22話 初めての討伐
大体の冒険者が森に出ていったあと、ロッダンが残ったパーティを集めて事情を説明する。
全員が納得できたようで、無事に15パーティほど集まったようだ。
初めての討伐なので、大勢での移動や食事などの方法を教えるようにという話もされている。
ピーちゃんはマッチェからネックレスを付けられた。
それをつけていると、他のパーティに現在いる場所が伝わるらしい。
他のパーティは振り子のようなものを、受け取っている。
それを垂らすと、ネックレスの位置に向かって引っ張られたように動くようだ。
そのあと全てのパーティと一度挨拶をした。
ほとんどのパーティがDランクかEランクのようだ。
Fランクは生活費を稼いだら、訓練をしているらしい。
じゃあ研修で訓練場にいたパーティのほとんどがFランクだったんだね、とピーちゃんは思いながら、冒険者ギルドを出発した。
町を出るまでの間、勇者パーティがいる、というような声がよく聞こえてきて、全員がつい笑ってしまった。
もちろんばれないようにだ。
黒の森に入る前に教えてもらう。
まず、1パーティだけグレイトホーンを主に狩るパーティについていくこと。
他のパーティはパーティ単位で少し離れて、グレイトホーンに気配がばれないように動くらしい。
もし小型の魔物がいるようだったら、その時一緒にいるパーティが倒すという形になるようだ。
狩ったグレイトホーンは一緒にいるパーティが、数に関係なくその場で持っていく。
新鮮なほど高く売れるらしい。
次に食事についてだ。
その時に狩ったグレイトホーンの中で一番小さいのを、その場で焼いて食べるらしい。
80人は超えているので1頭は行ける計算のようだ。
アルバートとサラは思った。
冒険者の人達は食べすぎているのでは、と。
ピーちゃんは空を走る光のメンバーの食欲にとても納得したし、きっとこうなると思っていた。
ピーちゃんはアルバートとサラに食べ盛りってすごいんだよ、と教えてあげた。
森の中に入る。
ピーちゃんは〈完全索敵〉を起動した。
近くに1頭、少し離れたところに3頭の群れがある。
ピーちゃんはアルバート、サラ、ピーちゃんに〈範囲〉〈飛行〉をかける。
アルバートは徒歩で、1頭の方に、サラは飛行で、3頭の方に行く。
ピーちゃんはアルバートの上空で、サラがアルバートと合流できるように目印の役目だ。
アルバートと一緒に1パーティが行動している。
アルバートはそのパーティと何か話しているようだ。
アルバートには町で起きた事件について、情報を集めてもらうように伝えてある。
なので誰かが何か知っていれば、もしかしたら情報が手に入るかもしれない。
アルバートが1頭目に取り掛かる前に、サラが戻ってきた。
その手に3頭の頭に氷の刺さった、グレイトホーンを持って。
たぶん氷系の魔法スキルをつかったんだろう。
見事に手加減に成功している太さだ。
たぶん削ったんだろう。
サクサク倒している様子が目に浮かぶようだ。
アルバートと話していたパーティは、あまりの早さに驚いているようだ。
そして、そのまま持っていってくれた。
そしてアルバートもサクッと倒した。
当然である。
グレイトホーンの視界から見えない上空から、トスッと刺して終了だ。
ピーちゃんが場所を指示して、2人がそこに向かうを繰り返す。
こうしてサクサク狩っていると、30頭に近づいたあたりで一緒にいるパーティがいなくなってしまった。
仕方がないので、少し待ちましょうと待っていると1パーティが戻って来る。
そして、この時間だと間食をそろそろ入れます、と教えてくれた。
グレイトホーンの中で小さそうなのを取っておいたので、そこから好きに切り取って食べるらしい。
次々と、町にグレイトホーンを売りに行ったパーティが戻って来た。
広めの場所を探して、そこで火を起こす。
そこで、それぞれが好きなように、味付けをしながら食べている。
スープにしたり、そのまま焼いたりと様々だ。
もちろん、グレイトホーンが嫌いな匂いがする真っ赤な香辛料は全員がかけている。
急いで戻ってきて正解だったな、飛べるのって便利だ、近くで見てみると噂通りの美人過ぎて目が潰れるかと思ったという会話が聞こえる。
そんな光景を見ていて、そして今自分が拠点でしていることを思い出して、ピーちゃんは思った。
もしかして、これが原因なんじゃないのかと。
ちょっと前に支配を受けたアルバートとサラに聞いてみる。
「ねえアルバート、サラ、もしあの赤い香辛料に支配の状態異常にする効果が付与されてたら、気がつけると思う?」
アルバートとサラはここにいる全員が食べている量に、挑戦するのをいったんやめた。
そして先にアルバートが答える。
「正直に言いますと、全く気がつけるとは思えません。ピーちゃん が事前にかけると言われた時でさえ気がつけませんでした。予告もなくかけられた場合には、一切気がつけないかと思います」
サラが答える。
「お兄様と違ってピーちゃん に直接触れられていれば何かわかるかと思っていたのですけれど、私もまったく分かりませんでした。支配のスキルを使われた感覚は触れられていたとしても全くありません。ですので食べても感覚が違う、ということはないと思います」
ピーちゃんは2人の意見を聞いてから言った。
「アルバート、サラ、ありがとう。調べてみないと分からないけど、もしかしたら、彼らがどうやって支配を10万回もかけられたのか分かったかもしれない」
そしてピーちゃんはこれからの予定を考えた。
とりあえずファーストに空を走る光の荷物から、あの赤い香辛料がないか探してもらって、問題かないか見てもらうように頼んだ。
だから先に60頭狩って、ギルドに行って、それから何が壊されたかの確認だね。
アルバートとサラの挑戦が無事に成功してからも、Bランクパーティ黒の砂はサクサク、トスッとグレイトホーンを狩っていった。
50頭を超えたあたりでまた、一緒にいるパーティがいなくなってしまったので今度は町に戻っていく。
同じルートを辿って町に戻っているのに、何故か完全索敵スキルに反応が同じくらいある。
ピーちゃんはリスポーンしている可能性はあるのだろうか、と考えつつもないだろうなと諦めている。
目の前に現れたグレイトホーンだけ、誰の目もないのでアルバートとサラが適当に狩りながら、ロープで引っ張っていく。
だいぶ町に近づいたあたりで、1パーティが戻ってきた。
持っているグレイトホーンの量に驚かれつつも昼食をはさんで、全員で町に戻っていく。
全員勇者パーティの代わりとして、この辺りでやめておいた方が良いことを分かっているようだ。
70には届かない辺りで森を抜け、何パーティかがグレイトホーンを買取の場所に持っていった。
今回雇った冒険者たちはこれから森で採集などをして、いい時間になったら全員で町に戻ることにしたらしい。
冒険者たちと別れて、先に冒険者ギルドに向かう。
冒険者ギルドでは、壁に町で最近起きている物が壊される事件について本格的に情報を集めることになったという内容が張り出されていた。
冒険者ギルドが町の中で起きた事件について、捜査の段階から加わるのは珍しいため、全員が内容を聞くようにと書かれている。
報酬やどういった内容かも教えてくれるらしい。
渡りに船だとネックレスを返すついでに、聞いてみた。
もう終わったんですかと驚きつつも、マッチェが教えてくれる。
最初の事件は7日前、グルーク資料館が全焼したことが分かったことからですと。
地図を取り出して大体の場所も教えてくれる。
全ての犯行は夜に行われたようで、人通りが少なく誰もその場を見ている人がいませんでした。
次に事件が起きたのは5日前、初代村長の石像が原形が分からないように壊されているのが発見されます。
そして3日前、この町が村だったころから続いている武器屋が半壊していました。武器屋の店主や店員の方々はそこで寝泊まりしていないので無事でしたが、そこで取り扱っている武器が一部持ち去られているようです。
最後に昨日、聖なる木が切られ燃やされました。聖なる木は通常の木よりも丈夫で魔法にも強いので、かなりの実力者が行ったと思われています。冒険者のランクで言うとB以上ですね。
そして今お伝えした情報が書いてある紙をお渡しします、と言って1枚の紙をくれた。
それから、今町では空を走る光の皆さんが今回の事件の犯人だという噂が流れています。ですので、その噂がどこから発信されたのかの情報も冒険者ギルドでは集めています。ご協力よろしくお願いします、と言ってマッチェは頭を下げた。
そのあとマッチェさんは情報提供と犯人を捕まえるとで、これくらいの報酬が出ますと教えてくれた。
3人で教えてもらったことのお礼をいって、冒険者ギルドを後にする。
そして3人で朝に見た聖なる木以外の場所を、回ることにした。