魔導引派の壊滅
1話 魔導引派の壊滅
「女、魔導引派をあまくみるなよ!」
「魔ごときに『力』を引き出すあんたらに私ら天導引派が負けるわけなかろう!」
「我が力を見せてやる、はあぁウユジイ、ンダンケ〜ゲッはっ……まだ仲間がぁ」
「うかつだったな。呪文に集中して、背後の敵にに気がつかなかったか」
「ゴージン、よくやった。お前の槍には毎度、助けられる。ウンチャンは」
「女を……」
「女も殺ったか?」
「いや、いつもの……」
「またか、いくら敵とはいえ……」
隣の部屋に行くと。
服をズタズタに破られた女が血を流して倒れている。
「姉さん、こいつ自分で舌を……。あぁあ、いい女だったのになぁ。オレ、死んだ女には興味ないんだよな」
「毎度あきれるね、あんたは。私は同じ血が流れてるのが恥ずかしいよ。その、見苦しいバケモノ早くしまいな」
「姉さん、小さい頃はカワイイと。バケモノはないだろう」
「で、娘が居るはずだろう。どうした?」
「娘、そんなの居たのか。聞いてないよぉ姉さん」
「レアンの姐御、どうやら娘は居ませんぜ」
「居ない……逃したのか」
所変わって。
川沿いの土手道の横の切り株に腰かけボクは師匠を待っている。
師匠遅いな……師匠の分も食べちゃうか。
途中、団子売りの男から買った団子の残りは師匠の分だが。
師匠は道行く女と二人、川沿いを草むらの方に行ったままなかなか戻らない。
「……」
背後で人の気配が。
振り返ると女の子だ。
団子を見つめて指をくわえている。
「食いたいのか」
女の子は無言で二度うなずく。
師匠の分だが、いいか。
団子をやると。
ガツガツと。
よっぽど腹がへってたんだろ。
ボサボサの長い毛に汚れた着物。肩にかけた布製のカバン。
旅をしてるのか?
見たところ。五才前後。こんな小さい子が一人旅ってことはないだろ。
近くに腹をすかした親でもいるのかと。
見回したが周辺には人は居ない。
あれ、ドコに?
女の子は団子をやったのに礼も言わずドコかにきえた。
それからしばらくして、師匠が戻った。
「いや、いや。失敗したなぁ。なりから素人かと思ったら商売女だったよ。カネをとられた」
「なら、払わずに別れてくれば……」
「いや、あんないい女を目の前にしてケチって、どうする。カネがあるなら買っとくもんだ。損した気はしてない」
ボクの師匠は見た目が坊さんだ。
今は違うが、まえはお坊さんだったと聞く。
師匠というのは武術の師匠だ。
ボクが暴漢に襲われたときに助けてくれたのが師匠で。
その技素早く美しく強かった。
この人は噂に聞く天林寺の修行僧だったに違いないと、その場でボクは弟子にしてくれるよう頼んだ。すると。
「私の荷物持ちをしてくれるなら弟子にしてやろう」
と、言われてボクは弟子になった。
「アロン、おまえもやるではないか。女をひとり、トリコにしたか。まあ〜ちょっと若いがな」
え、ボクの横にズボンをつまんだ。あの団子をあげた子が立っていた。
いつの間に現れたんだ。
そして、ボクを見上げてニカッと歯を見せて笑った。
「あたし、ニュウ。お団子ありがとー」
つづく