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Little Twin Princess  作者: Clover☆Fairy
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2章 フランス語の授業

 翌日、セーラとローラが高等部の3年A組の教室に入ると、みんなが彼女たちを見ました。女の子たちはささやき合い、男の子たちは物珍しそうにセーラとローラを見ます。庶民(しょみん)出身の少年ハリー・ヒルトンはセーラに見とれているようでした。

 セーラとローラのことを知っていたのは同じクラスの生徒たちだけではありません。学院の特権階級とされているプラチナ生はもちろん、もうすぐ18歳で最上級生の5年生から、まだ8歳で初等部に入学したばかりの新入生まで、みんないろいろとうわさで聞いていました。

 「赤薔薇(あかばら)様」と呼ばれるラビニア・ハーバートは昨晩到着したフランス人のメイド、マリエット・バジュレの姿を目撃していました。

「今日のニコルだけど、時間ギリギリで食堂に来たわ。普段ならそんなことめったにないのに。白薔薇(しろばら)様が遅れて到着するなんていいご身分だと思わない?」

「ラビニア、彼には彼なりの事情があるんだ。そんなことより、男子は彼女たちにくぎづけになっているよ。」

 中性的な印象のプラチナ生、ジェシー・クレイグが言うとラビニアはフンと鼻を鳴らしました。

「男子が言うほどかわいいとは思わないわ。あの子たちがモデルのあたしにかなうはずないじゃない。」

 セーラとローラは自分たちの席に座って、担任の先生の到着を待っていました。じろじろ見られても少しも動じず、自分たちを見ているクラスメートを見返しています。みんなは何を考えているのか、授業はどうなのか、わたしたちのような優しいお父さんがいる人がいるのかをセーラは考えていました。セーラとローラはその朝、バニーユとフレーズにお父さんのことをいろいろ話していました。

 セーラは空想が大好きな女の子で、双子の妹のローラと共有もしていました。小さい頃からぬいぐるみや人形は本当は生きているとも信じていました。授業に出るために紺色のセーラーブレザーの制服を着て、マリエットに髪をとかしてもらうと、専用の椅子(いす)に座っているバニーユとフレーズのところへ行って、本を1冊ずつ渡しました。

「わたしたちが教室で勉強している間、これを読んで待っていてね。」

 マリエットが不思議そうにセーラを見ていたので、ローラが言いました。

「おもちゃは、本当は何でもできるのよ。バニーユとフレーズは本を読んだり、話をしたり、歩いたりもできるの。でもそれは人がいないときだけ。人前では動いてはいけないっていうルールがあるからなの。」

「なんて面白い子たちなのかしら!」

 フランス語でマリエットはひとりごとを言いました。優しく礼儀正しいセーラとローラのことを、マリエットは早くも好きになり始めていました。これまで世話をした子どもたちの中にこんな礼儀正しい子どもはいませんでした。「どうぞ、マリエット」とか「ありがとう、マリエット」みたいにメイドではなく、貴婦人に話しかけているみたいです。マリエットは、台所でメイド頭のモーリー・アボットに言うのでした。

「あの子たちはまるで、プリンセスのようですわ。」

 セーラとローラは部屋の前で待っていたニコルに案内されて教室に入りました。ニコルは1学年上の4年生なので同じ教室ではありませんが、ミンチン先生に案内するよう言われていました。

 セーラとローラが教室についてから数分したころ、眼鏡をかけた若い男の先生が入ってきました。彼はこのクラスの担任の先生で、担当教科は歴史です。

 生徒たちが席に着いたところで、ルーク・メイナード先生は言いました。

「皆さんに新しい友達を紹介します。」

 メイナード先生はセーラとローラに立ち上がるように合図しました。

「セーラ・クルーさんとローラ・クルーさんは、昔イギリスの領地だったインドからはるばるやってきました。わからないことがあったら、教えてあげてくださいね。」

 セーラとローラは軽くおじぎをし、席に着きました。朝のホームルームが終わりメイナード先生が教室を出ると、クラスメートで同じプラチナ生のピーター・マクナリーが教えました。

「1時間目はフランス語だよ。」

 セーラとローラはフランス語の教科書を手に取りました。しかし、セーラとローラにとってはもう知っている内容でした。

「いまさら、学び直す必要はなさそうね。」

「先生がいらしたら、そのことを話しましょう。」

 1時間目が始まるチャイムが鳴る数分前に、フランス語の授業を担当するデュファルジュ先生が来ました。彼は知的で優しそうなフランス人の中年男性で、新しく入ってきたセーラとローラに興味がありました。

 セーラとローラは一斉に立ち上がり、フランス語でこう説明しました。

「あたしたちは教科書を使ってフランス語を勉強をしたことがありませんが、父をはじめとして、みんなからフランス語で話しかけられていたので、英語と同じくらいの読み書きができます。あたしたち姉妹の亡くなった母はフランス人でした。」

「ムッシュが教えてくださるのなら、喜んで学びます。ですが、教科書の内容はもう知っています。」

 セーラとローラの美しいフランス語を聞いてデュファルジュ先生はほほえみ、非常に喜びました。自分の国の言葉をこんなに自然に、ハキハキと話しているのを聞くと、フランスに帰ってきたと思ってしまうほどでした。

「私が君たちに教えることはほとんどありません。特別な課題を出しましょう。」

 授業が終わった後、デュファルジュ先生はメイナード先生を見つけ、セーラとローラのことを嬉しそうに話しました。

「メイナード先生、あなたのクラスに新しく入った生徒たちですが、実にほれぼれとする発音でしたよ。彼女たちはまるでフランス人そのものです。」

 メイナード先生は自分のクラスの生徒をほめられて、悪い気はしませんでした。しかし、デュファルジュ先生とメイナード先生の会話を聞いたミンチン先生は腹が立ちました。ミンチン先生はフランス語が苦手だったのです。メイナード先生はなぜミンチン先生が怒っていたのかわかりませんでした。

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