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95・ある日、森の中

 

 エルナたんとお別れしてから一週間。


「え?今日から一週間も伯爵様のお屋敷にお泊まりするの?」


 まぁ大変、と母がいそいそとお泊まりセットを用意し始めた。背後で父と兄が諦観の涙を流しているけど見えない。私には見えない。


 母が用意してくれたお泊まりセットを空間収納で保管し、部屋に戻って準備を済ませる。

 短剣を装備していつもと同じ格好で「行ってきます!」と家族に手を振って家を出た。




 所変わって伯爵邸。


「は?明日から一週間家の手伝いで来ないのか?まぁお前は毎日来てるからな、たまにはゆっくり家に居ろ」


 伯爵様は一瞬間の抜けた声を出したけど、私の頭をガシガシと撫で回して送り出してくれた。







「ふっふっふっ……愚かな…私の大根演技なんぞに騙されて…ふふふ…わーっはっはっ─げほげほ!!」


 現在私は伯爵様の領地にあるいつも修行していた山のてっぺんに居る。そこにある高い木の上から地表を眺めながら高笑いしてたのだが風が強くて咳き込んだ。恥ずかしい。


「ゴホゴホ…気を取り直して、─さあ!行くぞ!狩りじゃぁぁぁ!!!」


 拳を天に振りかざし気合いを入れる。うんうん、旅立ちの日っぽい雰囲気である。

 ポケットから方位磁石と折り畳んだ地図を出す。方位磁石はロベルトから強奪…じゃなくて借りてきた。快く貸してくれた。ちょっと涙目だったけど。

 地図は伯爵様のお屋敷にある地図をこそこそと描き映した私のお手製だ。ちょっと歪んでるかもだけど、大まかには合ってるから良しとする。


「えーと…北だから…あっちかな?」


 伯爵様の領地を越えてお隣の領地の山のてっぺんを見渡す。よし、取り敢えずあの山を目指そう。

 木を飛び降りて目指す山の方向へ走った。いつもみたいにスピードを上げて走るんじゃなくて結構割りとゆっくりだ。

 折角の狩り…げふん、冒険なので辺りの探索もしてみたいし、これから行く場所は行ったことのない場所だから色々見て回りたい気持ちもある。

 所々にある町や村にも立ち寄りたいし、良いものがあったら覚えておいてジル達に作ってもらうんだぁー。


「ふんふんふーーん♪」


 鼻歌を歌いながら走っていたらあっという間に目的の山に辿り着いてしまった。

 あれ?おかしいな。かなりスローペースで走ってきたのに…。

 うーん…もっとゆっくり走った方が良いのかなぁ?

 このペースだと予定より早く着きそうだけど…。


「…ま、いっか!」


 早く着いて困る訳じゃないし。

 よし、そんじゃ早く行って早く帰ってこよう!








 ホー…ホー…。

 暗くなった山の中から梟の鳴き声が聞こえる。


「…………」


 パチパチと火の粉が空中に舞い上がるのを見ながら焚き火とにらめっこ。

 焚き火の上には木に固定された子豚が逆さまに吊るされている。滴り落ちた肉汁がジュッ!と音をたてた。


「………ジュル」


 思わずヨダレが落ちそうになって慌てて啜る。香ばしい薫りが森中に広がっているからか、木の上から鳥や小動物が見下ろしていた。


「フッ…私の肉を狙うとは、中々どうして…目が高い…。だがしかし!やらん!」


 謎のキャラになりきり私の肉を狙う奴等を威嚇する。シャー!と威嚇すると動物達は森へと走り去った。


「…森へお帰り」


 ニヒルな笑顔を浮かべて再び焼豚へと視線を移す。いい感じに焼けてきた。私の豚は私のものだ。誰にもやらん。


「……ジュル」


 暫く焼豚を眺めていると背後からガサガサと藪を掻き分ける音が聞こえてきた。その音が段々と近付いてくる。


「グルルルル…」


 なんと藪から出てきたのは大きな猪だった。ヨダレをダラダラと滴ながら前足で土を掻き私を威嚇してくる。お腹が空いているのだろうか。

 それにしても…。


「……ジュル……ゴクリ」


 猪を見詰めたまま思わず唾を飲む。だってこの猪、丸々として美味しそう…。


「ピギャ………!?」


 熱い眼差しで見詰めていると突然猪が変な声を上げて暗い森の中へ駆けて行った。猪なのに脱兎のごとく。


「…?どうしたんだろう? こんなに可愛い幼女を見て逃げ出すなんて、失礼しちゃうぜ」


 猪の走り去る後ろ姿を見送った後、私はナイフで焼けたお肉の表面をスパッと切り取り、ナイフに刺さったままのお肉にお塩を振りかぶり付く。焼豚に合うタレも予め持ってきてあるので塩味に飽きたらタレで食べよう。




「ぷはぁー…おいしかったぁ~」


 カラン、と骨を炎の中に放り込む。さすがに子豚まるごと一頭は食べられないので残ったお肉も焼いて、予め持ってきたお皿に乗せて空間収納に保存した。これでいつでも焼き立ての焼豚が食べられる。緊急時に食べることにしよう。


 ごろんと後ろに寝転びぽけーっと夜空を眺める。野宿は初めてなのでやることが思い浮かばない。寝るにしてもまだ時間的には夜の8時くらいだ。


「うむ、暇だ!」


 思わず独り言もデカくなる。

 前世で一人でキャンプするソロキャンなるものが流行っていたような記憶があるけれど、一体一人でこの暇な時間をどう潰せばいいのか…興味なかったからあんまり詳しくは知らないんだよなぁ…。


「─うんしょ」


 ふん!と起き上がり、再び火の前で座り込む。

 パチパチと音を立てる炎をボケー…っと眺めていたらふと思い出した。

 ─そういや小学生の時の集団合宿でキャンプファイアして皆で歌ったっけ。その時の流行りの歌や、例の燃えろヨー!みたいな定番なヤツも。

 うん、暇だしいっちょひとりリサイタルでもするかな。どうせ山の中だから誰も聞いてないだろうし、音程が外れても気にしないもんね!


「よっし!」


 すぅ…と息を吸い込んだところで閃いた。

 そうだ、観客を作ろう、と。


「出ておいでー!『 炎の狼(ウルフレイム)』!」


 魔法で作られた狼だけど、目の前に誰かが居るのと居ないのとではやる気が違う。どうせなら見た目だけでもリサイタルの雰囲気に寄せたい。


『わおーん!』

『わふわふ!』

『きゅーん!きゅーん!』


 出てきたのは三頭の炎の狼。

 おかしい。ちゃんと狼をイメージしてるのに何故かいつもワンコっぽい。何故だ…。

 炎で出来た尻尾をブンブン振りながら『ハッ、ハッ!』と犬みたいな仕草でお行儀よく炎の前にお座りした。


「まぁいっか…。コホン!それでは只今からラピスリサイタルを開始しまーす!」

『わおーーん!』

『あおーーん!』

『おぉぉーーーん!』



 狼達の遠吠えと共に私はエアマイクで思い出した歌を歌いまくった。狼達も合いの手を入れるように時々に遠吠えをする。

 何故か狼達はパンがヒーローの某国民的アニメのオープニングを気に入り何度も歌わされた。何故だ…狼達は魔法で作られた疑似狼で自我なんてないはずなのに。まぁ某ヒーローの歌は私も好きだからいいんだけど。


 そんなわけで私は気持ちよーく飽きるまで歌い続け、夜は更けて行くのだった。



久しぶりの連日投稿です!笑


ラピス、冒険(?w)に出掛けました!さて、何処へ行くのでしょう?(๑ •̀ω•́)


誤字、脱字がありましたらお知らせください!助かります(*^¬^*)

ブクマ&評価ありがとうございますー!!(///ω///)

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