表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
地底トド  作者: 木島別弥
8/14

8、尾行者

 そのうち、また大爆発がある。そのたびに、大爆発をかわさなければならない。

 チリトは、地底船を運転して、地底探査をつづけていた。

 何かが、チリトの地底船を尾行している。チリトは、そのことに後方の赤外線カメラで気づいた。

 チリトを尾行しているのは、何者なのだろう。人類だろうか、地底生物だろうか。カスミの次に送られてきた第二の暗殺者の可能性がある。

 地底船は、時速4キロメートルくらいで前進している。一日で100キロメートル、二十日で2000キロメートル、進む。

 地底船は船体を動かして、岩盤の中を泳いでいるのだが、尾行者はチリトの地底船に送れることなく付いてくる。

 チリトは、尾行者の存在に不安になった。尾行者が敵対行動をとってきたらどうしたらいいのか。

「あれは、人類じゃない。地底生物だな」

 チリトは、赤外線カメラで尾行者を観察して、それが岩石サメであることを知った。

 岩石サメは、チリトが岩盤音波で話しかけても、ずっと沈黙を守っている。

 岩石サメに尾行されるのが怖い。

 岩石サメは、大きさ三メートルくらいの生物だ。地底船は大きさ二百メートルだ。

 地底トドや岩石サメは、地底船より速く進む。人類の技術が、地底トドや岩石サメの身体構造より劣っている証拠だ。

 岩石サメの尾行はいつまでつづくのか。

 どうやって地底船を追尾しているのだろう。追尾の仕組みはどうなっているのだろう。

 岩石サメは、地底船を数百メートル離れて追いかけてくる。

 中には、数百キロメートル離れて、地底船を追尾している地底生物だっているかもしれない。誰が、どのように自分を追尾しているのか。尾行者の可能性は無限に広がる。

 地底の尾行者が、地上に気づく可能性はどのくらいあるのだろうか。

 だが、まずは岩石サメだ。

「我々は人類だ。地上から来た。船に乗る種族だ。何か答えてくれないか、岩石サメよ」

 チリトは、岩盤音波で話しかける。

 岩石サメは答えない。

 地上まで追いかけてくるかもしれない。そうしたら、どうしよう。チリトは不安になる。

 尾行者と仲良くならなければならないが、この場合、どう交渉したらよいのだろうか。

 地底船より速く動くことができる岩石サメは、人類をそれほど尊敬しないかもしれない。

 岩石サメに襲われたらどうしよう。悩む。

「言語の翻訳がうまくいってないのかなあ」

 チリトはカスミに相談したけど、

「岩石サメが人類を警戒しているだけだと思うよ」

 と答えられただけだった。

 何日間、岩石サメは地底船を尾行してくるんだろう。

 岩石サメは人類に興味があるのだろう。対話には時間がかかる。

 地底生物はDNA生命体ではないので、岩石サメが人類を食べようとしていることはないだろうが、地底船の素材が岩石サメの食料に見える可能性もあるかもしれない。岩石サメが地底船を食べようとしているのだとしたら、困るなあ、とチリトは思った。

 岩石サメが肉食かどうか、そこからして、わからない。岩石サメが地底船を尾行する目的とは何か。

 地底トドと岩石サメが戦ったら、どちらが強いのだろうか。体長が1キロメートルある地底トドの方が、体長3メートルの岩石サメよりも強そうだ。移動速度も、地底トドの方が岩石サメよりかなり速い。

 最強の地底生物はいったい何なんだろう。

 地底生物の身体構造は、どのようになっているのだろうか。

 それから十日ほど、岩石サメの尾行はつづいた。

「おまえたちは、下から来たのか」

 岩石サメが話しかけてきた。

「ちがう。おれたちは上から来た」

「上には何があるのだ」

「大地の果てだ」

「興味深い」

 岩石サメはそれをいうと、去っていった。

 尾行が終わった。チリトはほっと安心する。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ