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報酬と器

 『討伐処理の実行――実行終了。討伐者には報酬を贈呈します。お選びください』


 今回もちゃんと報酬が貰えるようである。選ぶと言うことは複数あるのだろうか?


 『1、人類領域 2、無限水源 ――以上、二つの中から一つお選びください』


 人類領域はともかく、無限水源ってなんだ?


 「質問いいか?」


 さっそく神の声に聞いてみる事にした。


 『質問を許可します』


 「まず……人類領域の範囲と領域の維持条件を教えて欲しい」


 『質問の受理――人類領域の範囲について

 ボス級モンスター討伐による、人類領域の範囲は建物一つ分。土地は含まれません。

 次に人類領域の維持条件について

 建物の崩壊率が八十パーセント以上で、通常領域へと変わります。なお、増設した部分も含まれますのでご注意ください。

 以上となります』


 範囲が前より狭いな。これは、ネームド級じゃないからなのだろうか?


 「ネームド級とボス級では貰える報酬が違うのか?」


 『質問を受理――ネームド級、ボス級の違いについて

 ボス級とはその種族の長たる存在。

 ネームド級とは種族の中の特異的存在。

 強さの定義として、通常モンスターがネームドになった場合は”ボス級”とされ、ボス級がネームド級となった場合は”魔王の化身”、とされます。

 以上の事を踏まえて、ほとんどの場合はネームド級の方が強力で報酬も良くなります』


 つまりは以前倒したアドゥルバは通常モンスターがネームド級になったと言うことか? 神の声が現れる時、倒したボスのクラスを言っている事からそうなのだろう。だいたい理解できたかな?


 「唯は聞きたいことある?」


 「私も……大丈夫かな」


 一瞬、考える素振りを見せたが自分の中で解決したのか、頷き問題ないことを伝えてきた。「次の質問にいくよ?」と、そう伝えると「いいよ」と返事が返ってくる。


 「じゃぁ、次は”無限水源”について教えてくれ」


 『質問を受理――無限水源について

 特殊な魔石を利用して、永久的に水を生み出すシステム。形状は噴水型、池型、井戸型、と好みに合わせて変更可能。人類領域でのみ使用可能。範囲最大直径二メートル。魔石を移動させることで場所の変更も可。そのまま飲み水としての利用も可』


 かなり有益なアイテムなんじゃないか? 学校では井戸水を利用しているが、飲む為には一度煮沸させる必要がある。無限水源はそれも必要がない。特に、今の人数分の飲み水を補充するのもかなりの労力。加えて体を洗う水を汲み上げるのも大変である。もし、これを利用すれば水を簡単に得られるし、川のように引っ張ることができれば農地や水田と言ったのも作ることは可能になるんじゃないか? 

 今回は二つの報酬。人類領域と無限水源。どちらも魅力的だが、俺としては――


 「唯はどっちがいいと思う?」


 「私は……無限水源かな。今、闇雲に領域を増やしても物質も何もかも足りないし、そこまでメリットがないように感じるんだよね」


 俺と唯の考えは同じ。だったら、迷うことなく無限水源でいいだろう。紫苑さんなら何と言うか分からないけれど、少しでも今の生活を豊かにする必要があると俺は思った。特に水問題。冬になれば井戸の水を汲み上げるのも一苦労になるだろう。それこそ、凍ってしまえば死活問題だしな。

 後は風呂問題もある。この無限水源を上手く利用すれば水の供給も楽になるだろうし。そうなれば、あの冷たい冷水を浴びる必要もなくなるだろう。

 そうと決まれば――


 「無限水源で頼む」


 『承知しました。報酬の受け渡し処理へ移行。対象:神崎 宗田、報酬内容:無限水源――処理実行。手を開いて前に出してください』


 神の声の指示通りに手を前に伸ばす。すると、手の平が光り出した。特に熱いとか冷たいとか異常を感じる事もなくそのままでいると、手の平に何かが振れる感覚がした。


 『報酬の受け渡し完了』


 神の声がそう言うと、光が消え変わりにずっしりとした重さを感じた。


 「これが……無限水源?」


 手の平には拳ほどの大きさの青い石があった。伸ばした腕を戻しそれを眺める。


 『設置したい場所に置き、魔力を込めて頂ければ無限水源が発動します。移動したい場合は、魔石を取り出し、範囲外へと移動してください』


 ここで試してみたい気もするが、人類領域でのみとの話だった。好奇心にくすぐられた心を飲み込んで、一旦はそれをしまう事にする。


 「あっ……、ごめん。唯、これ預かっててもらっていい?」


 腰の辺りに手を伸ばして気づいた。先の戦いで、ポーチもダメになっていたんだった。変わりに唯に預けることした。


 「はい。って、結構重たいんですね。壊さないようにしないと」


 ここから学校に戻るまでは出来る限り戦闘を避けたいな。せっかく手に入れた魔石が壊れてしまっては意味がない。


 『以上、ボスモンスター討伐による報酬となります。なお、この領域は二十四時間以内に通常領域となりますので、ご注意願います』


 今回の報酬はこの無限水源だけのようだ。アドゥルバの時のようにスキル報酬はないようである。これはボス級とネームド級の違いなのだろうか?


 『それでは、人類の繁栄を願っております』


 ブツンとブラウン管テレビが消えるような音がすると、神の声はそれっきり聞こえなくなった。


 「はぁ……疲れた」


 一通りの事を終えると、自然とそんな言葉が漏れた。


 「疲れたね……てか、あのネックリーの大群どうしよう?」


 超電磁砲(レールガン)によって開けられたら穴から下を覗くと、こっちを見上げるネックリーが多数。不気味な笑みを浮かべて餌である俺達に、向かってこようとしていた。


 「階段は大丈夫なんだよな?」


 「大丈夫だと思うよ。他に上に登れそうなのはエレベーターくらいだと思うし」


 それならしばらくここに身を潜めようか。階段から屋上に行けたよな? 姿が見えないようにしないとな。


 「んっ? あれ? 今頃……?」

 

 と、唯が呟いた。


 「何が……? って、レベルアップしたの……か?」


 体のそこから湧き上がる力の塊。それが全身を満たすと万能感のような者に満たされる。


 「どう言うことだ?」


 今まではすぐにレベルが上がっていたのに? どうして今回はここまでラグが発生したんだ? こう言う時の――


 ――シーリス。


 ――イエス、マスター。お呼びでしょうか?


 呼ばれて即座に現れる、シーリスは有能だ。言える範囲に制限はあるものの、だいたいの疑問を解消してくれる。そんな彼? 彼女? もとい物知り博士とも言えるシーリスに今の現象について聞いてみる事にした。


 ――それは、魂の器が一段階大きくなったために処理の待ち時間が発生したものと思われます。

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