89・ミルク
「ふむふむ…昨日も思ったけど、アラン君は年齢の割に魔力量が多めなんだね」
朝起きるとエデルさんがアー君の体を撫で回していた。
朝っぱらから何してんだ、この人。
「エルディアナ君も相当な量の魔力を持っているけれど、最近の子供って皆こうなの?どういう事?」
エデルさんの視線が伯爵様に刺さる。伯爵様の頬がピクリと引き攣ったのが見えた。
「魔力の増やしかたはラピスに教わったんだ!ラピスのお陰で僕の魔力は前の何倍にも増えたんだよ!」
誉められたことが嬉しいのか、アー君が腰に手を当ててフフン!とドヤッている。アー君の魔力がここ数ヵ月で三倍くらいに増えてたのは知ってたけど、私が教えた方法をどうやら毎日続けていたようだ。─フッ…ま!私も毎日してるけどね!張り合ってなんかないもんね!
「へぇ~ラピスが…ねぇ、どんな方法なのか教えてくれるかい?」
「え、ヤダ」
キラリと光ったエデルさんの瞳がアー君をロックオンしている。なのに当のアー君はあっさりバッサリ拒否った。
「あれはラピスが僕にだけ教えてくれた方法だから、僕とラピスの秘密なんだ!だから教えない!な?ラピス!」
なんかほっぺを染めてチラチラと私を見ながら同意を求めてくるアー君には悪いんだけど…。
「別に秘密じゃないよ?私、兵士の人とかお兄ちゃんとか何人かに教えてるし」
「!!!」
ほんのり赤みが差していたアー君のほっぺから色が消えてよく解んないけどショックを受けている。あれ?なんか悪いこと言ったっけ?
「うふふふ…残念でしたね、アラン様」
「~~~!!」
何が残念なのかは謎だけどエルナたんがそう言うと今度はアー君は頬を膨らませて真っ赤になった。赤くなったり白くなったりまた赤くなったり…アー君もしかして夏風邪かな。
「どうしたの?アー君。もしかしてお熱あるの?」
近付いておでこに手を伸ばそうとするとアー君がすごい勢いで壁に後退りして壁と一体化してしまった。
「だ、だだだだ大丈夫だから!心配しなくていい!」
「そうなの?」
アー君が赤ベコの如く首をブンブンと縦に振る。一体どうしたんだ、少年よ…。
挙動不審なアー君はその後も目が合うと赤くなったり青くなったりしてサッと目を反らされたりした。たまに隣のエルナたんからひんやりと冷気を感じるのと関係あるのかな?
朝御飯を食べている間、アー君のそんな様子に伯爵様夫妻はニヨニヨと口許を綻ばせながら眺めていたのだった。意味が解らん。
それにしても…アー君もエルナたんも身長伸びるの早くない?最近はアー君なんて私より成長して頭ひとつぶんはでかい。エルナたんもアー君と並ぶとそんなに差はない。私だけ全然伸びない。なして…。
このままじゃ一緒に魔法学園に入学しても私だけ幼児扱いされてしまうではないか。ヘタすりゃ見た目で入学拒否されるかもしれんではないか!それはアカン!身長を伸ばさなくては…!!
誰か身長が伸びる方法を教えてくれないかな。と考えて歩いていると前方にネギを見つけた。ん?カモか?
「──テェェェェオォォォォ!!!!」
「うわぁぁぁ!!!」
全方にこちらへ向かってくるギヴソンさんとテオの姿が見えたのでこっちから加速して頭から突っ込んだ。テオのお腹に。人間ミサイルじゃい。
テオは私を受け止めるとミサイルの衝撃に耐えきれなかったのか、私を抱えたまま後ろへゴロゴロと五回転した。
ギヴソンさんが転がって行く私達を見て驚いて手を伸ばしたままの姿で固まっている。回転が止まったら慌てて駆け寄ってきた。
「大丈夫かテオ!?」
「イテテ……大丈夫です。─こら!ラピス!危ないじゃないか!」
「あははは!」
「アハハ!じゃないよ全く…。本当にいつも元気だね、ラピスは」
苦笑しながら私を立ち上がらせテオも立ち上がる。立ち上がったテオは私が顎を水平になりそうなほど見上げないといけない位には背が高い。まだ14歳なはずだから、それでこれだけ伸びるってことは何かしてるはず。
「テオは背が高いよねー…良いなぁ。ねぇ、どうしたら背が伸びるの?」
「え、背?」
突然の質問にテオとギヴソンさんが顔を見合わせた。
「うん。アー君もエルナたんも背が伸びたのに私だけ小さいからコツ教えて!」
「コツって言われてもなぁ…う~ん…」
テオが困惑した様に視線をさ迷わせる。そんなに難しい事じゃないと思うけどなぁ。いや難しいのか?私の身長ピクリとも変動しないし。
「ラピス、ミルクを飲むのはどうだい?」
「うげっ」
ギヴソンさん笑顔で悪魔のようなことを言ってきやがった!なんて事を提案してくるんだコイツ!
思わず素で反応してしまってギヴソンさんとテオが私の顔を見て目を瞬かせた。
「……もしかしなくてもラピス…ミルク嫌いなの?」
「き、キライじゃないもん…苦手なだけだもん…」
「それを嫌いと言わずしてなんと言う」
「嫌いじゃないもん!何かに混ざってたら食べられるもん!生が気持ち悪いだけだもん!」
そう、生ミルク…私が唯一苦手な物だ。
生で飲むと口の中に膜が張ったみたいで「あぁぁぁあぁ…!」ってなるのが気持ち悪い!後なんか生臭い!
シチューやオムレツやお菓子やフルーツを混ぜたジュースは大丈夫だけど、朝食にコップに並々と注がれたアイツだけは無理なんだ…!
最近はあまりにも私がヤツを空気扱いするから母が諦めて出さないようになった。代わりにチーズやヨーグルトを出してくれるようになったので栄養は補えているはずなのに…何故仕事をしないんだカルシウム!!
「道理で朝食の時に空気扱いしてるはずだよ…」
呆れたようにテオが肩を落とす。
くっ…気付かれてたのか!だって仕方無いじゃないか、気持ち悪いんだから!
「うっわ…凄い顔…。あぁ、うん、その表情でどれだけミルクが嫌いなのかよく解ったから、その顔やめて?」
「確かにその表情見たら無理に飲めとは言いづらいな…」
人の顔が酷いみたいに言わないでほしい。
「あれ?…けど昨日ラピスが作ったレンニュウだっけ?あれもミルクで出来てるんだよね?ラピス食べてなかったっけ?」
「あれは調理されたミルクだから大丈夫」
「いやいや、ミルクはミルクでしょ」
何言ってんの?調理前と調理後じゃ全く別物でしょうが。世の中には「チーズはキライだけどピッツァとチーズケーキは好き」とか「果物はキライだけどジャムは好き」とか色んな人が居るんですよ!
「はぁ?じゃあテオは生のお肉食べられるんですかぁ~?お肉はお肉だから生でも大丈夫なんですかぁ~?」
「また屁理屈を…」
下からおぉん?と厭らしい顔で見上げるとテオは頬を引き攣らせて見下ろしてくる。
せめてミルクが練乳だったらいくらでも飲めるのに…。砂糖入れてもミルクはミルクなんだよ。煮詰めてドロドロに練乳やキャラメルみたいになってたら別だけど。
「それなら…マリスさんにミルクをたっぷり使ったおやつでも考えてもらえば良いんじゃないか?」
見かねたギヴソンさんが提案してくれた事にテオもそれが良いと頷いた。
なるほど、その手があったか。
よし!そうと決まればマリスさんに突撃じゃー!
「それはそれとして、お嬢様と一緒じゃないなんて珍しいね。いつも会えるときはべったりなのに」
「なんか大切なお話があるみたい。おやつ食べておいでって公爵様が」
それなんだよね~。エルナたんとイチャイチャしたいんだけど、なんか秘密?のお話なのか私だけ上手く追い出されたのだ。
家族間のお話とか流石に首は突っ込めないから別に良いんだけどね。
気が付けば私はテオに手を引かれながら厨房に向かっている。その一歩後ろにはギヴソンさんも着いてきていた。送ってくれるのかな?
「テオ達は休憩中?」
「そ。小腹が空いたから俺達も丁度厨房に向かうところだったんだ」
私に合わせて中腰で歩きながらテオが言う。中腰しんどくない?若いから平気なのかな。
「要するに今は暇だからラピスに付き合うよ」
「ミルクは飲まないからね!」
一応釘は刺しておこう。
頬を膨らませて見上げるとテオもギヴソンさんも苦笑して「わかった」と頷いてくれた。
さて、マリスさんに何作ってもらおうかな~!
頑張るぜー!とか言ったのに更新遅くてすみません(>_<)
やっべ!季節追い抜いちゃったよ!爆ww←笑い事じゃない
今年中に果たしてラピスは公爵家に行けるのか…(; ´ ▽`)
誤字、脱字がありましたらお知らせください!(*^¬^*)
ブクマ&評価ありがとうございますฅ(>ω<*ฅ)♥




