94・我慢の後は
「そう言えばエルナたん、新しい剣は見つかった?」
「それがまだしっくり来るものがなくて…」
私の腕力が弱いからかしら…とエルナたんの眉がへにょんと下がる。
ジル逹にもお願いしてるけど中々私の理想の素材が見付からないらしい。どうしたものか…。
「そっかぁ…。私も軽くてエルナたんが使いやすい剣を探してみるね!」
「ありがとう、ラピス。でもそんなに気にしないで?そのうち筋力も付くかもしれないし」
そう言うとエルナたんはムンと両手で拳を握って見せた。キャワイイ!でもエルナたんは頑張り屋さんだから無理しないで欲しいなぁ。
「エルナたんも頑張ってるし、私も頑張るね!」
お返しに私もムン!と胸を張って力こぶポーズをしてみる。むちむちの二の腕だけど私は力持ちなのだ。なのに力こぶは出来ない…どうなってるんだろ?
「私もラピスに負けないように頑張るわ」
「私も!」
お互いに鼓舞し合う私達をギヴソンさんが遠くで微笑ましく見ているのだった。
エルナたんは今日の午後に出発するようなので、折角の逢瀬の時間も残りすくなくなってきた。もう少し一緒に居たいけど、エルナたんも自分の家があるから仕方無いよね…。
「そうだわ。ラピスにお願いがあったの」
「なぁに?」
図書室で並んでお茶を飲んでいると、エルナたんが思い出したように顔をあげた。
お願いってなんだろう?エルナたんのお願いなら世界征服もしちゃうよー。
「あのね、うちで働いてくれている庭師がね、ラピスが作ってくれた長靴を欲しがっていてね、もしラピスの手が空いているときで良いんだけど作ってくれないかしら?勿論お代は払うから」
可愛く少し小首を傾げながらエルナたんが見つめてくる。
なんだ…世界征服じゃないのかぁ…。残念。
けどまぁエルナたんのお願いなら長靴くらいいくらでも作っちゃうぜ!
「いいよ!足の大きさが解ってるならいつでも作れるから」
「本当に?ありがとうラピス!」
長靴の材料はあるし、作ろうと思えばいくらでも作れる。しかしエルナたんが履く長靴じゃないのか…テンション下がるな。よし、ジル逹に丸投げしよう。
「タイナー…あ、うちの庭師の名前なのだけど。私、簡単な事だけなのだけどお手伝いしてるの。それでいつも私の長靴を見て誉めてくれて…」
「エルナたん、お庭でお手伝いしてるの?すごい!」
「簡単な事だけよ?」
「それでもすごいよー!」
貴族のお嬢様が庭で土を弄るなんて結構大変なことだと思う。貴族のご令嬢は一生土を触らずに生涯を終える人もいるって聞いたことあるし。
「私ね、バラのお世話を任されているの。と言ってもほんの少しの区画なのだけど」
「エルナたんのバラ!!」
エルナたんが育てたバラかぁ~。きっと綺麗なんだろうなぁ~。いいなぁいいなぁ~エルナたんにお世話されるバラが羨ましい。
「今年は見せてあげられないけど、来年はラピスにも是非見てほしいの」
「見たい!エルナたんのバラ!絶対に見に行くからね!」
食い気味に返すとエルナたんは嬉しそうに「ええ」と頷いてくれた。
それから昼食は皆で仲良く頂いて、デザートにプリンを振る舞った。すごく喜んでもらえて保存しておいたプリンは全部失くなってしまったけど、伯爵様にいつでも作っていいぞと許可を貰ったので、また後日沢山作って保存しておこうと思う。
エルナたんには私が書いたプリンのレシピをプレゼントした。即席で作った簡易蒸し器魔方陣もセットで。これがあれば分量さえ間違わなければ失敗はしないだろう。頑張れ、公爵邸の料理人さん。
「次にエルナたんに会えるのは秋だね…」
「そうね…。けど秋が過ぎて冬が来て…年が明ければラピスはお勉強にうちに来るのよ?あと少し寂しい日が続くかもしれないけれど、寂しいのが過ぎれば楽しいことばかりが待ってるわ」
しんみりとそんな言葉を漏らせばエルナたんが私の手を両手できゅっと握って微笑んでくれた。
そっか。来年からはエルナたんのおうちでお勉強だもんね。そしたら頻繁に会えるしお喋りしたり一緒におやつも食べられる。住み込みになるか通いになるかはまだ決まってないけど、今より確実に沢山エルナたんと一緒に居られるのは確定してるのだ。
「エルナたんと会えないのは寂しいけど、来年はいっぱい会えるから今は我慢する…!」
「私も、我慢するわね」
うぎぎ…としょっぱい顔をする私にエルナたんは笑って頭をなでなでしてくれた。
午後になり公爵様一行のお見送りにお屋敷の正面に並ぶ。いつもと同じじゃなくて今日はエデルさんも一緒だ。
さっき公爵様に聞いたけど、なんとエデルさんが家庭教師をしてくれるのだとか。今年いっぱいは主に私とアー君を教えてくれるらしいけど、来年は私が公爵邸に行く日はエルナたんと、伯爵邸に居るときはアー君とで各々お勉強を教えてくれるようだ。え、それって毎回転移魔法で行き来するってこと?ズルイ…!一人だけ転移魔法使うなんてずっこくないか?ムギギギ…!
ともあれ時間は無情に過ぎて行き…。
「ガマン…すりゅ…ひぐ…」
「あぁラピス泣かないで…二月なんてあっという間よ、ね?」
「んぐ…」
泣かないように唇を固く結んで頷く。今の私の顔、大変ヤバイと思うんだけど、何故かエルナたんはちょっぴり嬉しそうに頬を染めてうっとりしている。
「ホラ、お前がグスグス泣くと出発が遅れるだろ」
急に伯爵様に俵抱きで抱えられてエルナたんと離された。あにすんだコンニャロウ!!
「あーー!エルナたぁーーん!!」
ズビズビと鼻水滴ながらエルナたんに手を伸ばす。
エルナたんも公爵様もそんな私に寂しそうに笑いかけて馬車に乗り込んだ。
あぁ!せめて最後に一回くらいぎゅーっとハグしたかったのに!伯爵様のいけずぅぅ!!
あぁ!馬車が離れて行っちゃうぅ!!
「『全ての悪意から彼の者を護れ!聖なる加護を彼の者に!!』」
せめてエルナたんに聖域の魔法を、と力いっぱい愛を込めて呪文を叫ぶ。と─。
ドパァァァァァ!!と光の柱が立ち上がった。
「!?」
「おぉ!これは凄い!」
馬車を引く馬も、護衛していたテオやギヴソンさんは驚愕で固まったけど、エデルさんだけがパチパチと目を輝かせて拍手を送ってくれた。
ふぅ…これで一安心。エルナたん達は無事にお屋敷に帰れるだろう。
「テオー!エルナたんの事死ぬ気で守ってねー!」
テオに向かって叫ぶと苦笑で手を上げて応えてくれる。よしよし。
「お前!やりすぎだ!」
「んあ?」
俵抱きから両脇に手を差し込まれて伯爵様に向かい合わせになるようにだっこされた。
「アーチェスが言ってたがまさかミンチになる威力じゃないだろうな!?」
「………てへ」
ミンチどころか多分あの威力じゃ蒸発するかも、とは言えず笑って誤魔化そうとしたけど無理だった。
青筋の浮かんだ伯爵様に連行された私はこってりお説教される羽目に。解せぬ。
そんな私の様子を楽しそうに見ていたのはエデルさんだけだった。人の不幸を笑うとか失礼じゃなかろうか?
今回はちょっぴり短いですがごめんなさい(>_<)
次回からちょっとラピスがやらかしますの章になります笑
誤字、脱字がありましたらお知らせ下さい!助かります(*^¬^*)
ブクマ&評価ありがとうございますー!!(///ω///)
急に寒くなったので皆様風邪に気を付けてくださいませー!( • ̀ω•́ )✧暑いのは苦手だけど寒いのは平気な私ですwww




