97・竜会談
我は竜。古の、人共が言うところの『古竜』である。
まぁ古竜とゆーても偉いのかと聞かれると正直微妙である。
よー解らんが南側だったっけか?なんちゃら言う国には『守り神』だの『暗黒竜』だの身に覚えの無い妙な渾名がつけられているがそんな大層なものではない。
何故って誰も我を崇めてくれたことがないからだ。ほら、供物とか…生贄?とか。……まぁ生身の人間なんぞ貰っても困るのだが。
取り敢えずお供物とかライトな物くらい貢がれてもバチは当たらんと思う。まぁそれもここまで来られたらの話ではあるか…。
ぶっちゃけ【霊峰】等と人間共に呼ばれている山で我は暇を持て余しておる日々なのだ。
今日も今日とて、我は日課でもある念話会談の為寝床に潜り込む。
我の棲むこの洞窟は代々受け継がれた物で、数百年前、我が黒に染まった時先代から譲り受けた。
中は広く、冬も暖かい。天井には聖なる水が鉱物のように形を留め落ちることなく淡い光を放っている。
この聖なる水は一見水晶のように見えるが、これが我の寝床でスルリと中に潜り込むことができる。どう見ても我の体積の方が大きいのに、不思議な水なのだ。
『─と、まぁ俺の世界には結構おもしれーヤツも居たって訳よ』
『まぁ!私の世界にもそんな感じの人間が居たわよ!えぇと、確か前世の記憶を持ってたーとか何とか言ってて。それでねぇ、私の事口説きに来たのよぉ?』
『ほう!そいつぁオスか?それともメスか?』
『やぁねぇ、人間は男と女って言うのよ!これだから野蛮な蜥蜴は』
『誰が蜥蜴だゴラァ!?』
ふむ、今日は二匹が先に始めておったようだ。二匹は我に気が付いたようだが言い争いを止めることはせず、暫くそれを続けた。
聴こえるのは会話のみなので我は空気のようなものだ。気にはしない。
何故音声のみなのかと言うと、彼らはそれぞれ別世界の竜だからである。
我等竜は1000年生きるとある日突然、自分の世界とは異なる異世界があることを知る。何故そんな事が解るかと言えば、相手から一方的に教えられるからである。数百年ほど前、突然頭の中で声が響いたかと思えば一方的にペラペラと喋りかけられ、此方から口を挟む事もさせて貰えない。そして我は知ったのだ。我の生きるこの世界とは違う世界があることを。
それを教えてくれたのは今念話で相手を蜥蜴だのアホだのと罵っている方の竜なのだが…。彼女の話によると竜は千年生きると神の世界に触れることが出来るようになる、と言う話だ。それにより念話で異世界の同種族と交信できるようになるそうだ。俄には信じ難い話だが、現在こうして他の世界の竜と念話で話しているのだから、強ち間違いではないのかもしれん。
─ふむ、彼等とこうして交流を持つようになってはや300年ほどか。
この談話会のようなものはかれこれ300…いや、400年前か?つまりはまぁ定期的に行われている恒例行事でもあった。
『それはそうと、貴方の世界はどうなのよ?貴方一応守護竜なんて大層な名前で呼ばれてるんだから毎日楽しいことだらけじゃなくて?』
『……………』
我に話を振るでない。
それにお前、我がボッチだと言うことを知っているだろうが!
『……特に変わりない』
『プフーーッ!!やだまだボッチなのぉ!?』
平静を保って答えるとわざとらしい笑い方で揶揄された。
『ボッチではない!我には妹も居る!』
『イモッ!妹って…!プフフーーッ!!』
『そのわざとらしい笑い方を止めんか!』
なんと嫌味な奴なのだろうか。まぁ昔からコイツは意地は悪いが。
『おいおい、止めてやれよ~。こいつは俺等と違って繊細なんだから』
呆れたようにもう一匹が発言する。
そうだ。我は繊細なのだぞ、もっと丁重に扱え!
『そうは言うけど、貴方だってこの子の事が心配なんでしょう?私だってしんぱいなのよ?辺鄙な山奥でずっとボッ、ボッチ…でッ!プフフーーッ!!』
心配と言った口で最後には堪えきれないと噴き出すな!
『…ふん!我は竜なのだぞ。他種族と戯れるお前たちの方がおかしいのだ。我はひとりで構わぬ』
ふん!ふん!一人の何が悪いと言うのだ!
『あら、強がっちゃって…』
『おい、もうからかうのは止めろ。─ってもなぁ、お前も友達の一人くらい作った方がいいぜ?存外人間も悪くない。彼奴等は俺達の知らない事も数多く知ってるし、それなりに楽しいもんだ』
この口の粗暴な竜は異世界からやって来たと言う人間と旅をしているそうなので人間贔屓だ。やたらと我に人間の友を作れと薦めてくる。
我等は竜なのだぞ何故矮小な人間などとつるまねばならぬ。お断りである。
『もうよい。我は眠いので寝る。それではまたな』
我はそれだけ言うと念話を一方的に打ち切った。
『ふん…友など……ん?』
拗ねてなどはおらんがふて寝しようと身体を丸めたとき、何かが我の棲む洞窟に侵入した事を感じた。
『…なんだ?』
少しずつ進んでくる侵入者が漸く我の寝床に辿り着いた。
ひょこっと現れたのは何と人間の幼子であった。
『何故こんな場所にあんな子供が…』
我は聖なる水の中からじっとその様子を眺めた。
幼女と獣が三匹…否あれは魔法で作った傀儡か。だがそれにしては妙に活き活きとしている。まるで主人に忠実な生きた犬のようだ。
子供はキョロキョロと洞窟内を眺めふと聖なる水を見上げた。子供らしい無垢な表情で我の寝床を見上げていた居る。
しかし、えらく凝視してくるな…。穴が開きそうである。
我が此処から覗いている事など解らぬはずなのだが…。
嬉しそうに此方を見上げてくる幼女を我もまた心なしか楽しんでみていたのだが…。
次の瞬間、幼女の真ん丸な眼と口がニヤリと三日月のように形を変えた、様に見えた。
「ん?」
我の見間違いか?
余りにも一瞬の出来事だったので首を捻る。あんな幼い子供があんな邪悪な表情をするだろうか?うむ、きっと見間違いに違いない。
そう思い直した瞬間─。
「よーし!じゃぁ金目のモノぜーんぶ掻き集めてずらかるぞー!!」
『わおぉぉぉーーん!!』
『おぉぉぉーーん!!』
『ちょちょちょッ!!ちょっと待てぇぇーーいッ!!!』
は?え?どう言うことだ!?
思考が追い付かず思わず叫んでしまった。
どう見てもまだ五つにも満たない幼子が魔法の犬を連れ、剰え強盗まがいの事をしようとしている事実に、我の脳は一瞬虚無へと誘われた。
そして再び幼女へと視線を向けた時、我は確かに見たのだ。我から俯きがちに見えた口許がくっきりと三日月を形作ったのを─。
その頃、残された竜二匹は─。
『ねぇえ?あの子、大丈夫かしら?』
『心配ねーんじゃね?それにアイツも年頃だ。人間の友人のひとりやふたり、出来た方が良いって』
『もう、そう言う事を言ってるんじゃないわよ!』
『は?なら何だよ?』
『そりゃああの子は私たちの弟みたいなものだから友人が出来るのは大変喜ばしいことよ?ただ…ほら、まぁアレよ…』
『………あぁ、アレか…。確かに心配だな』
『でしょう?だってあの子本当は…プフ』
『ヤメロ。笑うな。くくっ…』
我輩は猫である!的な感じで読んでいただければ…笑
私事ですが、11月3日でこのお話を書き始めて一年が経ちました!ヾ(≧▽≦)ノ
飽き性でのろまな私が一年も続けられたのは読んでくださる皆様のお陰です!ありがとうございます!(つ๑>ω<๑c)♡
相変わらず恋愛要素がゼロに等しいですが、これからも更新がんばります!(๑و•̀ω•́)و
誤字、脱字がありましたらお知らせください!助かります!(*^¬^*)
ブクマ&評価ありがとうございます!励みになります!(///ω///)♪




