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お嬢様のハイグレードな旅とは

護衛として馬車に乗せてもらえることになった。

馬車の中は向かい合うようにベンチシートがあり、エスクァイア様と言うお嬢様が片側に座っている。

向かい合うように護衛の俺と、侍女のオーパさんが座っている。


席は詰めれば3人座れるけど、2人で座る感じ。

でも、正直狭い。

そして、道が悪いからか、お尻が痛い。


そして、進行方向に対して反対側を向いていると言うのは、地味に疲れる。

馬車の速さは、時速3kmから4kmくらい。

歩く速さと同じか、少し遅いくらい。

これでは街まで何日かかるのか・・・


「いかがですか?ジョン様!こうして馬車での旅はいかがですか?」

「あ、はい、快適です」


「でしょう?歩かなくていいなんて快適でしょう?」


オーパさんは自慢げだ。

こんな時は、乗っておいた方がいいのか。

人づきあいが苦手な俺としては、こんな時は相槌を打つだけになってしまう。



問題の野営の頃合いになった。

俺は男女の野営が苦手だ。


気にせず男女雑魚寝の場合もあるけど、俺は抵抗がある。


食事は侍女の人が作ってくれた。

さすがお金持ちの家のお嬢様。

食事は美味しかった。


後は寝るだけ。

このお嬢様は、夜は馬車の中で座って眠るつもりらしい。

男の俺と御者は外で野宿。


ふと横を見ると、御者は既に布を敷いて寝ている。

男女問わず御者として生きていくための処世術なのかもしれない。

プロだ。


お嬢様侍女は馬車で寝られるように準備を進めている。


「申し訳ありませんが、男性の方は外で野宿をお願いします」

「あ、いいですよ」


こちらとしても、一人は願ったりかなったりだ。


「お嬢様、寝る準備をしますので、少々外でお待ちいただけますか」

「はい、分かりました」


お嬢様が外に出てきた。


「あ、冒険者様、よかったら少しお話しませんか?」

「あ、はい」


意図としては、「寝床の準備が終わるまで傍で警護してください」だろうけど、言い方が優雅だなぁ。

さすがお嬢様。


俺とお嬢様は近くの岩に座って馬車の中の寝床の準備ができるまで待つことになった。


「実は私、旅が苦手なんです」

「そうなんですか」


「特にこの野営が苦手です。馬車とはいっても、座ったまま寝るのでどうしても身体が痛くなってしまって・・・」

「そりゃあそうでしょうね」


「まあ、冒険者の方々は野宿されるわけですし、贅沢な悩みだと思っていますが・・・」

「なんで、嫌なのにそこまでして旅に出たの?」


「ぷ、プレゼントです」

「は?」


「その・・・もうすぐ誕生日で・・・そのプレゼントを・・・」

「ああ、彼氏か」


「あの、いえ、・・・・その・・・お父様です」

「ああ、お父さん」


「わたくしのお父様は商人をしていて、貴族にまでなりました。だから、色々なものを取り扱っていて街の中では、お父様が驚いて喜ぶような物は中々見つからなくて・・・」

「そうか、お父さんが商人・・・」


「はい・・・、それでアバロンでは見つからなくて、隣の街まで行くことに・・・」

「どんなものを探しているの?」


「お父様はアバロン一の商人なので、街のものなら何でもお父様はご存知です。だから、驚いて喜ぶものとなると・・・何を買ったらいいの分からなくて・・・」

「なるほど、困ったね」


「はい、お父様はお金持ちなので、わたくしで買えるもので驚いてくださるかどうか・・・」

「なるほど、じゃあ、お父さんでは値段を付けられないような物をプレゼントしたらいいよ」


「でも、そんな高価な物だとわたくしのお小遣いではとても買うことができません・・・」

「なに、高いから値を付けられないとは限らないよ」


「どういうことでしょうか?」

「手作りの物とかどうだろう?例えば料理とか、手紙とか、仕事でちょっと使うような・・・例えばペーパーナイフとか?」


「なるほど!見つからないのならば作ってしまうと言う発想!素晴らしいですわ!」

「恐らく、お父さんにとって最も大事なのは娘であるお嬢様だろう。きみがくれる物なら何でも嬉しいはず。だけど、その娘が手作りしたものとなるといくらお金を積んでも手に入るものじゃない。」


「はいっ!はいっ!」

「仕上がりはそれほど良くなかったとしても、それを準備するきみの心がお父さんへのプレゼントと言うわけだ」


「なるほど!そうですわね!正直、何を買ったらいいのか悩んでいましたから、手掛かりができました!ありがとうございます!」


親孝行だ。

とってもいい子。


よく見ると、ゆるふわロングで金髪。

まつげも長いし、とても整った顔をしている。


それにしても、盗賊なんかに会って何かあったら、お父さんも悔やんでも悔やみきれないだろうに・・・


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