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お年玉大作戦編-2

 一方、香水の呪文で気分が悪くなった栗子は三上千尋牧師に連れられてメゾン・ヤモメの門の前に到着。


「栗子さん、本当にちょっと顔青いですよ。これは悪霊が悪さしている可能性があるな」

「えぇ? 悪霊?」

「さっきも言いましたけど、ああいった異教に神々に伺いを立てる事は聖書では禁止している事です。ああいった儀式では悪魔が働いて悪霊がやってくる事がとても多いんです」


 千尋は遊びでコックリさんや口寄せに手を出して、具合が悪くなった人をよく面倒を見ていたという。大抵は牧師が祈ると変な具合の悪さが消えるというが。


「そんな悪魔なんて信じられないけど、まあいいわ。牧師さん、家に上がって。詳しく話を聞こうじゃない」


 栗子は気分が悪いながらも千尋の話に興味を持ち、彼をメゾン・ヤモメにあげた。


 幸子はもう二階の自室で眠っているそうだが、桃果はリビングでポテチを食べながら歌番組を見ていた。ちょうどレン様が熱唱しているシーンで、桃果の目はハートになっている。猫のルカもさすがにもう起きていない。桃果に聞くと、幸子の部屋で一緒に寝ているそうだ。


「あれ、シーちゃんどうしたの? 牧師がさんも? 何で?」


 千尋は手短に事情を桃果に説明する。桃果は理解し、お茶を作りにキッチンに行ってしまった。


 栗子と千尋はソファに座る。リビングの中は暖かかったので、二人ともコートやマフラーを脱ぐ。


「聖書でいう悪霊って本当にあるの?」

「ありますよ。特に聖書で罪とされている行為に染まると、悪霊がきます。本当はああいった儀式もダメなんです。悪霊がきて、いわゆるサイキックアタックという状況になったりしますよ。頭痛がしたり、気分が悪くなったり」


 千尋は渋い顔で説明する。


「でも香水さんは元気そうだったわよ」

「悪魔の気に入られた人間なら大丈夫なものもいますよ。でも死後どうなるかわかりませんね。ああいった儀式をすれば悪魔が喜んで、一時期は人間に富や名誉を与えるかもしれませんが…。その後は、死んだ後は…」


 なんだか以前陽介から聞いた陰謀論・悪魔崇拝儀式の事みたいだと栗子は思う。確か陽介も悪魔に気に入られる様な事をしてリターンを貰うと言っていた。


「魂を売るという言葉があるが、こういう事なのではないかと栗子は感覚的に理解した。


「なんか話聞いてたら、本当に具合悪くなって来たわぁ」

「やばいですね。では、私が祈らせていただきます」


 千尋が目をつむり、手を組み、何か聖書の言葉を口にしながら祈っていた。


 すると、不思議なことにさっきまで感じていた気持ち悪さや頭痛が消えて行く。


「アーメン」


 栗子も牧師と同じく言葉を合わせる。


 さっきまで感じていた体調の悪さは完璧に消えてしまった。


「どういう事?」


 驚きで栗子は目を瞬かせた。


「お礼はどうか、イエス様に言ってください。本当は洗礼を受けるといいんですけどね」

「わぁ、興味持ったわ。すごいじゃない。いつか日曜礼拝には行っていい?」

「もちろんですよ」


 そこに桃果が、お茶とクッキーを持ってやってきた。


 しばらく三人で、クッキーを食べながら歌番組を見ていた。こうして呑気にテレビを見ていると香水の事などすっかり忘れた。レン様の登場が終わったので、桃果はもう眠いと部屋に行ってしまった。仕事で徹夜慣れしている栗子は全く眠なららない。千尋もお茶を飲んでしまい、目が冴えているようだ。


「それにしても香水の儀式なんか本当に効果あるのかしらねぇ」

「ないです。絶対にないですから、栗子さんも気をつけてくださいよ」


 まだそんな事を言っている栗子に千尋は呆れ気味だ。


 栗子が香水の動画をスマートフォンで開いてみた。

 あの儀式は生放送で配信していたそうだった。早送りで動画を見ると、香水が真凛の居場所を言い当てていた。しかも、真凛が実際に場所で発見されたのだと語っている。


 香水は誇らしい顔で胸を張っていた。千尋はその顔を見て、心底ウンザリしたような顔を見せていた。しかしこの騒ぎで動画再生回数はうなぎのぼり。電波が重くなったのか、動画は途中で途切れて動かなくなってしまった。


「どういう事? 真凛ちゃんが助かったのはいいけど、どういう事?」

「そんな霊媒で誘拐事件が解決するなんて絶対ないですよ! 牧師生命をかけて言っていいです! 霊媒なんて聖書で禁じられた行為ですし、絶対インチです!」


 千尋はこの事にかなり、怒りを滲ませていた。普段はおっとり優しい人なので、栗子はこの事にもかなり驚く。


「真凛ちゃんの誘拐、この香水の自作自演かもしれませんね」


 千尋はい怒りながらそんな憶測を述べていたが、その証拠はどこにもなかった。

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