出しゃばりも時には役に立つ
見逃してもいいのだけれど、みんなに愛されるのが冒険者だ。
しょうがないなぁ。
次の瞬間、渓谷には静寂に包まれていた。
盗賊と言っても、俺に何か害がある訳じゃない。
20人以上の男たちを何とかするのは骨が折れる。
女の子2人と御者を馬車に乗せて、ルーラで数km離れたところに移動した。
念のため、盗賊たちの武器と金はもらっておいた。
俺の路銀にしよう。
周囲の安全を確認すると、俺は指を鳴らして時を戻した。
「あ、あ・・・」何があったのか理解できないようで、お付きの女の子らしい子が言葉を失っている。
これを何とか説明して誤魔化さないと、後でもっと大変なことになるのだ。
「と、盗賊は・・・」お供の女の子が話しかけてきた。
「俺は冒険者、盗賊が襲ってきているようだったから、おせっかいだと思ったけど、助けさせてもらったよ」
「ああ・・・ありがとうございます」
よっしゃー!
通ったー!
誤魔化すときは勢いで他の話をするに限る。
「ありがとうございました。冒険者様」
お嬢様と呼ばれていた人も馬車から出てきた。
御者は馬車に座ったままきょろきょろしていた。
馬は暴れるかもしれないので、目隠ししておいた。
大人しくしているようだ。
「私たちはさっきまで、渓谷にいたと思うのですが・・・」
「はい、俺の魔法です。安全なところまでアレする魔法です。」
「アレ・・・とは」
「お怪我がありませんでしたか?お見受けしたところ、名のある家のお嬢様では?」
「そ、そうです!エスクァイア様は、エンブレム家のご息女であらせられる」
「ああー、あの名高いエンブレム家の~(棒読み)」
「そう!そうなの!分かっていただけるか!」
ウマクゴマカセタ。
「じゃ、俺はこれで」
じゃっと、敬礼して俺はその場を離れようと・・・
「冒険者殿!」
「は、はい・・・」
「見ての通り、恥ずかしながら護衛は逃げてしまいました。この先の街まで護衛としてご同行いただけないだろうか」
ソウナリマスヨネー
俺は一人が好きだ。
好きな時に好きに進めるし、好きな時に休める。
多分、次の街までこの馬車で行ったら数日かかる。
野営小屋は1個しかないし、招き入れられないし・・・最悪だ。
サラバ俺の快適野営生活・・・
「失礼ながら、報酬は十分払わせてもらう!野営も客人待遇にさせていただく!」
「ハイ、ワカリマシタ・・・ヨロシク」
「お嬢様やりました!」
「よかったですね、オーパ」