その2
「うえーん!」
部屋のベッドに突っ伏した私は、子供のような泣き声を上げて号泣する。
「にゃーん」
飼い猫のルミがベッドに上がってきて私の顔を覗き込む。
ルミはミヌエットのメス猫でウチに来て10年程になる。
私は顔を上げてルミに言う。
「ルミ~、お兄さんが遠くに行っちゃうよ。就職してからほとんど会えなくなってるのに、このまま海外に行っちゃったら……」
悲しみがあふれ出し涙となってとめどなく流れ落ち顔はひどい有様だ。
「そのうちにいい女性見つけちゃうんだー! 結婚してもっと遠くにいっちゃうんだー! 私まだ告白も出来てないのにー!」
白い体に黒いハチワレの入った顔を向けじっと私を見つめていたルミはいきなり背中に飛び乗る。
両親譲りの短い足で私の肩甲骨の真ん中辺りを、タン・タ・ターン、タン・タ・ターン、タン・タ・ターンとリズミカルに踏んだ後、首筋にガブリと嚙みついた。
私が「ギャッ!」と声を上げると、ルミは飛びのいてまた顔を覗き込んだ。
「なぐさめのつもりなの? でも痛いのは勘弁」
「にゃーん」
ひと鳴きしたルミはキャットドアを通って部屋を出ていく。
残された私は枕に顔を埋めてしばらく泣き続けたのだった。