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新手?

 それはどう言うことだ? シーリスに聞いた結果、更に疑問が増えてしまった。魂の器が大きくなったとはどう言うことだろうか?


 ――現在のマスターの位階レベルは三十。恐らく、神崎 唯も同レベルと思われます。


 いつの間にかそんなに上がっていたのか……。てか、唯も強いと思ってたけど同じレベルだったのか。


 ――位階レベルが三十に到達した者は、更なる高見を目指すため器の拡張がされます。それが、今回の遅延の原因。今までレベルを上げるのに必要な数値が十だとしたら、これからは百になると言った感じです。


 え? それって何もメリットなくない?


 ――いえ、その分レベルが上がった時の恩恵も大きくなります。基礎能力の向上率アップ、スキル能力の向上、など初期の器以上に様々な面において強化されると思ってもらって大丈夫です。


 要するに、初級職から上の職業になったと言うことだろうか? レベルが上がりにくい分、もっと強くなれるって奴かな?


 ――イエス。かねがね間違いじゃありません。後でお伝えしようと思いましたが、マスターに新しい権能と、既存の権能が強化されたことを伝えようと思っていました。


 おっ、マジか。それは嬉しい限りだ。ちなみに、新しい権能はなんだ?


 ――新しい権能は”魔力消費半減”です。名前の通り、魔法に使用する魔力が半減されます。常時発動型のスキルとなっています。


 なにそれ……。強すぎない? 学校を壁で覆うにも、大量の魔力が必要である。これで、なおかつレベルを更に上げれば冬までに目的は達成出来るんじゃないだろうか。今、一番欲しいスキルであることには違いない。

 さて、強化された能力はなんだろうか?


 ――強化された能力は模倣と魔力吸収の二つ。まずは模倣についてですが、次回使用までの時間が十二時間から六時間へ短縮。

 魔力吸収については、振れずに三十センチ先の魔力の吸収が可能となります。


 模倣はリキャストまでの時間が半分に、それでも六時間はあるんだから使用するタイミングは注意が必要。魔力吸収は三十センチしかないが、触れないで済むのは嬉しい。今回みたいな拷問……のような状況にならないで済むだろうし。

 今回得た能力は地味なものばかりだが、どんどんと人間を辞めてる気がする。


 「宗田さん? 突然黙ってどうしたの?」 


 「あ、悪い。シーリスに今の事を聞いていたんだ」


 「そうだったんだ。何か分かったのかな?」


 興味津々と言った感じで俺を見る唯。それに対してシーリスから得た情報を話した。


 「なるほど……。と言うことは今よりも強くなれるって事なんだね。ただ、レベルが上がるのに時間がかかるのはあれだけどね」

 

 「レベリングしなきゃ」と両手で拳を作って気合いを入れていた。


 「後はこの状況からどうやって脱出するかだな……」


 「そうだね……。まだ、うじゃうじゃ下に居るし。この数は流石にね」


 と、二人揃って外を見る。


 「見えない所に隠れて、ほとぼりが冷めるまで待つか」


 唯が階段を壊したお陰で、下の階層で右往左往としているネックリー達は、未だこのフロアに上がって来ることは出来ていなかった。ならば、見つからなければ奴らも諦めるのではないかと思ったのだ。「屋上に行こう」、そう唯に告げてこのフロアを後にする。

 

 「しかし、派手に壊したね」


 「でしょー! 頑張ったんだから褒めてね」


 と、階段の踊場に到着すると唯が破壊した一部が視界に入いる。さっきは戦いの最中でちゃんと見る余裕はなかったが、彼女の怪力の凄まじさを改めて実感した。俺が漏らした言葉を褒められた、と感じとった彼女は両手を腰に当て少し体を仰け反らせ自慢気である。


 「あー……居るね」


 壊れかけの手すりに軽く手をかけ、下を覗く。下りは右回りの階段、ちょうど俺たちの真下に同じように扉があるのだろう。姿は見えないが、物音が聞こえた。

 気づかれる前に首を引っ込める。今見つかれば、ネックリー達が諦めるまでに時間がかかってしまいそうだと、俺と唯は足早に屋上へと向かった。


 「ふー、着いたね」


 階段を駆け上がって屋上へと到着すると、唯は胸いっぱいに空気を吸い込み、それを吐き出した。一応の戦いが終わった事を改めて実感する事が出来たのだろう、そう言う俺も強張った肩から自然と力が抜ける。ぼやけた銀色のような空の色に、そろそろ夜明けが近い事を悟る。

 帰るのが遅れそうだがみんな心配しないだろうか? むしろ、それで捜索隊を出されたら危険だと思った。この周辺はサソリ型の眷属で溢れている。それが、主を失った事で自由に徘徊しているだろう。ネックリーの戦闘力はグールと同等くらい。今の学校に居る警備隊の人達にはかなり荷が重すぎる。となれば、真奈以外の人が相手するとまずいな……出来る限り早く戻りたいが、


 「まだ、こんなに……」


 屋上の端へと下の様子を確認するために移動する。柵の変わりに囲ってある膝くらいの高さのコンクリートのブロック。落下防止には心許ないが、それが隙間なく四隅に設置されていた。身をかがめそこから首だけを伸ばして、下を覗いた。当初よりは数が減ったが、数百体のネックリーがひしめき合っている姿が見える。

 侵入を試みようと地面に頭を叩きつけ、二階の壁にある大穴めがけ飛び上がる。ただ、どうにも高さが足りず壁に激突すると、ぐしゃりと音を立て地面へと落下する。なかには、空中で仲間と激突してしまう者までいた。


 「これは何とも……」


 その混沌とした光景に渋い顔をする唯。彼女は顔をひょいと下げてコンクリートのブロックに背中を預け、もたれかかるように座りこんだ。


 「早く帰りたいなー」


 と、唯はぼやく。俺も彼女と同じように座った。


 「そうだな」


 彼女を横目に見やり、そう一言返すと静かに頷きを返してくる。ボスを倒したけど、この状況はあまりよろしくない。力技で抜け出そうにも、如何せん敵の数が多すぎるのだ。少しでも散ってくれればいいのだが、今はまだその気配を見せない。

 レベルアップで魔力は回復したが、体の疲れと精神的疲労は残ったまま。少しでも回復するため、俺達は回復に努めることにした。この位置はちょうど屋上の入り口が正面に見える。ネックリーが侵入してきても距離があり、即座に反応出来るだろう。欲を言えば目を瞑りたかったが致し方ない。その扉の一点を見つめながら、頭の中を空にして休む。


 「んっ? なんだ?」


 視界の端で何かが動いた。


 「唯っ! あれ見て!」


 片隅で動いた黒い物体に焦点を合わせると、そいつと目があった。異形の存在にぎょっとすると同時に畏怖のようなものを感じる。そこから警戒へと転じると、慌てて唯に声をかけた。


 「何……あれ……?」


 体を休めていた彼女も、俺の声に我に返ると視界に異形の何か(・・)が視界に入ったのだろか、その声には驚愕の色が込められていた。互いに臨戦態勢へと移る。唯はハンマーを片手に、俺は火球を出現させ立ち上がる。 


 そして――そいつと目が合った。

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