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31話 朝食

 朝、リリはまずはスペードの間に向かっている。

 ファーストに聞く。


「全員分の中に着る服とジャージと靴はあるよね」

「はい、5着と5足揃っております」


 ファーストはワゴンを押しながら答える。

 それを聞いてリリはなら大丈夫だねと伝えた。


 スペードの間に着く。

 ノックをして扉を開ける。

 ウィルは起きているようだ。

 とりあえず水槽の水を抜く。

 そしてリリは話しかける。


「おはよう、ウィル。今日のことは全員そろってから説明するから、とりあえずこれに着替えて部屋の外に出てきてくれる?」


 ウィルはそれを聞いて言う。


「おはよう、リリさん。それでこれはどうやって着ればいいのかな?」


 リリはファーストの方を見て聞く。


「さんをつけるのやめてもらってもいいかな?」


 ファーストはとても嫌そうに首を横に振る。

 

「絶対に嫌です」


 リリはそれを見てウィルに伝える。


「そのままでお願いします」

「分かったよ」


 そのあと、リリは着かたを説明する。


「ここの部分をもって下に下げると服の前側が開くよ。それで腕を通して、服の右側と左側の部分を合わせてからさっきの下に下げたやつを今度は上にあげると着れます」


 リリは実際にジャージを持って、ファスナーの上げ下げのやり方を伝えた。

 ウィルに持ってもらってやってもらう。

 少し手間取ったが無事にファスナーの上げ下げができるようになった。

 次に靴紐の結び方を説明する。

 紐の結び方はこの世界でも似たようなものがあったようで、かた結びでむすんだ。

 無事に1人で着れるようになったので、リリとファーストは外に出る。


 スペードの間を出るとすぐにトランプの館のラウンジに出る。

 テーブルやソファー、ちょっとした食べ物や飲み物を食べられるバーが設置してある。

 ウィルは少しして出てきた。

 おしゃれな感じに仕上がっている。

 ウィルは扉の外に出て豪華な内装に驚いていた。


 ウィルにとりあえずソファーに座って待っていてもらう。


 クラブの間に向かう。

 そこでウィルに伝えたのと同じようにグローにジャージの着かたを教える。

 グローも無事に着れるようになったので外で待つ。

 グローが外に出てくる。

 するとすぐにウィルと目が合うので、グローはウィルに近づいて無事に治ってよかったと伝えた。


 ダイアの間に向かう。

 ウィルとグローは扉の前で待機することにしたようだ。

 ダイアの間ではナリダに同じようにジャージの着かたを教える。

 ナリダも無事に着れるようになったので外で待つ。

 ナリダが外に出てきてウィルを見つけると、治ってよかったわと言って抱き着いた。

 ウィルはナリダの頭を撫でている。


 ジョーカーの間に向かう。

 ウィル、グロー、ナリダが扉の外で待っている。

 ジョーカーの間ではダグに同じようにジャージの着かたを教える。

 ダグも無事に着れるようになったので外で待つ。

 ダグが外に出てきてウィルを見つけると、治ってよかったぜと言って肩に手を置いている。


 ハートの間に向かう。

 ウィル、グロー、ナリダ、ダグが扉の外で待っている。

 ハートの間ではルティナに同じようにジャージの着かたを教える。

 ルティナも無事に着れるようになったので外で待つ。

 ルティナが外に出てきてウィルを見つけると、本当に良かったと言ってウィルの手を握った。

 ウィルも手を握り返した。


 無事におしゃれなジャージを着た5人が揃ったので、ソファーに座ってもらう。

 全員が直接会えてうれしそうだ。

 まずは朝食をと思ってリリがベルを鳴らす。


「朝食を持ってきてもらうように合図したから、今日は皆で食べたらいいんじゃないかな」


 空を走る光はそれを聞いて、とても楽しそうに笑った。

 すぐに朝食が運ばれてくる。

 かなり大きなテーブルだが、全員が食べるとなると全く大きさが足りていなかった。

 なのでリリはこう伝える。


「お代わりが必要になったら言ってね。このスペースじゃ全部は載せられないから」


 全員がリリにありがとうと言って、聖なる木に安全を願ってから食べ始めた。

 すごい速さで食べ物が消えていく。

 リリとファーストは初めて直接目の前で空を走る光の食事風景を見たので、かなり引いている。

 会話は全くない、食べることに全神経を集中させていた。

 少しすると食器が何個か空いたので、どうせ必要だろうとリリはベルを鳴らす。

 空を走る光はそれを聞いて、ありがとうと言ってまた食事に戻った。

 なので逆の方がいいんじゃないかと思って言った。


「私が適当なタイミングでお代わりを頼むから、いらないなっていうタイミングで止めてね」


 空を走る光のメンバーは口々に分かったと言った。

 リリは空を走る光の食事風景を見るのをやめて、ファーストと話すことにした。


「ねえファースト、今日の朝食だったら何が好み?」


 ファーストは空を走る光が食べている物をみてから伝える。


「フレンチトーストです」


 リリは思った、好みが似ているかもしれない。


「おー、私と同じだね。甘くておいしいよね。ハチミツでもメープルシロップでも甘いのをかけて食べるのが最高だよね」

「はい、私はハチミツが好きです」


 リリは話していたら食べたくなってきたので、ベルを鳴らす。

 フレンチトーストだけが大量に届けられた。

 トッピングも様々である。

 リリに喜んでほしいという、気合いが感じられた。

 リリは伝える。


「ありがとう、でもこんなにたくさんは食べられないかな」


 それを聞いてダグが話す。


「なら俺たちが食べてやるよ」


 リリはそれを聞いて、この量を食べるのかーという気持ちになった。

 とりあえず、よろしくねと言っておいた。

 空を走る光の全員が分かったというように返す。

 リリはそれを聞いて安心してフレンチトーストを食べ始める。

 ファーストも食べようとしていた。


 いただきますと言ってから、まずはハチミツをかけて食べることにする。

 ひたひたになるくらいにかけた。

 そして食べる。

 リリは思った。

 やっぱり拠点で、できた食べ物は最高だね。

 異世界に来た日から毎日食べているが、全く飽きない美味しさだ。

 そういえばとリリは思う。

 自分で作ったものは食べてないなと。


 リリは食べ物に関しては基本的に一番いい素材の物だけを使って、何でも作るようにしている。

 リリはアイテムボックスからメープルシロップを取り出す。

 思いっきりかける。

 そして食べた。


(支配にかかってなくても最高の味って味わえるんだね)


 とりあえず、ファーストの分にもかけてあげた。

 ファーストはありがとうございますと言ってから、嬉しそうにそれを食べ始める。

 リリは自分が今持っている分を食べ切ろうと、食べ始めた。

 そんな時にウィルから声がかかる。


「それって何か違うの?」


 それを聞いてファーストが自慢げに答える。


「こちらはリリ様が原料の生産から、メープルシロップになるまでを全てお1人でなされたものです。ここで一般的に使われている物とはわけが違います。最高の美味しさです」


 それを聞いて、空を走る光のメンバーは食べてみたそうにしている。

 なのでリリは大量のフレンチトーストに大量にメープルシロップをかけてあげた。

 そして渡す。


 空を走る光は一口食べただけで味の違いに気がついたようだ。

 なによこれ、美味しすぎる、うますぎだろ、リリさんありがとうといった声が聞こえる。

 リリはそんな声を聴きながら自分が今持っているフレンチトーストを、楽しそうに食べ始めた。

 リリとファーストがフレンチトーストを1枚食べている間に、空を走る光のメンバーは3枚は食べている。

 大量のフレンチトーストはすぐになくなった。

 そのあとテーブルに並んでいる朝食にまた手をつけ始めた。

 リリは食べ物の話題を出すとまた今みたいになると思ったので、違う話題を探してファーストに話しかける。


「ねえファースト、外で商売してた人たちって今何してるんだっけ」


 ファーストはそれを聞いて、思い出す。

 異世界に来てしまった初日に、彼らは気がついたら拠点内の自宅に戻っていたと話していたことを。

 そして今は確か。


「レア装備品評会の審査を、しているのではなかったでしょうか。確か今日が結果が出る日だったかと思います」


 リリは今日が最終審査の日だったかと、楽しくなってきたので言う。


「じゃあ後で見に行かないとね。どれが金賞かな」

「やはりカーヘルの物ではないでしょうか。一番経験も能力もあります」

「それが一番ありえそうだけど、他の人でも面白いよね。何回か金賞を取ったら殿堂入りにして、審査側に回ってもらおうかな。ファーストも次回から案だけ出してみるっていうのはどうだろう」

「リリ様がそうおっしゃるのであれば、そう言った方法で参加するのも面白そうですね」


 それを聞いていたウィルから質問が飛ぶ。


「レア装備品評会って何?」


 リリは教えた。


「装備の見た目と性能を総合的に評価して、一番を決める大会だよ。イユートのアクセサリーみたいに、見た目も性能もあった方が使っていて楽しいでしょ?」


 空を走る光はそれを聞いて確かにと思ったようでナリダ、聞いてくる。


「金賞の装備を見せてもらうことはできないかしら?」


 リリはそれを聞いていいことを思いついたので、笑いながら答える。


「もちろんいいよ。今日の夜持ってくるね」


 そのあたりで多くの皿が空になったのでベルを鳴らす。

 大量のお代わりがやって来る。

 空を走る光はこれくらいでいいと思ったようだ。

 リリにお代わりはもういいことを伝える。

 リリは分かったと言った。


 すごい速度で食べ物が消えていったあと、リリは説明を開始する。


「明日みんなには犯人を捕まえるために、町に戻ってもらおうかと思ってます。今日1日動くだけで問題なく戦えそうかな?」


 空を走る光のメンバーはそれを聞いて、顔を見合わせてからウィルが教えてくれた。


「問題ないよ。今までも7日くらい休むことはたまにあったし、1日動けば感覚は戻ると思う」


 リリは1日で何とかなりそうだということに安心した。

 あの町は勇者パーティがいないだけで、不安に思う人が大勢いることがここ数日でよく分かった。

 是非皆が無事だということをギルドにも、町の人達にも知ってもらいたい。

 なのでリリは空を走る光に伝える。


「それは良かった。実は今グルークの町では勇者パーティがいないって噂が広まってて、面倒なことになってるんだよね。まあ、その噂を利用して犯人のもくろみを全部壊しておいたんだけど、その辺も協力してくれると助かるよ」


 空を走る光は何をしたのか聞いてくる。

 なので教えてあげた。


「勇者パーティがいなくなったら事件が止まった、だから犯人は勇者パーティだって噂が流れたんだよ。それを利用して、皆に教えてもらったよく使ってる店の人に頼んで目立つものを壊させてもらって、事件が起きたように見せかけたんだ。勇者パーティが犯人じゃないって噂を流すためにね」


 リリは空を走る光が支配で、無理やりやらされたことを自分達のせいにして欲しくなかった。

 なので言う。


「だからみんなもちゃんと言ってね、自分たちのせいじゃないって」


 リリはそう言って空を走る光の人達を見た。

 彼らはそれを聞いて、悩んでいるようだ。

 リリはそれを見て聞く、どうして悩んでるのと。

 ウィルが教えてくれる。


「だって事件を起こしたのは僕たちだよ。それなのに自分たちが犯人じゃないって言うのは難しいよ」


 リリは笑って教えてあげる。


「違うよウィル。物を壊したのは認めてもいいんだよ。そうじゃなくて自分たちの意思でやってないって、ちゃんと伝えてほしいって言ってるんだよ」


 それを聞いて空を走る光は納得したようだ。

 ちゃんと伝えると約束してくれた。

 次に運動するときの注意点について伝える。


「みんながこれから自由に運動してもらうこの星には、魔物に見える人たちがたくさんいるよ。でもここには魔物はいないので、何がいても攻撃しないように気をつけてね」


 ウィル以外の空を走る光は不思議そうだ。

 ウィルは治療の時にいろいろな種族がいたことを知っているので、納得している。

 リリは一応この星で一番多い種族を教えてあげる。


「この星にはスライムがたくさんいるよ。でも、魔物じゃないんだよね。だからみんなを襲ったりはしないよ」


 空を走る光はそれを聞いて驚いている。

 グローにスライムって魔物じゃないのかと聞かれた。

 なのできちんと伝える。


「外では魔物だよ。でもここでは魔物じゃないんだなぁ。難しいようだったら、使役獣みたいなものだと考えてもらってもいいよ」


 空を走る光は何とか納得した。

 リリはそれを見て伝える。


「最初は私も一緒に外に出るから、それで安全だってことを分かってもらえれば問題ないよ」


 空を走る光は外がどうなっているのか気になってきた。

 リリは最後に伝える。


「この星はいろんな環境が味わえるようにできてるから、色々びっくりすることがあると思う。でも皆が今着てる服を脱ぎさえしなければ、安全だからそれだけ気をつけてね」


 空を走る光のメンバーは今自分が来ている服に、どんな魔法がかけられているのか気になって服を触ってみたりしている。

 じゃあ出発しようと考えて、リリはスキルを封印したままだったことを思い出す。

 なので空を走る光メンバーに声をかける。


「みんな後ろ向いて立ってもらえる? みんなが魔法を使えるように封印をとっちゃうね」


 それを聞いた空を走る光に勝手にそんなことをして大丈夫なのか、聞かれる。

 なのでリリはこう答えた。


「大丈夫、許可は取ってあるよ」


 自分にね、とリリは心の中で思う。

 空を走る光はそれなら問題ないと思ったようだ。

 立って後ろを向く。

 ここでリリは焦った。

 魔法の詠唱を考えていない。

 なのでこうすることにした。


 魔道具を取り出す。

 それをファーストにこっそり渡した。

 その状態で言う。


「ファースト、封印を解く道具を頂戴」


 ファーストはリリの考えを理解した。

 なのでこう返す。


「はい、リリ様こちらになります」


 リリはファーストから魔道具を受けとる。

 その状態で、魔道具をいじっているように見せかけながらこうやった。


〈無詠唱〉〈範囲〉〈スキル刻印解除〉


 空を走る光の背中に書かれていた魔法陣が消えていく。

 消えた感覚があったようだ。

 全員が背中を気にしている。

 封印が無事に解けたようなので伝えておく。


「これで封印が解けたから自由に魔法を使えるよ。使うときは何もいないか確認してから使ってね」


 空を走る光メンバーは分かったと伝えてくれた。

 なのでリリは言った。


「じゃあ今からこのトランプの館を出て、皆にこの星を案内するね」


リリを先頭にトランプの館から全員が外に向かった。


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