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訓練時々……

 家を出てすぐの道路を左に進む。

 始末したゾンビの死体をその辺の家へと放り投げる。


 雑な証拠隠滅だがいいだろう。

 ただ、この辺にハエが多いのはやっぱりそう言う事なんだろうな。

 その民家の塀の向こう側を見る気には慣れないな。

 いつかちゃんと埋葬しよう。そう、心に誓う。


 「うじゃうじゃ居るなー」


 そうして、その道路を真っ直ぐ進んでいるんだが奥に行けば行くほどゾンビの数が多くなっている。

 あのホームセンターのようにここにも何かあるのだろうか?

 しいて言えば、あの生存者達か?


 この数を倒して進むのは辛いか。

 かと言って隠れるのも難しい。


 んー、進むにしても何日かにかけて間引きする必要があるか……。

 それか屋根伝えに移動するかだが。

 そうして、近くの民家の青い屋根をジッと見る。

 とりあえず昇ってみるか?


 「レベルアップって凄いな!」


 改めて俺はそれを実感する。

 試しにジャンプしてみると、軽く力を入れただけで高く飛び上がる事が出来た。

 それを利用して塀に飛び乗ると、そこから更に跳躍する。

 トントンと忍者のように屋根の上に到着した俺は、その驚くべき身体能力に感動していた。


 「これなら行けるか?」


 そう思って隣の家の屋根に全力で飛び移る。


 「おっとっと……危ねっ」


 上手く乗る事は出来たが、危うくバランスを崩して落ちそうになる。

 

 「出来るには出来るけど、流石に道路を挟んだ家に飛び移るのは難しそうだ」


 そこまでするには流石にもっとレベルが上がらないと無理だろう。

 屋根を使って移動するのは諦める事にした。


 「ただ、これはいいな」


 そうして下をちらっと見ると、ゾンビの頭が見える。

 さっきまでいた道路とは反対側の道。

 そこもゾンビがそこかしこに蠢いていた。

 それならば……。


 「よっと」


 反対側の道路に面する家の屋根へと飛び移った。

 

 「さて、ここからは魔法の練習だ」


 俺は火の玉を空中に出現させる。

 んー、追従するのは自動だけど移動させるのは難しいな。

 

 高く上がったり、沈んだりを繰り返しながらどうにか二メートルの距離を移動させることに成功する。

 そうして、道路の真上に到着した。

 ここからだな。


 ———イメージは……なんだ?

 ———とりあえず静かに。

 ———音を消す。

 ———あー、静寂の。

 ———サプレッサー。


 ぎこちないイメージ。

 サプレッサーてどうイメージしたらいいのか?

 ただ、ぎこちないそのイメージだが何となく手ごたえを感じる。


 「さて、始めますか」


 そうして、俺は検証と訓練を始めた。

 

 「いけっ!」


 そのかけ声と共に、赤い光がゾンビ目掛けて飛んでいく。

 チュンッと少しだけ音を立てた炎の弾はゾンビを軽く吹き飛ばした。

 そのまま体が燃え出す。

 

 「やばっ!」


 慌てて水の魔法でそれを消火する。

 あー、この燃えるってのが難点かな。

 破壊力は申し分ないんだが……。


 住宅街でそれを使って倒すのは流石に危ないか。


 何かいい方法はないかな。

 消音には成功した。

 その証拠に、ゾンビの一体を葬ったが他の奴らには気づかれていない。

 それは成功したのは嬉しいがただ次なる問題が発生してしまう。


 んー、雷と水だもんな。

 いや、待てよ。

 そこで俺はある事を思いついた。


 「冷たい水を出す事が出来るなら」


 ———イメージは氷柱。

 ———冬に溶けた雪の涙。

 ———滴るそれは離れたくないと氷り固まる。

 ———氷弾。


 もちろん消音の効果を付与してそれを打ち出した。


 「……できた」


 もしかしたらと思ったが、こんなに簡単にできていいのか?

 それに水属性と思っていたが氷も操れるとなると。

 その属性の定義があやふやになる。


 頭が混乱する。

 俺の属性はいったい何なんだ?

 恐らく雷と思っているのも、火と思っているのも、違うだろう。

 ゲームの属性の定義が当てはまらない。

 

 嬉しい誤算だが、十全にその力を発揮するためにはもっと検証する必要がある。

 よし!

 俄然やる気が湧いてきた。

 となると、ここからはレベリングだ。

 魔法の実験をするなら、魔力がもっと必要である。


 「氷よ」


 そう言うと氷の球体が宙に浮く。

 要領は炎の玉を操る時と一緒。

 そうして狙いを定めてゾンビにそれを打ち出す。

 

 「———アガッ!」


 脳天に氷の塊が突き刺さる。

 それは貫通して反対側まで届いていた。


 「威力も中々だな」


 そうして場所を移動しながら、魔法でゾンビを仕留めていった。


 「ふぅ、少し休憩しよう」


 しかし、思った所に飛んでいくな。

 特に射撃なんてやったことないんだが?

 DEXが高いのか?


 そうなると、俺はSPDとDEX特化なのかもしれないな。

 魔力量は比較しようがないから分からないが、三十体程のゾンビを氷の魔法で葬ったがそれでも半分を切ったくらいだ。

 地面に降りた俺は魔石を集めながらそんな事を考えていた。


 一番利便性が高いのは水。

 攻撃力は炎。

 補助的なのは雷。

 その他として、創造?


 が今の俺の魔法か。


 特に水の魔法にはいろいろと助けられた。

 特に飲み水にポーション、その二点があるからこそ、こうして余裕が保たれている。

 風呂もお湯を沸かす事もできる。

 更には氷も作れるとなると、万能過ぎるのではないだろうか。


 イメージか……。

 いささか都合良すぎるような気がするが、あの生存者達も同じような感じなのだろうか?


 「魔術師か……」


 俺もどちらかと言えばそちらに分類されるのか?

 ただ、斧による必殺の一撃も覚えてるし。

 魔法戦士と言うのが正しいのかもしれない。


 最強火力が、あの対戦車ライフルだもんな。

 実物の威力は分からないが、それだけであの破壊力を生み出す。

 ただ問題はあのドデカい音だ。

 鼓膜が破れるレベルのそれ。

 対戦車ライフルと言っておきながら大砲のそれじゃないのだろうか?


 「変異体を倒す要か……ただ、消費魔力が凄いんだよな」


 たったの一発。

 それで根こそぎ魔力が持っていかれる。

 これは魔力操作の類でどうにかならないだろうか?


 「なんか、こうやって考えるの久しぶりだな」

 

 ふと、思考を止めて空を見上げた。


 「あちー」


 汗がおでこを伝って地面に落ちる。

 反射的にそれを手で拭ってしまった。


 「———やべっ!」


 ヌルっとした感触。

 血で汚れた手でそれを触ってしまった。


 「せっかく今日はあんまり汚れないように注意してたのに」


 少し落ち込む。

 あー、でも人の血も臓物も慣れた。

 触る感触はまだ微妙な所があるけどそれでもあまり気にならなくなりつつある。


 「この世界に毒されてるのかな?」


 俺の呟きは静寂の中に消えていく。

 さて、次に行くかな———


 「———俺を置いて逃げろっ!」


 ———誰かが襲われている。

 何処だ? 俺は急いでその声の主を探す事にした。

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