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神崎 唯2

 私こと神崎 唯は三日目もどうにか無事に生き残ることが出来ました。

 ただ、宗田さんが隠し事をして外に出ていたのは許せません。

 と言うか何も言ってくれないなんて、とても悲しかったです。


 「はぁー、久しぶりの外だ」


 そう、世界が変わってから初めて私も外に出ました。

 うだるような熱気が外の世界を支配しています。


 でも、ずっと部屋の中に籠っているよりは全然いいですね。


 「ゾンビは音に反応するから、あんまり大きな音を立てないようにね」


 あ、注意されちゃいました。

 少し外に出れたのが嬉しくて油断しすぎちゃいましたかね?

 宗田さんに迷惑をかけないように気を付けないといけません。


 「じゃあ、行こうか」

  

 そう宗田さんに言われて顔を見ると、とても緊張した様子でした。

 それは当たり前ですね。

 死線と言うやつでしょうか? それを乗り越えて一皮剥けたと言う事でしょうね。

 ———カッコいいです。

 階段を一歩一歩ゆっくりと降りていく宗田さん。

 曲がり角にたどり着いてその向こう側に何もない事を確認すると。


 「ふう。大丈夫みたいだ」


 そう言ったので、緊張している事を告げておこう。


 「なんか、凄い緊張しますね……」


 そう言った時に本当かよと言う顔をされました。

 緊張は本当ですよ。失礼ですね。

 あ、そう言えば敬語を辞めるようになっていたんだ。ついつい癖で敬語が出ちゃいますね。

 まだ、慣れませんね。

 そして、私は唯と呼ばれるようになりました。

 ———ウフフッ……ぐふっ


 いけない。見られてはいけない私が外に出るとこでした。

 精いっぱい頑張ってる宗田さん素敵ですよ。


 こんなカッコイイ宗田さんと一緒なんて緊張するに決まってますよね。


 そして、初めてのゾンビの討伐が始まりました。

 あぁ、これは私が夢を見た冒険の始まりです。

 不謹慎かもしれませんが、このファンタジーと呼ばれる世界に私はずっと憧れていました。

 

 そして、手に持ったバールで脳天を一撃。

 骨を砕いて脳みそに到達した感触。


 ………………。


 ………。


 こんなもんなんですね。

 人の頭を初めて砕きましたが、あんまり何も感じないものです。

 私がおかしいのでしょうか?


 ——————はっ!


 いけない。

 ここで普通にしていたら、宗田さんにバレてしまう。

 演技をしなきゃ。


 「唯、大丈夫か?」


 心配そうに声をかけてきた宗田さん。


 「宗———おえっ!」


 私はわざと吐いてみせました。

 てか、意外と吐けるものなんですね。

 あー、優しい宗田さんも素敵。

 しばらくこのままでいましょうかね。


 あー、こんな私がばれちゃったら幻滅されちゃいますよね。

 本当はゾンビを殺すのもなんとも思っていません。

 むしろ必要とあれば人も殺せると思うんですよね。


 凄く心配してくれて嬉しいですが、ごめんなさい。

 でも早くゾンビを倒してたくさん魔法も使えるようになって………

 将来は宗田さんと——————ぐふっ。

 あー、つまらない日常が終わって楽しくなって何よりですね。


 こうして、宗田さんと一緒に居れるんですからもう少し楽しんでもいいでしょうか?


 そして、宗田さんの身体能力に驚かされた私。

 私もレベルアップしたらこんな風になるのでしょうか?

 まぁ、か弱い私でいますけどね。

 それはごめんなさい。


 そして、嫌な予感がするからとマンションの屋上に到着しました。

 流石に階段はきつい……と言うのが正直な感想です。

 これは演技なしで足が痛い。

 

 てか、宗田さんは息を一つも切らさないなんてそれはチートですよ。


 ———バンッッッ!


 そうして、ホームセンターがどうなっているか見ていると扉が強く叩かれました。


 「生存者かっ!?」


 扉の向こう側へ声をかける宗田さん。

 どう考えても生存者な分けがありませんよ。

 あの強さで扉を叩くって普通の人間には出来ると思います?

 あ、レベルが上がれば別ですかね?

 宗田さんくらい身体能力が高ければ確かに可能と思いますが、この三日でそんな人って中々居ないんじゃないでしょうか?


 「唯っ! あれは人間じゃないっ!」


 「えっ!? でも、人の声が……」


 「ごめん、今は詳しくは説明できない。ただ、俺より前に出ないようにして」


 「わ、分かりました!」


 扉に近づいた宗田さんでしたが、青い顔をして戻ってきました。

 一応、外に居るのは人と思っていると言う事にしておきますが……

 絶対に違うと断言しておきます。


 「開けて開けて開けて開けて開けて開けて開けて開けて開けて------開けろーッッ!」


 ほら、やっぱり。

 でもゾンビでなければなんでしょうか?


 『逃げて』


 「———えっ? 何? 逃げて? ……誰?」


 え? 知らない人の声がしました。

 なんでしょう? 幻聴?


 『逃げて逃げて逃げて』


 そう何回も繰り返してきます。

 わけが分かりません。この状況で何処に逃げればいいと言うのでしょうか?

 逃げてと言うならそれも提示して欲しいものですよ。


 『殺される殺される殺される殺される殺される

 ———逃げて、早く逃げて』


 ちょっと段々とイライラとしてきました。

 だから、何処に? どうやって? 逃げろって言うの?

 

 「———殺される……逃げて……そう言われても何処に行けば?」


 『あの人を置いて逃げて』


 はっ!?

 宗田さんを囮にしろって? えっ?

 この声は馬鹿なの? 幻聴かなんか知らないけど何を言ってるの?

 そんなのダメに決まってるよね?

 だったら、お前が囮になれよっ!!!


 「えっ! そんなのダメに決まってるでしょ!」


 ついついそう叫んでしまいました。

 そうすると、心配そうに宗田さんが声をかけてきます。

 あぁ、迷惑をかけちゃったじゃないか……

 あの声がなんだか知らないが覚悟しろよ。恥をかかせやがって……


 あっ、いけない。

 冷静にならないと。

 ひっひっふー。


 あれ? 違ったっけ?


 まあ、落ち着いたからいいや。

 とりあえず扉の向こうから何が現れるか待ちましょうかね。

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