、あの三人組だ。彼らも大会に出るのか?
「オレは耳がまだ……」
「俺はまだ、新しい槍に馴染んでないので出てもうまくあつかえねえ〜んで」
「なら、ワタシが一人で出るからね。まだ受け付けてるかしら」
もうおそいんじゃないのか。
「私が貴様ら三人登録しておいた」
「ティンソー様、三人って、オレらもですか?」
「とりあえず出ろ、天導引武闘派として名を世にしめすのだ」
「ティンソー様は」
「私は武闘派ではないからな出ない」
「ティンソー様はワタシより腕が立ちますよね」
「いや、お主が本気出したら私には勝てん」
「いゃ〜そんなコトは」
「わかっていたぞ、そなたが私に剣を教えてるときは本気ではなかったのを」
「ティンソー様はお強いですから、そう見えただけで」
「まあイイ、今回の大会で一勝でもして、天導引武闘派の名を世にしめせ!」
奴ら、チャオみたいなコトを。
トントン
と、背を突っつかれた。
「アロン、じゃないか」
「ポォ師匠じゃないですか。もしかして師匠も大会に」
「ああ、アロンも出るんだろ?」
「ボクは出ません」
「え、なんで大山嵐のイズルを倒した男だろ偽小旋風」
「え、ソレはすみません。師匠が、あ、ボクの拳の師匠ですが。そう云うふらしたと」
「いいよ、おかげであたしが役人から賞金を沢山もらった。あ、アロンにもわけないと」
「いいですから、とっといてください師匠。棍術の稽古代です」
「そうか、なら遠慮なく……が、アロン、あたしはアロンに棍術を教えたか?」
「ボクは師匠の棍術を見て……覚えました」
「そうか……まあいい。おや棒が二本の棍棒になってるじゃないか、折ったのか? この感じは切られたのか。さっき町で武術用具の店を見かけた。新しい棍術の棒を買おう。あたしがいいのを選んでやる」
と、ポォが連れてきた店が例のシン翁の息子さんの店。
「あ、ポォだ!」
「アロン、食後の散歩とか言ってポォと逢びきしてたの……」
「いや、たまたま町で会ってね。ポォも明日の大会に出るんだ」
「あ、おっさん。棍術棒を見せてくれないか」
「はい、コチラに」
「アロン、来い。はじめは自分でいいのを選んでみろ。重さとか硬さもよく見てな」
「ポォは、ボクの棍術の師匠なんだ……」
「ここは、宿と食堂、武術用具も兼ねてるのか。あれ、アロン。おまえもここに」
二階の宿から降りてきたのはチャオじゃないか、ということはワン婆さんがココを。
「チャオも……婆さんがココへ」
「ああ!」
「あ、チャオも来た!」
「やあ、チビスケ!」
「チャオもチビ!」
「あんたより大きいニュウ!」
「チャオ……大河酔拳のチャオかあんた!」
「嬉しいね。あたいを知ってるのか。あんたも武術家かい……。棍術使いか、もしかしたらラン派棍術の小旋風か!」
「ええ。人呼んで小旋風のポォとはあたしのことよ」
「噂は聞いたよ、大山嵐のイズルひきいる山賊どもを一人で成敗したんだって」
「そんなの噂話だから、本気にするな」
「いや、前回の大会で準々決勝まで勝ち抜いたジアチョンことアンディ・タイも倒したと」
「あの中にそんな奴も居たのか……ポォ」
「後で確認したよ。金髪の西方人の大男だ」
「ああ、奴か」
「噂話には出てこないが、このアロンも一緒に山賊退治を」
「アロン、あたいはこいつは強い男だと、見切っていた。小旋風の知りあいだったか」
「明日はラン派の棍術と大河酔拳が見れるとは、楽しみにしてるぞ。お二方。では、おやすみ」
「師匠、いつの間に……おやすみなさいってボクも同じ部屋だ。じゃ女性の皆さん、おやすみなさい!」
つづく




