8章 ダイヤモンド鉱山
その後、わくわくするようなことが起きました。学院中の人々はそれが起きてからの数週間、その話題で持ちきりとなりました。というのも、セーラとローラが受け取った、インドにいるクルー大尉からのお手紙にはこんなことが書いてあったのです。
大尉の学生時代を共に過ごした3人の友達がインドにやってきて、一緒にダイヤモンドを掘り当てないか、と誘ってきたのです。もしダイヤモンドが見つかれば、すごいお金持ちになれます。
他の事業だったらどんなにもうかっても、子どもたちは興味を持たなかったでしょう。しかし、ダイヤモンドの事業なので、アラビアン・ナイトのようにロマンティックに聞こえたのです。
セーラとローラがそのお手紙をみんなに読んで聞かせた時、ハリーが言いました。
「おいらがもしセーラと付き合って結婚したら、すげぇ金持ちになれるんだぜ!?」
みんなが一斉にセーラとローラの周りに集まります。少し離れたところに、ラビニアたちがいました。
「今時ダイヤモンドの鉱山なんて、騙されてるんじゃ……。」
ピーターが聞こえないような小声で言いました。それを聞いたラビニアは何か思いつきました。
「プリンセス・セーラ、プリンセス・ローラ。あなた方が王座についた時、あたしたちのことをお忘れになりませんように!」
ラビニアがセーラとローラの前に行き、去って行きました。
「すごいじゃないか!院長先生にも話してくるよ!」
カール先生もうきうきした様子で、院長室に向かいました。この出来事がきっかけで、セーラとローラのことが嫌いな生徒は「プリンセス」と呼んでばかにし、好きな生徒は「プリンセス」と呼んで慕いました。中には、セーラあてのラブレターに「プリンセス」と書く人もいました。
ミンチン先生も生徒の保護者が来ると、よくこの呼び名を使いました。そうすると、ミンチン学院がまるで王族や貴族の学校みたいだと思えたからです。
ベッキーにとって、セーラとローラは「プリンセス」と呼ぶにふさわしい人物でした。
セーラはローラとこう約束していました。
「ローラ、わたしたちは何があってもプリンセスのように気高い心を持つのよ。」
「うん!ダイヤモンドプリンセスの名に恥じないようにね。」
もうすぐ、セーラとローラは16歳になります。大尉は双子の娘たちのためにすばらしい準備をしていました。
プラチナ生の誕生日には学院内で、盛大なパーティーを開きます。プレゼントやごちそうも用意されるのでした。
誕生日の前日、ベッキーがセーラとローラの部屋に来ました。
「セーラ様、ローラ様、ダイヤモンドプリンセスになるッスね。それと、明日は誕生日っしょ?」
ベッキーはそんなに新しくない赤いフランネル生地で作った、小さな針刺しを2つ渡しました。それぞれの色で、花の刺繍もされています。
セーラとローラは嬉しさのあまり、思わずベッキーに抱きつきました。