御前試合
105話 御前試合
闘技場は、ボクが見た大会の武台とは違う。
台が無いから落ちたら負けなどない。
ワクもないから、出たら負けもない。
「武台もワクも無い、タダ戦うだけの場所だ。アロン。ココは戦場と同じだな」
「なるほど、そうだ。じゃ死ぬまで戦うのですか師匠?」
「それはどうかな、相手次第でもあるだろう。死ぬまでやめない奴もいるからな」
「おい、あんたら。武器と防具はその中だ、好きなのを選べ!」
「べつに、その倉庫に聖剣とか、特別な武器があるわけじゃないだろ」
「聖剣……そんな物があるか」
「相手がどんな武器で来るか、わかりません。とりあえず使えるモノは……」
「ソレはあんたの自由だレイ。あたしらは自分の使いなれたのでイイ」
「ああ、あたいの大河拳をたっぷり見せてやる。楽しみにしてな」
知事が出てきて、観覧席に座ったのが見えた。その横に立ってるのは騎馬隊の隊長に知らない武人らしい男だ。鎧を着ている。あの男とも闘うのか?
もう一人は、坊主頭の男だ。僧のような着物だが、あくまでの、ような服だから僧かどうか?
師匠も似たようなもんだけど。
その坊さんは、知事の隣に座った。偉い人なのか?
「ジャダウ、今日は誰が出る?」
「知事殿、ティアーナ・ホンを。相手は、ほぼ女ではないですか」
「あの切り裂き魔女か、面白い」
向かい側の扉が開いて、黒いフードマントの女が現れた。フードをかぶり顔は見えないマントで体も、でもその脚で女とわかる。
「さて、やってくるか」
「待ってチャオ、あたしにやらせて相手は剣よ、マントの下から見える鞘は二本。双剣使いよ」
「だな、リー」
女は闘技場の真ん中に来るとフードをおろしマントをひろげ二本の剣を抜いた。
「見てわかるな、アレは手持ちの普通の剣だ双剣用ではない、ヘタをしたらリー殿の剣、折られるぞ」
「たしかに、アレは……。だが、あんな重そうな剣を、片手で」
「ソレを出来る自信があるから使ってるのだ、リー殿、出たら負けるぞ」
「さすが坊さんだ、あたいも同じことを言いたかった。やめとけリー」
「そうだ、リー。おまえは一番弱い」
「一番じゃない、ウーサイ! じゃおまえやってこい!」
「アレは、面倒だ」
「だから、あたいがやってくると、はじめから。呼ばれたのは大河拳法だ、あたいの剣はリーのとも、あの重そうなのとも違う」
と、チャオは腰の二本の剣を抜いて前に出た。
「大河三娘双剣、見せてやる」
「キャホッ、小娘。楽しませてくれ!」
チャオの剣は、短剣より長く、普通の剣よりは短い。
素早く動けるリーさんの薄い双剣よりは頑丈そうだ。
始まった。
速い動きと剣さばき。
相手の女は普通両手でも使う剣を軽々と片手で使いまくってる。
「スゴイ! 見たかあのマントの……」
「はあ、イ・オンさんなんと?」
「いい乳をしてた。あのマントの下は乳あてをしてない」
「ほお、イ・オン殿、よく見えましたな。アレで、アロンやレイが闘ったら勝てんだろう」
えーっ、そう言われたら目が。
「レイさん、見ました?」
「いや、私は……」
顔が赤い、見たんだレイさん。
ちょうどチャオの背中がコチラにバシバシと剣をたたき込む相手の女は、マントが背にまわってるのなんか気にしてない。丸出しだ。
「見ない!」
わあ、いきなり目の前に手が。
「その声はリァン!」
「アロン、あのおねえさんおっぱい出してるのばかり見ない!」
今は見えない」
「リァン、なんでアロンに目かくしする? キレイなおっぱい見たいよねアロン!」
「そんなにおっぱい見たいのアロン!」
「いや、ボクは試合を……」
「ホントに?」
「ホント!」
リァンが手を離したら、チャオと女の位置が変わっていた。
今度はチャオが攻撃に。
「楽しいね、あたいとこれほど闘えるとは」
「まだ、技は半分も出しちゃいないよ!」
チャオの動きが変わった、アレは酔拳だ。
チャオは腰のひょうたんをぐいっと飲んだ。
その時斬り込んだ女に酒を吹きかけた。
「酒か、そんな物飲んだら酔って勝てないよ!」
女の連続突きをかわしたチャオは、またひょうたんの酒を。
大丈夫なのか、チャオ。ハッタリとはいえ、本当に酔ったらヤバイだろ。
チャオは相手の技を千鳥足で避けてるが、あれは酔拳のかわしなのか本当に酔ってるのか、わからない。
「チャオ殿は酔ってるな」
「それじゃあぶないじゃないですか師匠。チャオを止めないと」
剣を避けて転がったチャオがまた呑んだ。
「酔っぱらいと、闘うのは初めてだよ。死んでも知らないよ」
「そっちこそ、気持ちよく倒してあげるぅ〜うぃつ。お目にかける大河酔双剣!」
「死にな!」
「ハイーッ!」
つづく




