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お嬢様の秘密をのぞく

俺は静かに時を止めた。

会話の途中だったけど。

辺りには完全なる沈黙が広がっていた。


お嬢様は目線が固定されたまま止まっている。

ちょうど侍女さんは準備が終わったみたいで、馬車から出てこようとしている態勢で止まっている。


俺はお嬢様の胸のあたりに手を伸ばすと、お嬢様の胸の辺りから1冊の本が出てきた。

その本を受け取ると静かに開いてみた。


『名前:エスクァイア・エンブレム。エンブレム家の長女、父親・・・』


名前などは聞いた通りだった。

その他、現在の身長や体重も書かれていたが、センシティブな情報なので、読み飛ばした。


その後に目をやると『友達は少なく、それを寂しいと思っている。侍女のオーパは10年以上前からエスクァイアに仕えており、彼女にとって友達の要素もある侍女である。』との記述もあった。


それで父親へのプレゼントでも相談できる相手がいなかったのかもしれない。

いつも一人でいる俺とどこかシンパシーを感じた。


俺が見たいのはそんなことではない、と思い出しそのまま『性格』の欄を読み進めた。


『7歳の時に屋敷でお金が無くなったことがあり、父親が激怒した上、使用人の持ち物まで確認したのを見た経験からいつも誠実であろうとしている。小さなトラウマとなっていて、誰も見ていなくても不正を働くことはない。』


なるほど、彼女は誠実だ。

そして、その根幹は「恐怖」なので、その呪縛から逃れるのはよほど環境が変わらないと逃れることは出来ないだろう。


多少の秘密を彼女に打ち明けても、むやみに他人に話して回ることはない。

このように「人の本」に書かれたことは、絶対で間違いはなく嘘もない。


本人が気づいていない事柄や思い込みの場合は、「注釈」と言う形で記載があることもある。

これは、もしかしたら、深層心理で本人がそう思っているかもしれないが、まだ本人が気づいていない事柄なのかもしれない。


いずれにしても、下手なウィキペディアよりも正確で確実な情報が見られる。

ただ、目の前で自分から本を取り出される光景は異常としか思えないだろうから、俺は常に時を止め、安全な状態でじっくり読むようにしている。



ついでに、侍女さんの本も読んでみた。


『主人・エスクァイア様が大好き!エスクァイア様の容姿と性格が心の底から好きで、一生仕えたいと考えている。』


知ってた。

そのまんまだった。


念のために、2人の本の余白に1行書き足した。


『ジョンが見せた不思議なものは、ジョンと別れた瞬間忘れてしまう』


ここに書いたことは絶対に裏切れない。

俺が知っている本では、これがルールだ。


それぞれの本は、元の人に戻した。

同じように胸の位置に本を近づけると、勝手に本が仕舞われる。

その後、静かに時を動かし始めた。


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