落ち着きのない弟子
109話 落ち着きのない弟子
「師匠、ボクは南下せずにトウメン国へ向かおうと思ってるですけど」
「なんだって、アロン。また、あんたひとりで暴れてこよっていうのかい」
「リーさんボクは、知事にあんな話をしてしまったし。のんびりと旅を続けられませんから」
「そうだな、だが、やはり一人というのは……。仲間も増えたのだし……どうかと思うぞ。アロン」
「あたしもやらせろ!」
「今、あの国も動いていないのは。良い機会なんじゃないかと。このまま、ほおっておけばまた軍事力を上げて動き出す」
「確かに。しかしまえの戦では、あんただけじやなく、かなりの兵がいたのだろ。一人じゃ……」
「はい、天導引派に七武人という武闘人がいて、彼らが力を合わせ魔王の二名撃ち破りました」
「人が魔王を殺ったのか、そのへんの話詳しく聞いてないぞアロン。あたしはてっきりアロンが戦に加わり……」
「違うウーサイ。しかし、七武人の中からも亡くなったものが何人か……」
「しょせん人間だ。一対一では天界の魔王には勝てない」
「ということはあたしら人間でも協力すれば奴らに勝てるわけねウーサイ」
「チャオは魔王と戦うのか。力は魔神でも体は人間だからな……。しがし人間以外の皮をかぶった奴も居る。それが吉になり実力以上の力を発揮出来る強さがある。大物のゴブリンの体を手にした奴は、アロンが相手にしなければ恐ろしい存在になったはずだ。だが、あれはバカだから悪い例だ」
「とりあえずボクはトウメン国へ行ってみる。奴らに会わなければ問題なく居座れる」
「あたいも行く!」
「あたしも!」
「ニュウも!」
「ウーサイは、ともかくニュウやリァンは危険だ」
「面倒だからみんなで行こうぜ。アロン!」
「みんなで敵国に入ったら、そく怪しまれるだろ」
「なら、バラで行こう。意外と侵略国とはいえ仕事になると傭兵や、はぐれ武術家がトウメン国へ入ってると聞いたぞ!」
タイホー県の県境を出たボクらは荒れ地を通りトウメン国へ向かった。
「ホントに皆、あの国へ……。チャオは華中を巡って大河拳法をひろげるんだろ。他のみんなだって戦にかかわる理由がない。ボク一人で行くから皆は引き返してくれ!」
「アロン、おまえにはあるのかよぉ!」
あいつ、まえのときみたいに走り出した。あたいたちには追えない。
土煙を上げて、もう豆粒みたいな大きさに。
「まったくもう! あいつはすぐに抜け駆けをする」
「ムーサイ、ブタを車からはずして……どうする」
県庁で良いもん食ったからなのか、またひとまわりデカくなった豚の背に椅子を乗せてウーサイは、アロンのあとを追った。
「ウーサイ、なにしてんのよ車は誰が引くのよ」
「リァンファ、私の馬を使いなさい」
坊さんは馬から降りて豚車を馬車に。
馬はあたいのとリーが乗ってるのと二頭。
レイは馬車の馬の横にたち荒れ地を誘導しながら前に。
「ん、向こうに砂埃が上がってるのが見えるんだけどリー」
「また野盗か?」
「違うようだな、アレは軍隊だろう」
「軍隊、あのアホ知事が動いたのか? 坊さん」
「いや、違うようだな。旗印が見える」
「アレはまさかの王軍旗じゃないの中央の軍隊が動いたのか?」
「確かに。アレは、東の荒れ地の戦で見た華中国軍の旗印だね」
「なんで、あんなトコから」
そして。
「おまえたちは何者だ?」
大隊が目の前まで来て、あたいらに聞いた。
「我々はハイサンからトウメンの敗残兵追ってきた華中の軍だ。おまえたち、敗残兵を見なかったか?」
「敗残兵なら別の場所で見たな、コーメイ県のインアルの町のそばのオアシスの村だ」
「なに、コーメイ県方面にも逃げていたのか」
「ハイサンの敗残兵なら、間違いなく荒れ地を行くだろうな、母国にも近い」
「そうだな……追うのはここいらまでだな。ところで貴様ら、こんなトコで何をしている?」
「将軍様、我らは旅の武術家。タイホー県へ行こうと道に迷ってしまって。なにしろ見渡す限り同じ風景……」
「ほう、大人の男も居たのか」
「武術家だと、お主らはどこの系統の武術を? 私らは戦で仲間を失い補強せねばと良い武人を探していのだ」
「ヤン、武人とな? うっおまえは!」
「おや、いつぞやの美人さんじゃないか」
「レアン、知り合いか?」
「あの小僧の師匠だ、ということは、あの外道の娘も一緒だな! 坊主」
「外道の娘? なんの事かな……あんた、けっこうな床技の持ち主だったな。続きをしたかったが、今はそんな状況ではないのが残念だ」
「なんだレアン、あの男と寝たのか。それは、ただ者ではないな」
「まあそれには、いろいろと事情があり。外道の娘を……」
「そうか……お主は、その容貌だと寺関係の流派とおみうけする。ウチにも一人、ラ・カン!」
「お初にお目にかかる私は武頭寺のラ・カンと申す者」
「ほう、ジン・ジャダウ師と同門か」
「ジン・ジャダウなどという破戒坊主と一緒にしないでいただきたい」
「先日一手まじえましてな、あやつ二手打って、まいった」
「そういう男です……。あなたはもしや天林門派で?」
「さよう少しばかり、かじりました」
「お主はアロンという若者の師匠とか。彼は凄い武術を使い我らを勝利に導いた。彼は一緒ではないのかな」
「さあ、何処へ言ったのか。落ち着きのない弟子でしてな」
「どうかな、彼を我ら七武人に迎えたいのだが」
「ヤン、それは……」
つづく




