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第71話 家出したケイト

ケイト「オーマイガー!桜餅がー!佳宏くん取って!」


え…寝言。しかも、今佳宏くんって言った?ということは、この人はカスミちゃん?!


佳宏「もしもし!今ボクの名前言わなかった?」


ボクはヒロとの会話を無視し、カスミちゃんをジーッと見ていた。


何故彼女がここにいるんだ。何故ボクらの家に入れたんだ?鍵はボクとヒロしか持っていないはず。どうやって侵入してきたんだ?謎すぎる。


佳宏「もしもしー!聞こえてるー?どうしたの?」


ピクッ


ウィーン


車椅子が急に動き出し彼女がボクのスマホを奪い取り、電話を切ってしまった。


ケイト「…今、私がここにいることは内緒よ?誰にも言っちゃダメ!わかった?佐藤くん?」

高嗣「…か、カスミちゃん。」

ケイト「もし、裏切ったらあなたの部屋を私がもらうから!」

高嗣「…わ、わかりました。約束します。」

ケイト「私、佳宏くんがいない生活に耐えきれなくて逃げてきたの。」

高嗣「…そうなんですか。」

ケイト「私我慢してきた。ずっとずっとずっと!中学から我慢してきた。試合の時だけ会う関係を続けてきた。高校を卒業したらロンドンの家を出てアメリカの大学へ進学したかった。彼にもっと近づきたかった。でも、パパに学生での同棲を反対されて私の夢は叶わなかった。私は悔しかった。パパの推薦で裏口入学が決まっていた大学に入学式当日までずっと家にこもってた。悔しい気持ちが大きすぎて仕方なかった。入学して新しい仲間はできた。全て家柄同士の集まりだけど。

 私は彼と遠距離恋愛をしていることが世に知れ渡っている為か私たちを別れさせて、私をデートに誘う悪い男性が多かった。私はお誘いを毎日毎日断り続けた。佳宏に敵う男は私の中ではいないから。どんなに離れていたって私の中で最高の男は佳宏、いえ、ジェイミー・バーナードなの。私は彼のことが大好き。初めテレビや生の試合で見た彼の印象はナルシストだし、顔も正直好みではなかった。私の好みの顔はフィギュアスケート選手の2大会連続金メダリストだから。佳宏の顔は正直日本人ぽくないし、アジア人離れした顔は正直苦手で。私が白人みたいだからかな?それに私は日本が大好きだし。日本人男性と出会いたいと思っていたの。

 でもね、パパがこっそり彼と会う機会を作ってくれて話す機会ができたの。何回か会っているうちに彼の家の事情を知ってしまって彼が可哀想だと思ってしまったの。彼は表では明るい雰囲気でいるけど、裏では人前では表せない暗い顔も持ってるんだって。それから私の彼を見る目が変わった。私は彼を救いたい気持ちが高まった。彼を心から笑顔にさせたい、私が支えたい。と思ったの。私は佳宏に直接連絡先を聞いて、私と彼のやりとりが始まった。やりとりは手紙だった。やりとりを始めてから半年後、彼から会いたいと返事がきた。アメリカで行われる国際大会に来てほしいと。手紙の中には招待券と航空券とホテルがセットになったチケットが入っていた。私も会いたい気持ちが強かった。私は家族には内緒で彼に会いに行くことに決めた。

 試合は佳宏が優勝。私は表彰式が終わるとすぐ控室へ向かった。私は佳宏から招待されたことをスタッフに伝えると中へ通してくれた。


コンコン

ガチャ


ソウジ「どなたですか?…ああ、あなたはたしか。」

ケイト「イギリスのアンダーソン家のトーマス伯爵の娘のケイトです。今日は一人で来ました。」

ソウジ「…お一人ですか?よく来て下さいました。さあ、中へどうぞ。ジェイミーぼっちゃんがお待ちです。」


 部屋の中へ入ると椅子に座りながら鏡を見つめる彼の姿があった。


ケイト「…試合お疲れ様でした。優勝おめでとうございます!」

佳宏「…よく来てくれたね!来てくれると思ってたよ!あれ?お父さんは?」

ケイト「一人で来ました!」

佳宏「…え!一人で⁈大丈夫なの?」

ケイト「…平気です。それに…。あ、あなたともっと親密な関係になりたくて!」


ギュッ


佳宏「…俺もだよ。文通でやりとりしているうちにキミともっと親密になりたいと思った。」

ケイト「…あなたも?」

佳宏「…うん。」

ケイト「…嬉しい。初めて自分の気持ちを家族以外の他人に言えた。私あなたを一生のパートナーにしたい!」

佳宏「…結婚?そこまでもう考えているの?」

ケイト「ええ!私あなたを守る!あなたのそばにずっといる!」

佳宏「え。逆に守りたいのは男の俺なんだけど。俺が守る側じゃダメ?」

ケイト「…いいわよ。必ず守ってね!」

佳宏「もちろん!守るに決まってるだろ?」


 その日から私たちは交際をスタートさせた。会う時は限られたけど。高校の時までは遠距離でもいいと思っていた。でも、高校を卒業してからは我慢できなくなっていた。彼ともっと距離を縮めたくなった。我慢できなくなった私は家族に内緒で今まで貯めていた貯金のみでアメリカへ出発した。」


ボクは黙ってカスミちゃんの話を聞いていた。

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