心頭滅却すれば火もまた涼し
11話 心頭滅却すれば火もまた涼し
どこだ、森の中には居る。
バキバキバキバキバキバキ
折れた木々が槍のように飛んできた。
所詮木だ。よけて叩き落とす。
「なにっ!」
木片と混じり女の突きが!
木を避けたら二、三発くらった。
でも、こんな突きは効いてない。
今度は逆の方向から木片が、何度も同じ手は、
グッ背後から剣が!
「どうした、私だって武器を持ってるんだ。飛んでくるのは木片ばかりではないぞ」
ナニっグガッ。
剣を掴んだ女は押し込んだ。
剣が奥に。
うわぁっ! 腹から剣先が出るのが見えた。
背後に居たと思ったが、前から数本の飛刀が、ボクは顔をかばうように腕を✕にし防いだ飛刀は腕に数本刺さった。
「ウグッ!」
こいつは、すごい速さで森中を動き、また後ろにまわったのか。背中に刺さった剣を握り上下左右に動かして傷口を拡げはじめた。
傷口が広がった、ボクは前へ移動した。
傷口が大きくなったので拔けた。
「ホホッ、たとへ魔天人といえども、大量出血は死を招く」
ボクは腹をおさえて血を。だが、血は止まらず出てくる。のがわかる。
「傷口がひろかれば、内臓も外にクククッ 死ぬがイイ!」
いけない、このままでは。
どうすれば傷口が。
ヤバい目まいが。
力が入らなくなった。
膝が地に。
なんだ、頭の中が、熱くなってきた。力が入らないどころか、なんたか身体が、締まってくるような。
グッワ、腕が太くなり刺さった飛刀が抜け落ちた。
ビリビリ
服が裂ける音がした。
「ツァンレン、本当の姿に……」
ブチッ
髪を束ねたヒモが切れた音がした。
と、ザワザワと髪が逆立った。
ボクはどうなったんだ?!
腹に力が。
腹の傷口が浮き出た腹筋で。
締まり消えた、いやふさがったのか。
目まいも消え頭の中がスッキリとし、ボクは立ち上がって吠えた。
「ウガァアアア」
まえのときは気がついたらボクがボクでなくなってた。こいつが魔王の力かニュウ。
「ナニ、消えた? いや、森の中を走ってる音が」
私の裏へまわったのか、なら。
ザササササッ
速い、私についてくる!
ん、まさか、私より速く動けるのか?!
ぬかれた?!
ガッ
ウガッ 奴の拳が腹にはいつた。
この一撃。ウグッ効いたぞ。
私の足が止まった。
ガッ
今度はアゴに入った。
ナニっ私の尾を掴んだ。
「ギャッ」
バキバキバキバキッ
尾を掴んで私を振り回し、あたりの木にぶつけ回し。木が折れて森の木が、ほぼ。
「おお、アロン。派手にやってるな」
「アロン、強くなった!」
「ええ、アレがアロンなの?」
「アロンアニキが……森の木を」
師匠とみんなの声が聞こえた。
うっなんだか目まいが。
妖怪女の尾を離した。
「おお、尻尾をまいて逃げていくってやつだな。あれは……」
そんな師匠の声が聞こえた。
うっ、また傷が開いた。
「あ、アロンがもとに……大変酷いケガを、マン・ケイ、ナニか包帯になるような物を」
「大丈夫、アロン? 我が家の秘薬を塗る!」
その場でしばらく休んでるとニュウの薬が効いたのか血は止まり傷口は塞がった。
「師匠、腹が減りました。あの猿みたいな連中は?」
「ナニかな、あの妖怪女が逃げたらついて行ったよ。そうか、腹が減ったかアロン。だが峠を越えねば人里はないぞ、立てるか」
「ハイ」
ビリッ
立つときにズボンの尻が破けた。
「アロン、もう着替えないわよ。ズボン脱ぎなさい、縫ってあげるから」
「あ、ゴメン。町に着いたら大きめのを買わなくちゃな。きつかったからなぁ」
「でも、裸で女の尾を持って森から出てきたのは驚いたわ。でっかくなってて」
え、ボクは思わず股間をおさえた。
「そこだけじゃないでしょ!」
リァンは赤くなって背を向けた。
峠を越えてしばらく行くと家が数軒見えた。
その内の一軒だけに煙が上がってたのでそこへ向かった。
「旅の方々かな。ウチは峠越えの旅人のために宿屋をしてるんだ。宿泊代や食事代をとるけどいいかな?」
ガタイのいい山男といった感じの男が。
着ている毛皮は虎熊の物だろ。
薄い茶色の地に濃い茶色のシマもようが見える。
虎熊は熊なんだが、虎のごとくしなやかに動き獰猛な獣だ。そいつを仕留めて着てるのなら、よほどの狩人だ。山の中で宿をやるだけのことはある。
「あんたは、坊さんか?」
「今は何処の寺にも属してないが……」
「なら、去年亡くなった両親に経をあげてもらえないか。宿泊代はただにする。おい、マオ。客だ四人に子供が一人だ」
「ハイよ!」
「いま、晩飯を作る。あんたらの子かい、可愛いなぁ……」
「いえ、違います。この子はアロンの連れ子でわたしたちはは夫婦ではありません!」
「リァン、ニュウがボクの子のような言い方は」
「違うの? わたし、てっきり……」
てっきりって。リァン、妹とか思わなかったかい。
「違うよなニュウは……」
「アロンがおとーでもいいぞ!」
すると主人が。
「そうか、俺にもなこういう子が……いてな生きてりゃこの子くらいた」
「ご主人、お子さんは亡くなったのね」
「ああ、虎熊に襲われた……」
「もしかしてその毛皮の服は」
「ああ、仇と仕留めた獣の……わりぃしめぽくなった。さあ、入りなさい。まだ外は寒い」
「そうだよね。あのね、マン・ケイは寒い中夜通しチューを待ってたの?」
「はい、でも私、肉厚なのでそんなに寒くはなかったです」
「そうなんだ、太ってるのもいいな」
「アロン、心頭滅却すれば火もまた涼しぃだ。修業にはげめよ」
「そうですね。師匠はいつもの薄着だ」
つづく




