第百十二話 ジェイミーはアタシのもの
たかし「あ!」
ボクはジェイミーのことを考えすぎてしまい、開いたエレベーターのドアが閉じてしまったことを忘れていた。
気づいた時には、ドアが閉じて再びエレベーターが下の階に動いた時だった。
たかし『ジェイミーのことを考えすぎて忘れてしまった!また上に上がるのが面倒臭いなぁ。』
ボクは再びエレベーターが一階まで降りてドアが開き、住人らしき男性が一人乗ってきたのを確認してからドアを閉じて再びエレベーターが上に上がった。
そして、25階でエレベーターが止まり、男性がエレベーターから降りたのを確認すると再びエレベーターのドアを閉じるとエレベーターが上に上がり出す。
ボクたちが住む77階にエレベーターが止まるとボクは速攻でエレベーターを降りて自宅へと向かう。
ボクが歩いているとボクたちの自宅の前で高齢の女性がいるのが見えた。
ジェイミーの父方の祖母の浦嶋えいだった。
えいはボクの姿を見るとこちらに来い。と言いたげな様子でボクに視線を送る。
ボクは一瞬ハラハラした。
たかし『ジェイミーのお祖母さん?何故ボクの方を見ているんだ。それよりも何故ここにいるんだろう。不思議だ。ボクに何か言いたいことでもあるのだろうか。』
ボクは恐る恐るえいに近づいた。
するとえいは落ち着いた表情と声を出し、ボクに話しかけ始めた。
えい「ご機嫌よう。アンタがジェイミーの友人の佐藤たかしくんだろう?アンタにちょっと話がある。」
たかし「あ。こんばんは。あ、ああ貴女は。」
えい「アンタ。アタシを知らないのかい?ジェイミーの親友のくせに。」
たかし「す、すみません。」
えい「アタシはジェイミーの祖母の浦嶋えいだよ。ジェイミーの育ての親だよ。」
たかし「あ。でも。」
えい「なんだい?言ってごらん。」
たかし「え。ええと。な、なんでもございません!」
えい「アンタ。まさかアタシがあの子を誰よりも誰よりも大切に育ててきたのを知らないのかい?」
たかし「あ、んんと。その。し、知りません!」
えい「なんだと!アンタ。アタシを傷つけたね。許さない。」
たかし「失礼します!」
ボクがえいの前を急いで立ち去ろうとすると突然えいの言葉でボクはその場に立ち止まる。
えい「ジェイミーがアタシのそばを離れるなんて絶対に許さない!どんな手を使ってでもジェイミーをこの家に連れ戻す。」
ボクは彼女の表情を恐る恐る見るとえいの表情は怒りに満ち、そして威圧感を放っていた。
たかし『な、なんだ!この威圧感は。凄い。この人は相当自分の意思に歯向かうのが許せないんだろうなぁ。ワガママで自分勝手な人なんだろうなぁ。どれだけ偉い人なんだろう。どれだけジェイミーを。ジェイミーの家族を苦しめてきたのだろう。この威圧感と自分勝手な態度でジェイミーが苦しんできた気持ちがちょっとはわかるかもしれない。』
えい「ジェイミーはアタシのもの。ジェイミーはアタシから逃れることは許されない。できない。ジェイミーはアタシの鳥籠の中の鳥。」
ボクは彼女に対して何も言い返せなかった。
ボクが黙り込んでいるとえいは静かに一言もなくその場を去って行った。




