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虎の湯

25話 虎の湯


「おまえたちは?」


「旅の者です。ココへ来ると、こんなありさまで驚いているんです」


 あのすれ違ったケガ人が町へ行き、知らせたんだろ。速く来たもんだ役人たち。


「隊長、この遺体が噂に聞く白虎会の……」


「の、ようだな。知らせに来た男と同じ頭巾をかぶっている。たしか、あの男は麒麟党とか……」


「おい、おまえら。この人らを襲ったやつらは、見てないか」


 隊長と呼ばれた男より少し下の位の兵士が。

 こいつらは、町の役人ではない。皇帝の軍隊の人間だ。

 町の役人とは身なりが違う。


「革命軍が動いていると聞いたが、一般人を襲うとは、野盗なみだな」


「隊長、数頭の馬の足跡が……」

「よし、追うぞ!」


「行っちまった。いそがしい連中だな、現場をろくに見ずに……」


「革命軍とか言っていたが……」

「師匠、知ってるんですか?」

「いや、噂話くらいだ。たしか……麒麟党とか」


「わしも町で聞いたが……野盗のまねごとをしたというのは、聞いたことがないのぉ。しかし、この連中気の毒に……金持ちの護衛についたばかりに……」


「いくか、やつらがもどってきたら面倒だからな」


「お坊さん、ちょっとまわり道をしていいかい。山道を行くと温泉宿があるんだ、病に効くと聞いたんで寄りたいんじゃ」


「温泉かぁ師匠行きましょうよ」


「とりあえず私らは雇われた身、主人が行くと言うのなら……大会には間に合うしな」


「大会とな、武術大会のことか? たいそうな武術家のあんたも出るのかい」


「私は臆病でな、見るだけだ」


「あたいは、出るから。だから大会に間に合わないのは困る」


「大丈夫だ、ひとっ風呂入ってくるだけだ。わしも大会を見たい。間に合わせる」



 荒れ地の街道にふたまたの道が

 片方はモルドの町。

 反対は山道に続いててリウランの湯場と、消えかかった文字が岩標にあるとマン・ケイが。


「坂道だが、マンケイよ大丈夫か?」

「問題ないです。温泉って、はじめてですけど痩せますかね?」


「まあ何日も滞在しないと温泉の効果はないからかどうかな」


「次からはわしと行こう」


「老人に誘われてもな……嬉しくないなぁ」

「マンケー、ニュウなら嬉しい?」

「子どもなぁ」

「木娘じゃないのがいいのか?」

「それはもう……美人ならいうことなしだ」


「婆さん、温泉は混浴なのか?」

「わしもはじめて行くんで知らんわ」


「師匠、混浴入りたいですよねぇ」

「相手にもよるがな……」


 山道をしばらく行くと、山小屋が見えた。


「思ったより小屋があるな……」


「町からそれほど遠くないから、客も多いんだろで、小屋も増える」


「なるほど、師匠。温泉マントウって売ってます」


「痩せに行って飲み食いしてたら痩せないだろマンケ・イ」


「んん~でも、売ってるんだから食べたいですよアニキ」


「ほう、山の湯。熊の湯、湯屋が何軒かあるようだ」


「虎の湯だって、白虎会の経営かな」

「チャオは字が読めるんだな。虎だからってそれはないだろ」


「アロン、あたしはこう見えて学校へ行って習った。将来大河酔拳の指南書を書くつもりだ」


「何処にするかの……あ、ここはわしが払うから」


「と、いうことだ。リァンファ、宿の状況を見てきてくれ」


「ハイ!」


 しばらくして、リァンは最後に入った虎の湯から出てきた。


「どうやら、皆いっぱいで虎の湯だけ空きがあるそうよ」


「じゃ虎の湯へ行こう」



 虎の湯の厨房奥で。


「チン、さっき来た客はもしかして……」


「旦那、コレですか」

「お頭からきた書状に、婆さんに坊主、太った男に女のガキと小僧と小娘二人。あと、中年の男……ぴったりだな……もしあの婆さんが爺さんなら金貨百枚は、持ってると……」


「旦那、お頭に知らせますか?」

「チン待て、まず婆さんを調べてからだ」



 飯をすませて湯へ。

 混浴では、なかったんでマン・ケイががっかりしている。


「アニキ、隣は女湯ですよねぇ……」


「マン・ケイ、何考えてる」


「この板塀、大分傷んでますよ隙間から女湯が見えます……」


「アロン、温泉は楽しいか?」


「ええっニュウ、なんで男湯に」


「湯屋のオジさんが子どもはどっちでもイイって」


「ああ、」

「ドンゴさん。お婆さんは」


「あ、ち」


 と、女湯の方を指さした。


「残念だ、見えるのは岩ばかりだ湯は見えない」


「だから、直さないのさ。マン・ケイみたいのが覗くの知ってるんだ」


 女湯。


「あ、おばあちゃんだ。もう入ってるの」


「湯に早く入りたくての」


「わたし、温泉は、はじめて。家にお風呂あったから」

「それは、裕福な。リアンとか……」

「違うのよ、仕事の関係上お風呂があっただけよ」

「ほお なんの仕事かの……」



「思ったよりでっかい風呂だな」


「まあチャオ、前くらい隠しなさいよ!」


「女湯だぞ、隠すことないだろ。それ、大河酔拳の股開きのかまえ! 一寸蹴り! 連続回転足払い……」


「へえ~ソレが大河酔拳なのね……でもその形はちょっと裸でするのは、どうかなぁ。お尻の穴まで見えるわよ」


「いいながめじゃチャオ、わしも若い頃は蛇形手や鶴形手を習ってた」


「そうかい、バアちゃん! 大河酔拳にも蛇形や鶴形も虎形も取り入れた。はぁ〜」


「その大股開きたまらんのぉ……」


 男湯。


「アニキ、チャオが裸で大河酔拳の形を見せてるが、声は聞こえるが姿が見えず……」


「マンケイ、除きなどとつまらんことはするな!」


「しかし、師匠も見たくないですかチャオの裸酔拳」


 師匠はいつの間に湯に。

 さすがだ気配がなかった。


 師匠は塀の方に行くと、人差し指を立てて、板を突いた。


「ほおあれが大河酔拳か……見事な開脚」

「師匠、私にも」


「ボクも酔拳が見たい!」


 

 店員詰め所。


「旦那、あの婆さん、普通に女湯に」

「なに、ではお頭たちのよみは……。外れたか。が、風呂ではまだ。わしの考えだがチン。お頭にはないしょで明日、やつらが山道を行くときに襲って見ようと思う」


「旦那、ぬけがけですかい」

「違ってもかまわん。もし、金貨のジジィなら皆で山分けだ」

「旦那も悪で……」


               つづく

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