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白虎会

21話 白虎会


「チュー・ラン! こんなとこに……」


「マンさん! それにお嬢様まで、どうして」


 そう言って、マン・ケイと一緒にかけおちした、遊天楼の娼婦チューは店内に逃げ扉を閉めた。


「リァンの姉さん。今のはチュー・ランでしたよね」


「ええそうよ。あれはチュー・ランだったわ」


「あの人、マンさんとお嬢様と言ったから間違いないよ」


 すると扉が開きチューが顔を出して、財布を投げた。


「ソレは私のだ!」


「マンさん、ごめんなさい。中身は全部じゃないですけど必ず残りも返しますから」


 と、言って扉を閉めた。


 マン・ケイは、財布を拾うと。


「チュー、カネじゃないんだ。戻るのなら君に戻ってほしかったんだ……」


「泣くなマンケイよ。女など星の数だけいる。また、良い出会いもあるだろう」


「チューは、私の初めての人で。優しいチューに私は、惚れていたんですよぉ」


「女好きのマン・ケイにしては純ね。ホラ手ぬぐい。コレで涙を……」


 いつのまにか、チューと店から出て来た男は消えてしまってた。


 彼にはまっく関係ないことなんだけど。


「財布の中身はわずだ。まあ良いか。財布は戻った……この財布は値打ちがある物で……」


 マン・ケイは、財布を頬にすりすりした。

 本当にカネよりチューだったのか?


「その財布で、夕飯くらい食えるんじゃないか?」


「今夜の私の分くらいは入ってます」


「なら、それを使いなさい……次の町に行く前にここで少し稼いでからいかんとな。大会時は宿代があがるし……」


 師匠がそんな話をしたらリァンが翌日人形を作り始めた。生地は用品屋などでボロ布を集め安く手に入れた。


「ニュウは針ごと出来る?」

「出来る、針は魔導にも使う!」


「魔導じゃなく普通の縫い物なんだけど……。アロン、もっとボロ布を探してきて。あと、綿の代わりになる物。木くずでもなんでもいいわ」


 師匠とマン・ケイは、なにか仕事はないかと町中を。

 

 ボクがある屋敷の前を通ると人だかりが。

 なんだろう?


 門の横になにか張り紙が。

 でも、ボクは字が読めない。

 張り紙を見てると。ボクと同じくらいの歳の、女の子が来て。


「ええ、護衛の仕事に金貨百枚!」


 そういうことが書いてあるのか。


「あんたも、コレを?」

「あ、イヤ。ボクはたまたま通りかかっただけで……」


 すると、屋敷内から声があがった。


「なんだろ?」


 門の扉が開いてるので彼女と行ってみると。

 中庭が見えた。

 いかにもな男たちが。

 片腕を斬られた男が転げ回ってるのを周りで見ている。


「ちくしょー痛え、痛えよぉ」


 何があったんだ?


「わかったか、この仕事は我ら白虎会が引き受ける。文句のあるやつは、この男のようになるぞ!」


 どうやら、転げ回っている男を斬ったのは中央で刀をあげている口ヒゲの大男のようだ。


 白虎会とか言ったな頭に白地に黒の虎ジマの布巾を巻いてる大男。


 斬られた男もガタイのいいなかなかの大男だが、ヤツに腕を。


「ちえっヤローには勝てねーな!」

「あのヤローみてぇに片腕になったら他の仕事も出来なくなる。帰るか」

「帰ろ帰ろ!」


 護衛の仕事をしに集まった強者どもが屋敷から出て行く。


「な〜んだ決まっちゃたのか」

「君、護衛の仕事をするつもりだったの」


「だって金貨百枚よ、普通するでしょ」

「まあ……わからないでもない。でも、護衛だからね、よっぽど強くないと」

「あら、あたし弱そうに見える?」

「うん。普通の女の子にしか見えない」


「あなたの目は節穴ね、そんなんじゃダメだわね。強い相手に出くわしたら即死ぬわよ。じゃ」


 行ってしまった。

 なんだあの子は、武術家には見えなかったけど。あの棍術のポォみたいなメラメラと燃えるような気も見えなかった。

 でも、雰囲気がリァンに似てたな。

 可愛くもあった。


 宿に帰ると玄関口の前で師匠とマン・ケイに。


 誰だろ見知らぬ老婆が。

 老婆は背に荷物を背負っている旅人か?

 ソレに坊主頭のやはり荷物を背負ったおっさん。


「おお、アロン。明日の朝ココを発つ。この老人を次の町まで連れて行くことになった」


「そのお婆さんを道連れにですか」

「道連れというより用心棒に雇われた。次の町までは荒れ地で、盗賊とかが多くてな老人の一人旅はきついと言うことでな」


「師匠がお茶屋で暴れてた暴漢たちをおさえてたのを見て、この婆さんが用心棒にと」


「なるほど……じゃ人形作って売るヒマないですね」


「それは、向こうの町ですればイイ」


「あの婆さん、意外にイイ値で用心棒を……」


 と、マン・ケイがボソッと耳打ちした。

 おっさんはお婆さんの使用人の荷物持ちだそうだ。無口だが顔が常に笑顔見える見た目は人の良さそうな男だ。


 はじめはボヤいていたリァンも同じ地に同行するだけでけっこう儲かると聞き納得し、翌朝町を出ることに。


 朝、町の中央通りを歩いてると、大きな荷馬車に二十人くらいの男たちが横や後ろに付いて歩いて来た。


「どけどけ、邪魔だ!」


 馬車には痩せた老人の姿が。あっちは、お爺さんだ。


 男たちは皆、頭にあの虎ジマの頭巾を巻いてる。と、いうことはアレが昨日の白虎会か。

 あの口ヒゲ大男が馬の前で大刀をかついで歩いてた。


「なんだか、物々しいなあの連中」

「なんでも護衛隊らしい。白虎会とかいう。あの護衛の仕事は金貨百枚だとか、あの馬車に乗ってる老人が雇い主かな」


「なに、金貨百枚だって!」


「ああ、あの老人がここの店を閉め。他の町の息子のトコまで無事に家具や財産を運ぶだけだってさ」


 と、説明したのは。


「あんたは、昨日の」


 「あたしさ、武術大会に出るんだ。その前にひと稼ぎしようかと仕事を探したんだけど、な〜にも見つからなくてさ、町を出るんだ。あんたたちも行くんだろ武術大会の町」


「なぜ、わかるの?」


「そこの坊さん、ただ者ではないよね」


「ほう、私はただのなまぐさ坊主だが」

「違ったらゴメン」


 町を出てもなぜか彼女は離れない。


「荒れ地の街道はやたらと物騒だと聞いたからね大勢の方がいいよね。まああたしは一人でも大丈夫だけど」


「なら、一人で行けば、あんたって、なんかエラそうでキライよ」


「キライでけっこうー。ねぇ坊主に婆さんたち、あたしを用心棒に雇わない?」


「何言ってんかしらこの女。用心棒はこっちだから、いらないわよ」


「小娘よ、雇ってやってもいいぞ、だが報酬は野盗が現れたらだ。一人倒して一枚だ」


「へえっ婆さん気前いいな。いいよ。あたしはチャオ。大河酔拳のチャオだ。よろしく」


              つづく

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