美味モロコシ
112話 美味モロコシ
腹がへった。
食べる物を売ってる店はないかと探すとイイ臭いが。路地から。
向こう側の路地だ。
大通りをわたって、行ってみると。
店前でナニかを焼いている女が居た。
「あの、ソレは売り物ですか?」
焼いているのはモロコシだ。コレにタレを付けて焼いている。
イイ臭いがするわけだ。
臭いで腹が鳴った。
グゥ〜
「そうだけど」
「売ってくれないか」
横の台に焼けたモロコシが二本置いてあった。
女はそれを取りボクに。
カネを払うと。
「多い、釣りがないんだけど」
「ゴメン、コレより細かいのがないんだ」
「なら、中でモロコシパンが売ってる。二つ持ってけ」
「ココは、パン屋なのか?」
「見えないか? ほら上に看板が出てる」
「ああ、でもボクは字が読めなくて」
「そーか……」
たまらず焼いたモロコシを食べた。
「美味い、こんな美味い焼きモロコシは初めて食べたよ」
「そうかい、ソレは良かった。モロコシはこの県の名物で、あっ国になったのよね……」
ボクは店の中に入りパンを二つ取り背にした袋に入れた。
「あんた、兵隊さん?」
「違うけど……」
「ソレは武器じゃないの?」
「武器だけど身を護るために持っている」
「兵隊になりに来たんだろ? でも、カネは持ってるんだね」
「そんなにないけど……やっぱり食えない浪士とかが志願しに来るんだろ」
「ええ、だから買い物するのは兵隊さんになってからだ……でも、ここんとこ減った。戦に負けたからだ」
「戦に負けたから、兵士を集めてると聞いたんだけど」
「それもあるんだろうけど、その前の方が沢山来た」
「わからないでもないけど。先が見えない国で戦をする奴の方が少いか」
「あんたも、ココで……」
「旅の途中なんだ。武術の修行の旅をしているんだ」
「よく、都に入れたわね。今は旅人は」
「傭兵だと、ウソついて入ったんだ。周りは荒れ地でろくに水もないし食い物もない。カネがあっても生きられない。国境を越えて町の一つでもあればと来たが、たどり着いたのがココだ」
「そう……」
「しかし、王都とは、思えないほどさびれた町だなココは」
「男は子どもと老人以外はみな、兵隊さんに。城の後ろへ行けばにぎやかよ。兵隊さんの声で」
「そうか、王様とかは、いつも城に?」
「そうね、敗戦があってからは姿を見せないわ」
天界。幽閉雲。
「コレは番兵殿、お疲れ様です」
「なんだ女、ココはおまえのようなおなごが来るところではないぞ」
「女、いい匂いがするな、もしかしてその瓶は」
「ええ酒ですわ天上様が、何十年もお疲れでしょうと、天桃酒を……。ここに置いていきますね。では」
「おい、天上様が天桃酒だってよ」
「うん、だがこんな事は初めてだ。あの女、なんか怪しくなかったか」
「そうか? 桃のような尻をしたイイ女だったが。 ちょっと飲もうではないか、喉がかわいた」
「毒かもしれん。ソレに瓶だけ置いていっても杯も無しに……」
「天桃酒は、名前に似合わず強い酒だ。俺はだな、いつでも呑めるようにほら」
「なんだ、ソレは何かのフタか?」
「まあ、基本はそうなんだけど。ちょっと飲むのにイイ大きさだし持ち運びにもイイ」
「おい、呑む気か!」
「ちょっとだ、封を切るぜ。栓がある、毒なんか入れられねぇよ。うっこのぉ」
ポン
「抜けたぜ」
「ホントに呑むのか……」
「うぃ〜効くねぇソレに桃の香りがたまらん」
「なんともないか?」
「ああ、もう一杯。たまらん!」
「おい、俺にも飲ませろ!」
「おい、あっ瓶から……」
「ぷふぁ〜確かに美味い!」
「だろう……。あれ、なんだか体がしびれるくらい……」
「このしびれ具合がなんとも……」
バタッ
「クククック。さすがに天界人は死なぬが、しばらくは眠ってもらおう。この腰の棒が雲鍵だな、借りるぞ」
雲の中に入ると、子供が椀を並べて遊んでいた。
「わぁ、あなたは誰? ん、お父さん? お母さん? どっちでもいいや。ままごとしよ。ん〜男、女? どっちか、わからないからただのお客さんね」
「おまえは……? まさかツァンレンコーか?」
「残念ね、ちょっと違うわ。あたしの名前はツァンレンだよ」
「なんだって!」
つづく




