その12
ルミの言葉に私はハッとする。
「ねえ、もしかして……今日が初めてじゃないの?」
「ええ。私が化け猫になってすぐの頃だから、少し前からよ。もちろん、この体は借り物だからむやみやたらと雄と交わってはいけないと思ったわ」
「当たり前よ」
「だからあなたの好きな人と交尾すればいいかな、と思って」
「えっ……?」
「それで、お兄さんを誘ったの」
「え―っ!!」
再び失神しそうになった私をお兄さんが抱き留める。
ルミには今までお兄さんが好きだって事を数え切れないくらい言っている。
でも猫に言葉がわからないと思っていたからで、それを利用するなんて暗黙のルールに反してない?
「お兄さんにはこう言ったわ」
ルミは、この姿は自分が化け猫の力で変化したモノだと嘘を言い、交尾を経験したいので抱いて欲しいと申し出た。
「戸惑っていたけど結局願いを聞いてくれた。元々お兄さんの方もあなたに好意を持っていたしね。そっくりさんだと思ったら断るはずがないわ」
「?!」
失神しかけた私の意識が瞬く間に回復した。
「そうなの、お兄さん?!」
「ま、まあ……ね」
「気づいてなかったの? あなたほどわかりやすくはなかったけど、お兄さんもずっと視線を送っていたわよ。ちょっとイヤラシい感じで」
「ちょっ、ルミ!」
「知ってた」
「ええっ?!」
お兄さんは目を見開いて私を見る。
「好きかどうかはわからなかったけど、私の胸に興味があるのは知ってたわ。大きく成長するにつれて見られる事が多くなっていたし」
お兄さんはあわわ、と声を漏らす。
「気にしないで。昔お兄さんが隠していたエッチな本も大きな胸の女の子が載ってるのがほとんだだったし。どんな理由でも興味を持たれるのは嬉しかった」
好きな相手に甘いのは恋する人間の特徴だ。
「え、エロ本見られてたんだ……」
好きな人のことに興味が尽きないのも特徴だから許して欲しい。