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おかしな感覚

読んでくださる皆様ありがとうございます。

拙い文で申し訳ありません。


今後ともお付き合いお願いします。


もし、よろしければ評価、ブックマーク、感想をしていただけるととても嬉しいです。

 「あ……れ…………?」


 「起きた?」


 しばらくして、唯は目を覚ました。 

 まだ夢うつつなのか、状況が理解出来ていない様子である。


 「えっ! そ、宗田さん!? ……うっ!」


 驚いたように飛び起きる唯。

 突然起き上がった事に体が追い付かずそのまま倒れそうになる彼女を抱きとめた。


 「———おっと、落ち着いて。

 俺だよ。宗田だよ。ちゃんと無事に返ってきたからね」


 諭すようにそう言うと、抱きしめた胸の中ですするように泣いている声が聞こえた。

 そっと頭を撫でて落ち着かせる。


 「———す、すいません!」


 しばらくそうしていると、落ち着いた唯は慌てて俺から離れた。

 顔を赤く染め上げてあたから見ても照れているのが分かる。

 その場に座って顔を隠す唯。

 

 「いや、唯が無事で何よりだよ。

 てか、あの数時間の間に何があったんだ?」


 「はっ、え? 何を言っているんですか? 数時間?」


 キョトンとした表情の彼女に首を傾げた。

 なんだろう? 何言ってんの見ないな顔をしていた。

 ん? そんなに時間が経ってないとか?


 「そうだよ。俺はあの白い奴を倒して、確かに気を失ったけどそんなに時間が経っていないんじゃ———」


 「一ヶ月」


 「え? 一か月?」


 唯が何を言っているか理解が出来なかった。

 

 「あれから、一か月くらいは経っています」


 告げられた真実に言葉が出てこなかった。

 一か月っていくら何でも時間が経ち過ぎじゃないのか?

 時間を確認する術は確かにない。

 だから、唯の言っている事を信じるしかないのだが……「はい、そうですか」と、すぐにその言葉を信じる事は出来なかった。


 ただ……帰ってきた時の部屋の惨状。

 それを思い出してみると何となく辻褄が合う。

 あれだけ買ってきた食料の殆どがなくなっていた。二人で節約すればそれなりには持つくらいはあったはずだ。

 それが数時間で消えるわけがない。

 風呂の水に関してもまだまだあった筈だがそれも空。

 そして、失礼だが唯の体臭もそうだ。何日も風呂に入っていないような臭いがしている。


 それだけでも状況証拠は十分じゃないだろうか。

 暴漢やなにかに襲われたわけでは無いのならそれでいいのだが……嘘だろ、としか思えない。


 「嘘だろ……」


 その本音が口から洩れた。

 

 「嘘じゃないですよ……何日も何日もずっと帰りを待っていました。

 でも、一週間を過ぎても帰って来なくて、宗田さんが死んでしまったのかと」


 ポツリポツリと語り出す。

 

 「そこからは記憶があいまいですが、ただひたすらに毎日をぼーっと過ごしていたと思います。

 外に食料を探しに行ける力もなく、何をするわけもなく宗田さんの死を受け入れずにいました」

 

 その時の唯の精神状態はかなり危険だったのだろう。


 「宗田さんを探しにも行けず、自分でも死ぬことができない。

 水がつい三日くらい前に完全に底をついた時、やっと死ねるのかと思いました。これで、楽になれると」


 悲壮感が漂う唯。

 どうして早く帰って来れなかったのかと俺は悔やんだ。

 だけど意識を失ってからの記憶が全くないのだ。

 彼女に何も言えずにその話を聞いていた。


 「でも、人って中々死ねなくて。

 それにもしかしたら帰って来るかもと、玄関の鍵も開けといたんですが……」


 だから鍵が開いていたのか。


 「この際、誰か知らない人が来れば殺してくれないかとも思いました。

 ただ、今は……生きてて良かったと思っています……」


 ああ本当に良かった。

 死のうと考えたけどそれを実行しなくて良かった。


 「あっ……」


 俺は力の限り唯を抱きしめていた。


 「く、苦しいです……それに、今臭いから」


 そう言われたが離す気はなかった。

 臭いも全く気にならない。

 とにかく無事だった事に俺は安堵する。

 良かった、良かったと心で何回も繰り返すと俺の背中を抱きしめたまま何度もさすってくれた。


 「ふふ、宗田さんも泣くんだね」


 しばらくして、お互いが落ち着くと少しだけいつもの唯が戻っていた。

 意地悪な表情を唯は、俺がさっき泣いていた事を茶化してしてくる。


 「……泣いてないし」


 それを向きになって否定するが、余計に悪戯心を刺激してしまう。

 顔を背ける俺を追うように、ねーねーと言って悪い顔の唯が迫って来る。


 「……唯、……臭うぞ」


 それを聞いた彼女は、体をビクッとさせて大きく俺から距離を取った。

 

 「ひ、ひどーいっ! さっきまで優しく抱きしめてくれたのに」


 ふんっ! それはお互い様だ。 

 茶化すのが悪い。


 「あー、でもお風呂に入りたい! 

 てか、なんで宗田さんは一か月も時間が経っているのに何もないんですか?」


 「知らん。むしろそれは俺が聞きたい」

 

 本当に俺が聞きたいくらいだ。

 まるで一人だけ時間に取り残されたようなそんな感じである。

 あの後にいったい何が起きたのか知りたい。

 ただ寝ていただけと思っていたのだがそうではないらしいのだ。


 これもレベルアップ? いや、そんな分けないか。


 「ところで、唯は体の方はもう大丈夫なのか?」

 

 不意に俺はそう尋ねた。

 昨日まであんなにも衰弱していたのだ、ポーション水を試したが初めて試したために効果が本当にあったか分からない。

 

 「体……なんか、不思議なくらい元気なんですよね。確かに少し疲れはあるけど……宗田さん何かした?」


 そう言われて、ポーション水の事を素直に話した。


 「えっ! それは凄い! てか、宗田さん万能すぎる! チートです! チート!!」


 「チート、チート言うな! 俺もまさか効果が出るとは思わなかったんだよ。なにせ初めてだったんだからさ」


 しかし、魔法とは便利なものだ。

 イメージした事が体現化される。

 これを上手く扱えばこの世界で生き残る事は可能なだと思うのだが、それはあくまでゾンビを相手にした時だ。

 あの化け物がまた出てきた時にどうするか対策を考えないといけないのではあるが。


 「あー、せっかくお風呂に水を貯めようと思ったんだけどなー。

 魔力があればいくらでも出せるしさ」


 「ええーっ!! お風呂に入りたい! 宗田さん早くっ!」


 「でも。俺は思うんだ……チートって反則だからさ。

 俺はゲームでも何でもフェアプレイが好きだから、使いたくないんだよね」


 仕返しとばかりにそんな事を言うと。


 「うっ……ごめんなさい……宗田さんは……です」


 「えっ? 聞こえなかったなー?」


 聞こえているのだが、わざとそう言う。


 「もう! 宗田さんは神です! 神の中の神! 大好きです! だから、お風呂に入らせて下さい」


 ははーとその場にひれ伏す唯。

 俺はそれに対して「苦しゅうない。待っておれ」と返すとお風呂場に行って魔法で浴槽いっぱいにお湯を注いだ。


 「あー、全然余裕だな」


 そう、魔力に関してである。

 レベルアップした所為か、浴槽いっぱいにお湯を注いだが全然余裕だった。

 これだけの恩恵があるなら、レベルを上げる価値はあるのだろう。

 俺は一仕事を終えると、お風呂の準備ができたと唯に伝えに行くことにした。 

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 28話の内容とほぼ同じですが、修正版ですか?
[良い点] 更新お疲れ様です。 [一言] …となると一月ほど意識が無かった、と。
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