トウメン国へ
111話 トウメン国へ
「やはり、あんたたちか」
「トッケツのソー・ムンラン!」
「こちらの方で沢山の土煙が上がってたが……」
「それは、華中の軍隊だ。さっきまでそこに居た」
「そうか、野盗にしては多いと。インアルの町で、あんたらはタイホー県へ向かったと聞いたが、まだこんなトコで?」
「いや、タイホーから出て来たところだよ。あたいら」
「そうか、行ったのかあそこへ。無事出られたようだな…。おや、あの小僧が見えないが。まさか」
「アロンのことかい、あいつならピンピンしてて、あたいらから離れて単独行動だ」
「そうか、アレはただ者ではないなにかヒトとは違ったヤツだからな……。出来れば立ち会いたくないヤツだ。あんたもだが、坊さん」
「そうかな、私はいつでも……」
「あたいは? そのうちあんたと……」
「戦が終わって大会が開かれたらな、やれるだろう。私は無駄な勝負はしない。じゃ気をつけてな、ここはトウメンに近いからな」
「行っちゃたよ、トッケツはナニしに来たんだ?」
「あの人がトッケツのソー・ムンランかぁタイホーでも名は知られてます」
「そうなのか、でも今はどうなんだ? 大河拳法のチャオ・チアンウェイの名は? レイ」
「いや……」
「師匠、俺たちの部落では知らないヤツは居ませんぜ!」
「まあ、そうか……。まだまだなあたいも」
「チャオ殿、名前はともかく大河拳法は大分ひろがってると思うぞ、タイホーではけっこう……。あんたの兄さんが、自分の酔拳に大河拳法を取り入れたと」
「ああ、兄さんがコレから大河拳法を名のると。なあリーもな」
「あたしの技は大河剣法だけじゃないから、母さんから受け継いだ剣技もある。リー家剣法だ。ああ、早く家族作らねば」
「私が協力しても、いいぞ」
「父さん、やめて下さい。兄弟増やして、母親まで増やす気で」
「リアンファ、リーさんは嫌か?」
「母は遊天楼にひとり居れば……」
「ナニ話してんのリァン。師匠とあたしが家族になるのが嫌か?」
「誤解するなリー殿、協力とは家族になることではなく、私の優秀な子種をだな……」
「坊さんは、リーを抱きたいだけだ。リーは母親似で美人だからな」
「チャオ、あたしを美人と認めるか?!」
「まあ、童顔のあたいよりは……」
「師匠、俺は師匠の方が」
「え、あなた。私と師匠では?」
「そりゃユエだ」
「こらっ、イ夫婦。あたいをダシにして、のろけるな!」
トウメン国王都前。
うぁお……ココがトウメン国王都か、古い城壁の都だなぁ。あちらこちら崩れてるインアルの壁とは大違いだ。
戦好きといっていたラゴウとかいうヤツは、なんでこんな辺境の小さな県を選んだんだろう。
しかし、仲間の魔王を使い、あっという間に隣にあった二つの県を攻略して、今では辺境のほとんどがトウメン国に。
門へ行くと見慣れたトウメン兵が。
「おまえは何しにココへ?」
「ボクは傭兵だ。ここで兵士を傭ってると聞いたんだ」
「何処から来た」
「タイホーからだ」
「タイホーの間者ではあるまいな?」
「もし、そうだとして。はいそうだと答える間者がいるのか。変な質問だな」
「顔色をうかがってみたのだ……」
「おまえの武器はその棒か」
「ああ、ボクの棍術はラン派だ。あんたたちも元は華中の人間だろ。聞いたことあるはずだ」
「ラン派の棍術か……。ちょっとかまえてみろ。ん、なんかちょっと違う気が……」
「ボクのはラン・ロウシュンの孫『小旋風』直伝だからちょっと違うのかも」
「小旋風か、噂は聞いたことある。あんたの棍術は直伝なのか! おい、本当に兵士を希望で来たんだな」
「ああ、そうだ」
「じゃ大通りを真っすぐ行け、その先に傭兵受付所がある」
門番が中の兵に開けろと言うと門が、ギリギリ人ひとり入れるくらいしか開かなかった。
一人だとわかってるだろうに用心深い。
都の中へ入る。
戦中の都だ、人通りもなく静かだ。
が、真っすぐ傭兵の受付け所へなど行く気はない。まず都を見て周るか。
かと、いって酒が飲めないボクが居酒屋みたいなトコへ行っても。
しかし、字が読めないというのは不便だ。辺境の国のせいもあり、西方などの異国の字らしいのも書かれた建物がある。
よけいに読めない。
「にいさん、あんた傭兵かい」
大通りの路地から老人の声が。
路地に行くとイ・オンみたく小さい片足の老人だ。
「あんたも、傭兵に志願しに来たんだろ」
「まあ、そんなとこだけど」
「東の辺境の戦いで惨敗して、兵も大分減ったからな……。でも、カネはけっこうあるんだ新王は」
「新王ってのは、突然県庁に現れてあっという間にココを支配したんだろう」
「ああ、皆驚いたよ脱国して独立国になったんだからな」
「王はカネを持ってるというのは?」
「ああ、王はカネをまき軍を作ってな、隣のタハやライラに侵攻し、あっという間に辺境の大国になった」
「ソレが東の敗戦で兵を失ったと、だからトウメンは軍のたてなおしをしてるんだろ」
「ああ、勝ってた頃は国民も喜んでた、なにしろ生活がどんどん良くなってきたからの……」
「で、軍のたてなおしはどうなってんだ。ボクみたいな傭兵や兵士を集めてるんだろ。まさか、もういっぱいで、締め切ったとかじゃ」
「いや、ソレはないだろう。まだ、いけるよ。で、いろいろと話したからカネをめぐんでくれぬか」
「なんだ、あんた外部の人間相手の物乞いか?」
つづく




