96・目的地到着
チュンチュンと小鳥のさえずりが目覚まし時計になり、朝日の中気持ちよく目が覚めた。
ちょっぴり北に来たせいか夏だと言うのに朝の空気はひんやりとしている。
「んー~~!」
ぐーっと背伸びすると眠気も吹っ飛んで行く。
昨日汲んでおいた川の水で顔を洗って歯も磨いて、空間収納から寸胴鍋を取り出し器に熱々のスープを注ぐ。パンも取り出し朝ごはんを堪能した。
うん、さすがマリスさん作のスープ…うまい。
実は予め賄賂を渡して作ってもらっていた。お肉は好きだけどさすがに肉ばかりだと寂しいから。
朝食を食べ終わった後、目についた巨木に登り辺りを見渡す。
昨日はもう日が暮れていたから周囲の確認はそんなに出来なかったんだよね。覚えたてなんだけど一応探知魔法で探ってみたけど人の気配はしなかったから、多分近くに人の住む町や村はないはず……。
「あ」
村っぽいのあったわー。
そんなに離れてないのに何で探知魔法に引っ掛からなかったんだろう?
じーっと目を凝らして村を見詰める。
朝だから朝食の支度やパンを焼くために竈から煙が上がってたりするものだけど、そういう物は見えない。建物も所々崩れていたり蔦が蔓延っている。
「結構山深い場所だし、もしかして廃村かな?」
人の気配がないことから私はその村に立ち寄るのはやめた。だって廃村だし。幽霊出たら怖いし。
「さてと…」
ポケットから方位磁石と地図を出して方向の確認をする。今居る場所は昨夜の内に星を見て当たりをつけてある。迷子になったら大変だからね。
「あっちか…」
視線を向けると遠くの方に続いて行く山脈が見える。遠すぎて端までは見えなかったけど、多分この山脈を辿っていけば目的地に辿り着くはずだ。
「おっし!今日は目的地までぶっ飛ばして行こーう!」
木から飛び降り、向かうべき方向へ身体を向ける。何となく軽く準備運動をしてそして初めてのソロキャンプ地に別れを告げたのだった。
さらば、私の記念すべき初めてのソロキャン地よ。
心の中で敬礼しておいた。
ビュンビュンと景色が変わって行く。それに段々と肌寒くなってきた。標高が高いからかな。一応着替えも持ってきているので昼食を食べる時に着込んだ。
それからまた進み、途中で見付けた兎を夕食用に仕留め血抜きしてから捌いて空間収納に放り込んでまた進んだ。
雪は降ってないけどひんやりとした空気が濃くなってくる。季節で言うと3月くらいかな。
前世で山登りとかしたことないから半信半疑だったけど、標高が高くなると寒くなるって言うのは本当だった。疑っててごめんなさいN◯Kさん。
風も強くなってきたからか背の高い木が少なくなってきて、いよいよ目指す場所が近くなってきた気がする。
今から進むと暗くなってしまうので今日はここでお休みしよう。風避けのため、私の背よりは高くて、けど大人の男の人よりは低い木々の間でキャンプの準備をすることにした。
転がった石を並べて竈を作る。兎を吊るして焼く木も準備した。うん、いい感じだ。薪は落ちてないと困るから沢山持ってきた。なのでわざわざ現地調達はしなくていい。
近くに小さい小川も見付けたし、我ながらいい場所を見付けたと思う。
晩御飯を食べ、見張りを炎の狼さん達にお願いしてその日は大人しく早寝をした。明日は早朝に出発するぞー!
翌日は昨日の朝よりも空気がひんやりしていたけど、炎の狼さん達が回りを囲んでくれていたので寒くはなかった。火の番までしてくれるとは…なんて賢い狼達なのだろうか。…自我はないはずなのに…ほわい。
ささっと朝ごはんを食べて火の始末をして出発の準備を整える。空気が乾燥してきてるから火の元はちゃんとしておかないとね。山火事になったら大変だもん。
「さてと、今日はターゲットに会えるかなー?」
未知との出会いにワクワクしながら私はラストスパートに入ったのだった。
「こぉーんにぃーーちはーーーぁ!!」
肺いっぱいに貯めた空気を全部吐き出す勢いで声を張り上げた。
目の前には大きな洞窟がぽっかりと口を開いて、奥から風が吹き出て来ている。何処かに風穴があるのかもしれない。洞穴は奥まで続いる感じだけど、奥は真っ暗で入り口からは見えなかった。
まぁそんな事は置いておいて。
私は目指す場所に辿り着いた。と思う。ここがそこなのかは知らないけど、洞窟の中からは強い個体が発する独特の覇気みたいなものを感じたから、間違いないと思うんだけどなぁ。だってほら…ブチギレたうちの母みたいな感じのが空気中に漂ってるもん。
「………返事がない」
聞いた話だと確か人間の言葉を理解して話が出来るらしいけど…。何故だ、返事がないんですけど?
居留守なのは解ってる。なので返事をしない方が悪い。だから私は悪くない。不法侵入じゃないもんね!てか法律とか知らないし。
「おじゃましまーす!」
むき出しの岩がボコボコしていて歩きにくいうえ、少し進むと入り口の光りも入らなくなって辺りは真っ暗になった。仕方ないので灯りとして炎の狼さん達を出してみると凄く明るくなった。何て有能なの炎の狼さん達。
「暗いなぁ~」
『くぅーん…』
私の独り言に相槌を打つように狼達が鼻を鳴らす。狼達が居る場所は明るいけれど、少し先は吸い込まれるような闇だ。本当にこんなに真っ暗な所に例のモノがいるんだろうか?ちょっと不安になってきたぞ…。
暫く歩くと奥の方にぼんやりとした淡い光が見えてきた。
おぉ?出口かな?風が吹き抜けている事から何処かに風穴はあるんだろうけど、探してるのは風穴じゃないんだよなぁ。
ようやく灯りの発生している場所まで辿り着き、目の前の大きな岩をよじ登ってその場所を覗き込んだ。中は開けていて大きなドーム型で天井も凄く高い。
「おぉーすごーい」
淡い光は何と天井部にある大きな水晶っぽい鉱石によるものだった。凄く明るいって訳じゃなくてうっすらと青みを帯びた光で、日が沈む直前の薄暗さくらいだ。
あの大きな水晶っぽいのは何なのだろう?ちょっと欲しいかも…。
それにしても広い。
「よいせ…っと。おじゃましまーす」
私に続いて狼達も後ろにくっついて降りてきた。キョロキョロとドーム内を見渡すけれど私達以外に誰も居ない。
「?あれ?おかしいなぁ…」
気配を感じるのに姿が見当たらない。狼達も地面をクンカクンカしたりそこかしこを見ているけど、私と同じように姿が見えないからか不思議そうに首をかしげている。
気配を探ってみると天井の水晶みたいなモノから発せられているのが解った。
じーーーーッと見詰めていると水晶の奥の方でチカチカッと火花が散ったように見えた気がして、気になって更に凝視しているとじりじりと何だか向こうもこっちを見ている気がしてくる。
どういう原理かは解らないけど、これは確実にこっちを見てる。誰かが。
そう確信するとむずむずと私の中の悪戯虫が騒ぎ出す。
「あれぇー?だぁれも居ないのかなぁー?」
『わう?』
「おじゃましますっていったのにねー?元々誰も居ないのかなぁ?」
『わうわう!』
「みんなもそう思う?」
『わふ!』
狼達も私の意思を汲み取って頷いたり相槌を打ったりとしてくれる。出来た子達だ。
考えてみれば完全な一人芝居なんだけど狼達のお陰で恥ずかしくない。これひとりだと後で思い出して羞恥心に転げ回るやつだもん。狼達が居て良かった。
「よーし!じゃぁ金目のモノぜーんぶ掻き集めてずらかるぞー!!」
『わおぉぉぉーーん!!』
『おぉぉぉーーん!!』
『ちょちょちょッ!!ちょっと待てぇぇーーいッ!!!』
私の気合の拳と狼達の雄叫びが上がったのと同時に焦ったような声がドーム内に響き渡ったのだった。
到着しました笑
大活躍?の炎の狼さんはラピスが作った魔法なので、ラピスの魔力に影響されてワンコ並の自我があります(;・∀・)
頭にお花が咲いたちょっとおバカなワンコを想像してくださいw
誤字、脱字がありましたらお知らせください!助かります(*^¬^*)
ブクマ&評価ありがとうございますー!!(///ω///)




