約束
132話 約束
戦が終わると、中央華中軍はインアルからすべての兵士を引き上げ、いままでの保安役人が残った。
その直後にタイホー県が動き、がら空きになったトウメンの王城を手に入れ、トウメンを領地にし、華中から独立。
「ジンガン国」とした。
インアル。
「あの、知事は王になったと聞く」
「ああ、ボクとの約束を守ってくれるといいが」
「華中としてはタイホーって県をたんこぶみたいに思ってたんだろ、で独立して他国になったんなら気にしないでいいんじゃないのか」
「まあそうだな、チャオ」
「独立したってことは、兄さんは外国人になったのか……」
「師匠。ボク、気になります。本当にあの国が戦をしないのか。行ってみようと」
「なら、私も行こう」
「私もご一緒させていただきますハイシン様」
「ツォンミンも来るのか……」
「ダメかしら? 足手まといにはならないわよ」
「アロン、ニュウも行く!」
「あたいも、まだあっちの王都へは行ってないからな。大河拳法を知らしめる!」
「みんなが行くのならあたしも行く!」
「リー殿、私も行きます」
「レイさんは、あそこから出たかったんじゃないのか?」
「アロン兄弟子、私はどう変わったかを確認しに」
「なんでみんな、旅好きなの? 父さま、あの女を連れて歩いて大丈夫なの母さんは……」
「別にそういう気はない。リァンファの母は一人だ」
「ほんとね、父さん……。師匠!わたしもアロンについていきます。アロン、いいわよね」
「おまえも、チビスケが心配なのか……。アヤツ少し背が伸びたの」
「べつに、わたしは。ニュウはお子様なんだし……」
「また、旅だってさ。ブタ、行くぞ」
「ブヒィィィ」
ポォは、心配だとお祖父さんのとこへ帰って行った。
なんだかんだ言っても家族だ。
アルの奴隷の腕輪をランさんがはずしたと。
アル同様、すっかりミーレン家の一家族として、戦えないマン・ケイとスウさんはミーレン家に残った。
マン・ケイはカナさんに料理を習ってスウーと店はじめたいらしい。
また、ボクたちは町を出た。
ウーサイの豚車にニュウやリァンが。
今度、は馬車を手に入れチャオが手綱を。
馬車には弟子のイオン夫婦。
師匠とツォンミンは、仲良く並んで馬2頭
もう一台の馬車には、リーさんとレイ。
ボクは徒歩だ。豚車のブタの横で、馬とは違いよく横道にそれる。
チャオの馬車が近づいて来た。
「なあアロン、あの二人はいつからデキてんだ?」
「さあ……戦のときに一緒に戦ってたのを見たから、そのときだろ」
「あんときか……」
「あの知事は王様になったとか……どんな王になったんだろうな。そう悪い人には見えなかったけど」
「そうか、意外と腹ん゙中は真っ黒ぽかったけど。まあ憎めないトコもあったな。ホントに戦をおこさなければいいな」
「あの国には、まだ見ぬ強者がゴロゴロいそうだからな、だけどそんな奴らが平和を見出したらボクが……」
「ああ、あんたみたいな正義の味方を敵にまわす奴は愚か者かバカだ」
ジンガン国王都出入口。
「貴様ら、見かけんがいつ王都に入った」
「ワシを見かけんか?」
「ご隠居、このような下っぱ兵では」
「おい、この方を誰だと」
「知らない爺さんだ、しかしイイもん食ってるらしいな、ふくよかな顔にぽっこりでっ腹でよぉ……まさか、おまえらは、いやあなた方はお偉い様で?」
「ああ、実は大きな声では言えんが王宮の者だ。ホレ、この短剣を見るがイイ」
「ソレはタイホー知事の紋章では、あなた様方は、もしや……」
「コレ、お忍びだ頭を上げろ」
「ご隠居、本当に行くんですか、まだひきかえすことも……」
「あの大河拳法の連中に会ってずっと気になってたんだよ。国内めぐり。まさかアヤツ、本当にトウメンの王を倒すとはな。約束もある。この国を華中以上の平和な国にする」
「しかし、王がいないあいだは」
「お主も心配性よの。息子がいるではないか、ワシは隠居したと。さっきおまえも隠居と……なあ元騎馬隊々長」
「はあ……。ジン・ジャダウ様の息子のあんたがいるんだ、しっかり元知事を守ってくれよ」
「はあ、知事は守ります。ただ父の事は……」
「二人共。道中、いや旅の間、ワシを知事とか呼ぶな。ただの隠居ジジィだ」
「はい、しかし、馬車にするべきでしたな。老いぼれの馬三頭に荷物運びの牛一頭。寝るときは野宿です」
「ワシャ野宿というのをしてみたかったんだ。ん、あの跳ね回ってるデカい獣はなんだ?」
「アレは、跳び大ネズミですよ。食うと美味いんで、夜食に捕まえてきます」
「元隊長、アレはうまいのか?」
「ええ、よく食事に出てましたよ。知事も食べてますよ」
「コラッ知事はやめろと。あ、ジン・カクシンが蹴られたぞ。元隊長おまえも行って手伝え!」
「知事とか言うなと言って、私も元隊長はやめて下さいよ」
「おまえの名は、なんだっけ元隊長」
「その、ナンです。ナン・スケサです。では、ハァ」
「大丈夫か、ジン殿」
「ジンでいい。あの獣め、油断したら蹴られた」
「何処かに隠れたか、姿が見えない……」
岩陰から大ネズミの首を捕まえた手が。
「おい、ソレは我らの獲物!」
肩にも何匹か大ネズミをかついでいる小僧が岩陰から出てきた。
「そうか。じゃあはい、どーぞ」
と、小僧は大ネズミを投げた。
「おまえは、あのときの!」
「知り合いか? 元隊長」
「誰かと思えばリァンに負けた隊長さんじゃないですか」
「ソレを言うなと小僧……」
「何者だ?」
「奴がトウメン王を倒した男だ」
おわり