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その1
どうも、セドケンです。
この度、「小説家になろう」へ第二作目を投稿いたします。
化け猫、猫又をテーマにした作品です。
「エブリスタ」でシリーズ物としてすでに数作投稿していますが、今作は「小説家になろう」が初出しとなります。
どうぞお楽しみ下さい。
海外勤務。
この言葉が頭から離れない。
一時間ほど前の事。
久しぶりに実家に帰ってきたお兄さんを囲み家族四人で夕食を摂っている時、お兄さん自身の口からこの言葉が出た。
私はデザートの洋梨を口に入れたまま絶句する。
パパに「いつからだ?」、「どこに行くんだ?」、「いつまでになる?」と続けざまに聞かれたお兄さんは、「来月初め」、「ベトナムへ」、「今のところ三年の予定」と淀みなく答えた。
「二十代でそういう話を貰えるという事はお前も出世コースに乗ったんだな」
「それはわからないよ。けど、職名も付くし期待に応えられるよう頑張るつもりだ」
なんとなく嬉しそうな父子の会話を聞き、一気に食欲を失った私は手を合わせてご馳走様をすると梨を咥えたままぼう然と自分の部屋へ戻った。