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大罪はよく主題になる

 八つの枢要罪? 初めて聞いた。七つの大罪ならよくアニメや漫画、ラノベの題材にされる事が多いからなんとなく分かる。

 その枢要罪と言うのもそれに関係するのか?


 ――イエス、マスター。結論から言いますと、七つの大罪に繋がりますが、せっかくなので生い立ちからしっかり話させて貰います。


 これはシーリスの持っている知識とやらの事なのだろうか? ぜひ、教えてもらいたい。シーリスの話に興味深々と耳を傾ける。


 ――人間とは、マスターはなんで創られた……産まれたと思いますか?


 シーリスからのまさかの問いかけに、俺はすぐに解答を思いつかなかった。今まで考えた事もなければ思った事もない。人間の存在理由か……。

 世界のシステムが創った? でも、なぜ? 種を繁栄させるも違う……か。結局、いくら考えようが結論は見えなかった。

 返答がない事を、分からないと察したのか物語りの語り部となったシーリスが次の話を紡ぎます出す。


 ――それは……神と悪魔の代理戦争のためです。


 ……代理戦争……神の世界でも戦争をしているのか。


 ――元々、神と悪魔はずっと戦いを繰り返していました。熾烈な争いは、無限に存在する宇宙を次々に破壊し、滅ぼしたのです。当時、知能を持った生物はいませんでしたが、何億、何百億、何千億年と続く争いは、そのほとんどを――滅ぼしました。


 まるで本当に見てきたかのように、追憶するように、懐かしむように、物語りを語る。だけど、フィクションではない。

 俺にはまったく想像がつかない期間を神と悪魔は争い続けたと言うことなのだろうな。なればその結末がどうなるか、聞き手としては気になるところ。

 シーリスの次の言葉を黙って待つ事にする。


 ――長く続く戦いに、母なる神が憂い、悲しみ、そして、怒りを見せたのです。この母なる神が、神や悪魔を創り出した絶対的存在になります。

 現れた生みの親に、一様に膝をつき頭を垂れ、どうにか怒りを静めて欲しいと願ったのですが……その怒りは収まらず。敗れた方を滅ぼすと言いました。


 神はかなり短気なのだろうか? 戦争になったり、滅ぼしたりと争いが好きだなと思ってしまう。


 ――神も悪魔も大慌て。この二つの種族も同じタイミングで創られた、兄弟のようなもの。そして、その兄弟喧嘩の行く末が……死。

 そうなってはたまらないと、どうにかする方法はないかと皆で知恵をしぼります。すると、知恵の神が私達の変わりに戦争をさせようと言いました。

 だけど、別の悪魔はそれでは納得してくれないのでは、何せ、生命体と言えば似ても似つかない存在ばかり、母はそれを良しとしないだろうと言ったのです。

 その議論を行って数万年が経過した時、自分達に似せた人形を創ろうと閃きます。つまり、それが――人間です。

 生命体が似ても似つかないと言った段階で気づけよと思うでしょうが、それだけ母なる神の怒りが凄まじかったと思ってください。まともに考える事ができないくらいに。


 改めて聞かされた人間の生い立ちに、驚愕するばかり。ただ、聞けば親に怒られるのが怖いから、どうにか誤魔化す理由を考える子供みたいにも思った。でも、代償は死。

 そうなれば、誰しも必死になると言うわけか。


 ――まずは土を元に人の形を、次にそこに感覚を、内蔵を皮膚を目を鼻を口を耳をどんどんと取り付けてました。もちろん何度も……いえ、何万回も失敗し、最終的に今の形になるのに、数千億年が経過していますが、神にとってはたいした時間ではありません。この間は母なる神の気を反らせるために、他の神と悪魔がずっともてなし続けています。

 そして、完全した喜びもつかの間、まったく機能しない……つまり魂がないため死体のようなものでしかなかったのです。


 試行錯誤の結果が……俺達なんだな。


 ――創造の神が言います。他の生命体みたいに、生命力がないから動かないと。創造の神がそれを創り、送り込むと――動いた。周囲は歓声に包まれました。

 だけど、それはどうにも味気ない。土塊のゴーレムよりはいい、ただ、それだけ。これでは代理戦争を行う事は出来ないと思いました。

 ここで、八人の悪魔が名乗り出ます。任せろと。

 負けじと神も名乗りでました。こっちは七人でいいと。


 八人? これが八つの枢要罪に関わるのか?


 ――その通りです。悪魔はその感情のない人間に、八つの罪を入れました。

 暴食、色欲、強欲、憂鬱、憤怒、怠惰、虚飾、傲慢 の八つを。

 それに負けじと神は七つの徳を入れます。

 純潔、節制、救恤、勤勉、慈悲、忍耐、謙譲 の七つを。

 こうして初めて人間に感情が生まれたのです。


 あれ? 嫉妬がない。


 ――最初にこの感情を使って試しに、代理戦争を行う事にしました。

 ルールは善人が多ければ神が勝ち。悪人が多ければ悪魔の勝ち、と。結果から言うと悪魔は劣勢に立たされます。

 そこで、別の悪魔が名乗り出て憂鬱と虚飾を殺しました。それが――嫉妬と暴食。新参者の悪魔だったが、その実力は他の大罪の悪魔に匹敵するほど。劣勢だった戦局が一変して五分に。

 これが、七つの大罪、

 傲慢、嫉妬、憤怒、怠惰、強欲、暴食、色欲

 の完全となります。


 ここでようやく嫉妬が出てきたわけか……それで、何がやばいんだ?


 ――マスターは人を羨む事はありますか?


 そう問いかけられて考えてみたが……あるな。子供でも大人でも。


 ――そう。それです。唯一平和主義の……怠け者の怠惰を覗けば日常で一番感じる事があるのではないかなと。

 いわゆる危険度の序列が感じやすい順番。七人の悪魔の単純な力はほぼ互角。だけど、人間に及ぼす影響が強いのが怠惰の次に嫉妬。

 そして、使徒とは宣教者的存在です。要するに神のお告げが聞こえる人はこれに当たりますが、もちろん悪魔の声だって聞こえます。

 その中で、一番そそのかれやすく、悪魔に体を乗っ取られる割合が高いのが、嫉妬の使徒。その力は……魔王にだって匹敵します。本物はそれ以上ですが。代理戦争のルール上、人を通さないで手助けするのは禁止され、それを守らなければペナルティーが発生するようになっているのです。

 なので、悪魔は必死に人間をそそのかして、体を乗っ取り、善人を殺す事に躍起しています。


 魔王に匹敵するだって? 今ですら人類まずい状況なのに、更に魔王がもう一人誕生したら完全に詰む。


 ――使徒に選ばれる理由。それは――狂うほどその感情が強く、毒に体が浸されるように心が、どっぷりと浸っていること。

 それが、塚本 真奈です。


 そんな……彼女が? 嘘だろ? だってそんなそぶりは――。


 ――私が忠告した時、あったはずです。まだ、かろうじて理性で押さえ込んでいますが……時期に。


 なぁ、シーリス。俺はどうしたらいいんだ?


 ――対象の……抹殺を推奨します。


 シーリスはそう言うだろうとなんとなく想像できた。だから、改めて言われても怒りやそれに類似する感情が出てくる事はない。視界から急速に色が消え失せ、耳から音が遠ざかる。波が引いていくように、全ての感情が無に返ると悲しいような、どうして真奈が? と言う思いが津波となって押し寄せてきた。

 感情が爆発しそうになるのを、歯を噛み締めて押し込めると、ギィッと後頭部に音が響いた。


 ――マスター、落ち着いて。まだ……可能性はあります。


 少し落ち着かないと……。パンク寸前の感情に思考が覚束ない。

 だけど、無理矢理感情の波を押さえつけて、理性をどうにか掴み取る。

 シーリス……それはなんだ?


 ――マスター……いえ、なんでもありません。では。一つ目ですが――嫉妬の悪魔を殺す事です。


 魔王以上の存在にただの人間……量産型日本人が勝てると思うのか? そんなの不可能だ。シーリスにそんなつもりがなくても、わざとそうしてるんじゃないかと思う自分がいた。それが、俺の触れてはいけない神経を撫でるように触る。

 蓋をした荒い心が疼き、我慢の限界を向かえようとしていた。次にシーリスが言うことが少しでも遅ければ、人の目など気にせず怒鳴り散らしていたかもしれない。


 ――そして、もう一つが彼女がその感情に打ち勝つ事。

 ただ…………可能性は限りなく0に近いけれど、0ではありません。極少数ですが前例はあります。

 それに、私と言う存在があれば多少のアドバイスは出来ますので……確率は少しあがります。

 ですが……推奨しかねます。

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