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二人の坊さん

106話 二人の坊さん


 女は剣をハサミのように交差させてチャオに! チャオは両手の剣を飛刀のように投げ、女はかわしたが、攻撃がひるんだ。


「ナニ!」


 チャオは交差された剣の刃先を指で掴んでいた。


「ニャ~おねえさん。動けるぅ……ハリャ!!」


 チャオは女の剣を同時に二本折った。


「見たかアロン。アレが伝説の酔拳だ」

「酔えば酔うほど強くなる……」


「よし、やめっ! 引き分け」


 知事の横の坊さんが、立ち上がって言った。


「引き分けぇ〜あたいはまだ、負けていない。酔っぱらい相手だ。この折れた剣でも充分闘えるぞ、クソぼーず!」


「そうだ、ゴクリ……うぃ〜。これからだ」


「あんたは、剣を投げた。戦場で素手で闘うつもりか?」


「ああ、あたいならこの後百人はぶっ倒す。大河酔拳は、ちまちました拳法と違うからなぁ〜」


「ティアーナは、剣が折られた時点で負けだ、しかも素手でだ。勝ったと思うか?」


「思わねぇ、だけど負けたとも。勝負は殺すか殺されるかだ! つまらん、小娘。次の勝負は死ぬまでやる! ぼーず、新しい剣を部屋に届けてくれ!」


 女は、そう言って闘技場から出ていった。


「あれ、チャオは?」


「アロンさん、見て下さい。試合を止められたチャオさんは豚車の荷台で寝てしまいました」


「大河拳法とやら、中々のものだった。ところで……そちらの僧は?」


「私もあなたと同じ。こんな頭をしているが、今は僧ではありません」


「なるほど、お名前は?」


 あの坊さんが、師匠に目をつけた。師匠はどうするんだ。


「私はリュー姓を名のるもので名を言ったところで、鼻で笑われるだけですな」


「リューとな……では、リュー殿。私と一手、手合わせを願えますかな」


「構いませんが、そちらのお名前を聞きたい」


「私の名か、ジン・ジャダウと申す」


「なるほど、武頭寺の……名は」


「私は武頭寺から破門された身。天林寺派のあなたと同じですね」


「いやいや、私は破門されては、いない。自分からやめました。破門された何処かのリュー氏とお間違いになってるのでは」


 珍しい師匠は、リュー・ハイシンの名は使わないのか。

使ったとて、ビビるような相手ではないってことか。あの坊主は? 

 師匠は知ってるようだけど。



「知事殿、少し汗をかいてきます」

「珍しいな、それほどあの坊主……」


 し、師匠の試合なんて初めてだ。


 向こうの坊主は観覧席から闘技場へ飛び降りた。


 ふたりの坊主頭が、向かい合った。


 ここの坊さんが、見たこと無いかまえをし、 突きを近距離で!

 ソレを師匠はかわすと、坊さんはすぐに肘を上げ師匠の顎に、師匠はソレを手ではたいて下方から拳を肘に当てた。


 そして、次の手を出す前に師匠は、さがった。


「リュー殿、なぜやめる?」


「あなたは一手お願いしますと。だから一手で。あなたは二手出しましたね」


「ソレは失礼……」


 なに、肘にしびれが。コレはまずい。


「今日の試合はここまでとしましょう」


「ジャダウ様、私にもひと試合!」


「隊長さん、あなたがかなう相手は、あの中にはいません。恥をかきたくなければやめなさい」


「フォフォフォフォ、面白かったぞ。そちたち。美味い物でも食っていくがいい。もちろん大河拳法の拝見料試合のカネもだす」


「私があの女どもに勝てないと……」

「ナン隊長、わかるが己の力を知れ!」


「コン兵長……」



 県庁からの帰り。


「美味いもん食えたな……奴らブタにもエサくれた」


「しかし、勝ったらの賞金がもらえなかったのが残念だ……」


「チャオ殿、剣を投げた後に剣を折ったが、その後にあの双剣使いに勝てる自信があったのかな」


「ああ、正直わからなかった。もしかしたら腕の一本でも落としてさしちがえてたかも……」


「あの女、バケモノみたいに強かったからな、食事のときに聞いたんだが、新しい剣をもらって、あの女、庁から出ていったそうだ」

「あたいらと同じ。人の飼い犬には、ならないやつだな」

「おい、チャオ。あたしは犬ではないぞ」


「そうだな、群れるオオカミでもない。荒れ地のトビネズミかな」


「ネズミにするなチャオ!」


 ボクらは知事に紹介された宿に行くと、なかなか良い宿で西方風の寝台でタダで泊まれるとは気前のいい知事だ。

 朝、中央広場での演武も知事のおかげでタダで使えると。

 あの知事はよほど強い者が好きなんだろう。


 イ・オン夫婦の演武が終わると、青年が現れ俺と勝負しろと。


「俺に買ったら金貨十枚やる。その代わり相手は俺に選ばせろ」


 と、言ってきた。


「よく見りゃ、あんた昨日の騎馬隊の……」


「そ、そうだ。が、それを大きな声で言うな」


「わかった、誰とやりたいんだ」


「そちらの若い娘をお願いしたい」


「あんた、なんか勘違いしてないか」


「師匠、指名されてしまいました……」

「大丈夫だやってこい少しはやってるんだろチャオ殿と」


 まあ、アロンやリーさんに付き合って朝稽古はしているけど、相手は県を守る騎馬団の隊長だ。


「リァン、あたいの教えた大河拳法なら勝てる!」


「では、よろしく」


 わたしが、ここの連中の誰にも勝てないだと、この小娘にもか。ジャダウよ。



              つづく

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