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シープルおばさまは名探偵〜唐揚げと生贄誘拐殺人事件〜  作者: 地野千塩


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お年玉大作戦編-5

 佳織と話したいが、ちょうど良い場所がなく、公園に向かった。途中で自動販売機で温かい缶コーヒーを買う。佳織は遠慮していたが、缶コーヒーを奢ってやった。まだ大学生ぐらいの若者で、孫でも見ている気分になる。


 二人で公園のベンチに座る。


 子供達が、鬼ごっこやボール遊びをして遊んでいる。正月だからといって羽子板や凧揚げで遊ぶ子供は昭和で廃れてしまったようである。栗子が子供の頃と今ではやっぱり全然違う。


「佳織ちゃん、これお年玉!」

「何ですか、これクッキー? わぁ、嬉しい」


 お年玉袋風のクッキーをあげると、今日初めて佳織は栗子に笑顔を見せた。この前雑談をして探ってもよかったが、最近の若者はコスパや時短を重視するという事をニュースで見た。恋愛や結婚もコスパが悪いから避けているそうだ。そんな事を思い出した栗子は単刀直入に聞いた。


「キムさんって本当にミチルさんを襲ったと思う? まあ確かに大陸風の大雑把さがある人に見えるけど、どうもそんな風には見えないんですよね」


「そう。栗子さんはそんな風に店長が見えるんですね。あの人けっこうバカだと思うですけどね」


 可愛い顔に似合わず、佳織は吐き捨てるように言った。


「そうなの?」

「だって昔ファンだったアイドルのミチルさんが近所に越してきたから舞い上がってしまって。仕事そっちのけでミチルさんのケツを追いかけていたみたい。仕事もよくサボっていました。その皺寄せは全部私」


 キムの事を思いだして相当気分が悪くなっているようだ。キムがミチルを付き纏っていたのは事実のようだ。


「でもミチルさんもけっこう性格キツくて。死ねばいいとか言って店長を追い払っていました。ただの可愛い女には見えませんね。嫌な女ですよ」


 佳織はミチルに対してもいい印象を持っていないようだ。


「それと店長は、ミチルさんにお姉ちゃんの命日どうするのか?って聞いてすごい怒らせてましたね」

「お姉ちゃん? 命日?」


 聞くとミチルはアイドル時代、生い立ちを語る雑誌のインタビューで行方不明の姉について語っていたらしい。十数年前、ミチルの姉が10歳のとき行方不明になった。いまだに行方はわからないらしい。それなのにキムは死んだものと決めつけ、命日などと言ったのでひどくミチルの怒りを買ってしまったらしい。


「店長ってそうなんですよ。すごい大雑把で人を怒らせるの得意。私の事もたまに男の子だと間違えて来るんですよ。私の名前も覚えないし、いつもカオルちゃんって呼ぶんですから」

「そう…。でも、それでキムさんはミチルさんを襲う? むしろミチルさんが逆上して恨んでもいいくらいじゃない?」

「そうなんですよね。いくら店長がストーカーだからって、襲ったりしますかね?」


 佳織はキムが捕まった事について、本当に納得いかないようだった。栗子も話をきいていると、そうとしか思えない。


「あ、そろそろ家族で出かける予定だったんだ。じゃあね、栗子さん」


 話がおえると佳織は公園から去っていった。


 謎が残る。


 ミチルの姉も行方不明になっていたとは。真凛の件とは関係あるの、そんな事を考えていると、公園に香水が入ってきた。福袋の赤い袋を片手にもち、相変わらず太々しい表情を浮かべている。


「わぁ、霊媒師のおばちゃん!」


 子供達は、わっと香水の周りに集まって来る。その中に以前公園であったハナタレ少年もいた。ハナタレ少年は、人一倍キラキラとした目で香水を見ていた。


「霊媒師のおばちゃん、どうやって真凛を見つけたの?」

「教えて、教えて!」


 すっかり香水は子供たちのヒロインである。子供たちに注目を浴び、まんざらでもない顔を浮かべていた。


「それはトップシークレットさ。今日は、君達にお菓子でもあげようかね」


 香水は福袋の中からお菓子を取り出して、子供たちに配る。さらに子供達はキャッキャと騒ぎ始めた。


「みんな、順番守りな!」


 そんな風に注意をしても、香水はすっかり子供の好かれていた。


 栗子は自分が持ってきたお年玉風クッキーが入った紙袋を見つめる。子供達に配っても良いかもしれないと思っていたが、出番は無さそうだ。栗子はしゅんとした気持ちを抱えた。

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