98・尻尾ちょうだい?
『ちょちょちょッ!!ちょっと待てぇぇーーいッ!!!』
何処からともなく聞こえた焦りの声に思わず口元が弧を描く。
フッ、チョロいな…。居るのは解ってるんだから素直に出てくればいいのに。
「ん~?あれぇ?誰もいないのに声が聞こえたねぇ~?」
『わう?』
首を捻ると狼達も揃ってコテンと首を傾ける。
『わざとらしい芝居をするな!お主解ってやっておるだろう!?』
「よーし!お宝探すぞー!」
『わおーん!』
『えぇ!?無視!?無視なのか!?』
尚も無視を続ける私に声の主は慌てたように声を裏返す。そして『むぐぐぐぐ…!』と唸るような声がしたと思ったら天井の水晶が淡い光を放ち始め、そこからにゅっ!と大きな真っ黒な爬虫類みたいな腕が出てきた。
腕の大きさからして水晶よりも本体の方が大きそうなのに、その物体はスルリと水晶から出てきて、そのままドスンと音を立てて私の前に降り立った。
真っ黒でテカテカでおっきくて、よくゲームとかで見ていたフォルムの二本の足で立つタイプの竜だ。金の瞳が宝石のようにキラリと光っている。そして私をキッ!と睨み付けてきたのだった。
うほーーっ!!キターーっ!!!
むっちゃ睨んでくる竜そっちのけで私の心はワクワクと踊っている。だって生竜だし!初めて見たし!!
『おい!小娘!ここが何処だか解っているのか!?』
「うん!知ってるー!」
『なら居直り強盗とは何事だ!!ここは古竜の棲家だぞ!』
「だってそれを目的に来たんだもん!」
『は?』
私の答えにきょとんと言葉を詰まらせた竜が厳つい見た目でコテンと首をかしげる。
「えっとね~、……尻尾ちょうだい?」
『は?』
「だから、尻尾、私、欲しい」
『は?』
あれ?私の言ってる事なんかおかしいのかな?通じてないのか竜は『は?』しか発っしない。
「んーと、剣を作りたいから、竜の─あ、古龍の骨が欲しいの!だから尻尾ちょうだい?」
一生懸命手振り素振りで尻尾を指差しなから伝えると、竜はプルプルと震えだし、ドシン!と地面に尻尾を叩き付けた。振動で私と狼達が若干浮き上がったくらいだ。てか尻尾痛くないのかな?
『ふ、ふざけるな!何故我が己の尾を人間ごときにやらねばならぬ!!』
「え、くれないの?」
『当たり前だ!!』
「そっかぁ…じゃあ仕方無いね…」
『ふん!解れば良い。お主は幼いから無礼も許し─何をしておる?』
しょんもりと肩を落とした私に諦めたとでも思ったのか、竜は溜め息をついたのだが、私が背中から抜いたモノを見てまたしても首を傾げた。
「え?だってくれないなら切り落とすしかないじゃん?」
『は?』
「大丈夫!痛くしないから!」
『はあぁぁぁ!?!?』
にっこりと笑みを浮かべた私に竜は間抜けな叫び声をあげた。
背中から抜いた短剣をくるりと回して手に取る。ジル達がお手入れしてくれたのでピカピカで切れ味も上がった特性仕様だ。きっと竜の尻尾もスパッと切れるはず。
「じゃあ行くよー!!」
『ちょ!まっ!』
竜の言葉が終わる前に背後に回り込む。
そしてそのまま短剣を振り下ろした。
─んだけど。
何と、カキン!と言う金属音と共に私は弾き返されたのだった。
「うわ!堅っったい!!」
『ホ……あ、当たり前であろう!竜の鱗は鋼よりも堅いのだ。そんなちゃちな刃が我に傷など付けられる筈など無い!』
カッコ付けてるとこ悪いけど、最初ホッとしてなかった?してたよね?
「よーし!そんじゃ連撃でどーだ!!」
スピードをあげて20連撃くらいしてみたけど、全部弾かれてしまった。うぬぬ…堅い。
『ホ……フッ、ハーッハッハッ!!無駄だ!!』
何かいちいち私が攻撃し終わるとホッとしてる気がするんだけど。
こりゃ駄目かなー。普通の攻撃じゃ傷ひとつつかないや。
よーし、こうなったら…。
「えーと…確か…」
何でも切れる剣…剣…。
伝説級の武器で竜も切れちゃう最強の剣てなんだっけ…?ん~…。
こんなときこそ甦れ!私の中二脳!
この世界の魔法は言葉に魔力を乗せて発動させるものだ。
なので言葉の意味を自身がちゃんと理解していないといけない。
つまりは自分だけが解っていればどんな言葉でも魔法を発動させることができるのだ。
例えば『焼き尽くせ』と炎系の魔法を使ってもそれぞれ人が考える『焼き尽くす』範囲は区々だ。
と言っても既存の魔方陣の範囲内での威力なので、魔力のコントロールが出来ない限りはそんな芸当は出来ないんだけど。
「取り敢えず…アレでいいか…」
『何をブツブツ言うておる。無駄だと解ったなら早々に立ち去─ん?あれ?』
竜の咆哮が途中で止まった。
多分私の短剣が光出したからだと思う。魔力を剣へ流してとある剣を憑依させるためだ。
「えーと…─『伝説に眠りし聖剣よ我が声に応えたまへ。数多の敵を屠りし最強の剣よ、その力を一時我に貸し与えたまへ。未明の地、アヴァロンより来たれ!』」
その瞬間、私の短剣が目映い金色に輝きだした。
おぉ!成功っぽい!!よっしゃ!このまま尻尾を両断だ!
「『万物を切り裂け!聖剣、えくしゅかりぶぁぁぁぁ!!』」
ぎゃ!勢い余って噛んでしまった!!
私は頭上に掲げた短剣を竜に向かって大きく振りかぶった。
光の斬撃が物凄い勢いで竜へと飛んで行く。私は振りかぶった勢いでコロンと転げてしまった。体重が軽いから仕方無い。
私の放った斬撃の余波なのか遠くの方で地鳴りがしている。
「よいせっ…と」
起き上がるとさっき短剣に宿った光は消えていた。
いや、でもあの威力ならきっと尻尾も切り落とせたはず!
期待を込めて振り替えると、何とそこには尻尾を股の間に挟み大事そうに抱える竜の姿があった。
『!?……っ??!……っ?!』
竜は背後に残る斬撃の跡と私を交互に見て何か言いたげにアワアワとしている。
「チッ…外したか、残念」
多分咄嗟に尻尾を抱き込んで斬撃を躱したんだろう。
けど避けてるって事はさっきの一撃があの竜にとって危なかったって証明だ。外したのは残念だけど次こそは尻尾をいただいちゃうもんね!!
「もー!何で避けるの!?」
『ア!アホか!!避けるに決まっとるだろが!!』
「いいじゃん尻尾くらい!どうせ生えてくるんでしょ?」
『我を蜥蜴と一緒にするな!!』
「大丈夫だよ!痛くないって!ちょっとだけ!先っぽだけで良いからぁ!ねーちょうだい!!」
『無理だ!!』
「チッ」
人が折角丁寧にお願いしてるのに何て竜だ。思わず舌打ちしてしまう。私が舌打ちすると竜がビクリと巨体を強張らせたのが見えた。
「もー!次は避けないでよね!?」
『避けるに決まっとるだろ!あんなアブ…!危ない技!!我を殺す気か!?』
「殺さないよぉー。だから尻尾だけちょうだいって言ってるじゃん」
何回同じこと言わせる気だ。私が欲しいのは尻尾であってそれ以外は用はないんだよ。尻尾だけくれたらさっさと帰るつもりなんだから素直に差し出してほしい。
「よし!次は外さないからね!」
ムン!ムン!と気合いを入れる。
そして短剣を構えたところで竜からストップがかかった。
『ちょちょ!ちょっっっと待て!!』
「なに?」
『ど、どうして我の尻尾を欲しがる…剣を作りたいとは言っていたが…』
「え、聞きたい?!」
キラーンと私の目が輝いたのを見た竜がたじろぐ。
「実はねー…」
そうだよね!自分の尻尾が何に使われるのかくらいは知っときたいよね!
そこから私の怒濤のエルナたん語りが始まったのだった。
更新ノロノロですみませぬ!!(´д`|||)
遂にラピスと古竜の戦闘の火蓋が…!ww
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