87・夏といえば
「まぁ!素敵!まるで雪のようね、ラピス!」
エルナたんが器に降り積もってゆく薄く削られた氷を見て目をキラキラと輝かせている。
じっくりゆっくりと凍結させた氷がショリショリと削り落ちてゆく。器に山盛りの雪山がいくつも出来上がった。
そう、エルナたんのために用意したデザートはかき氷なのである。
ジル達が私のテキトーな説明と絵を元に立派なかき氷器を作ってくれたので、当日はみんなでかき氷パーティーをしようと考えてたんだよねー。
大人組から抜け出した私とエルナたんはお屋敷を出て新しくできたドルティア族の村へとやって来たのだ。
皆にエルナたんを紹介して、皆もそれぞれ自己紹介をして今に至るというわけだ。
「エルナたんは何味が良い?」
ガラスの瓶に入った色とりどりのシロップを並べるとエルナたんの可愛いお目目が更にキラキラと輝いた。
シロップ作りにはマリスさんと女子的意見も取り入れるためにニィナさんにも協力してもらったお陰で沢山のシロップが出来上がった、と言う訳だ。シロップというよりもフルーツのソースみたいな感じの物が殆どだけど。
赤はユスラウメというサクランボに似た木の実を使ったもの。さくらんぼよりもずっと薄ぅぅい微妙な味だけど、お砂糖と煮込んでそれっぽく出来上がった。
サクランボもこの世界にあるにはあるんだけど、前世みたいに品種改良された甘くて美味しいやつじゃなくて、ガッツリ野生でものすごく酸っぱいのしかなかった。さすがに酸っぱ過ぎて美味しくなかったから、少し前に摘んで保存していたユスラウメを代用したのだ。
本当はイチゴが良かったんだけど時期的に無かったんだよね…残念。イチゴのシーズンの頃はまだ空間収納魔法を覚えていなかったから仕方ないか。
後はブルーベリーとリンゴと桃とレモンと甘夏に似た柑橘類のシロップだ。
そして一番端にあるのはラピス謹製、練乳!そしてキャラメルシロップだぜ!伯爵家のお砂糖を思う様使ってやったわ!ぬはは!
「沢山あって迷うわね」
「じゃあみんなで好きなの選んでシェアしようよ。そしたら全部食べられるよ!」
「…いいの?」
「うん!」
エルナたんは桃のシロップを選んだ。ジルはレモン、シーナちゃんはユスラウメ、リムリアはブルーベリー、ヤトーは甘夏っぽい柑橘、ニアはリンゴを選んだ。
………誰もキャラメルと練乳を選んでくれない…何故…。
「いや…色が…なぁ?」
私が拗ねているとヤトーが視線をさ迷わせながら同意を求めようとしたが誰も目を合わせなかった。
そんなにヤバそうな色はしてないと思うんだけどなぁ…茶色っぽいのがアウトなんだろうか?
「いいもん。私が食べるもんね!」
自分の分のかき氷の上にスプーンで掬ったキャラメルソースをかけ、その上から練乳をたっぷりとかけた。あらかじめ冷やしておいたシロップは氷にかけても溶け出すことはなく、氷の山はこんもりとしたままだ。
私のかき氷が完成したのを見た皆が揃ってかき氷にスプーンを入れた。
そして恐る恐ると言うか不思議そうな顔でパクリと勢いをつけて口に放り込む。そして氷のように固まった。
私もキャラメル練乳味のかき氷をスプーンで掬い口に含んだ。決め細やかに削られた氷は一瞬で口の中で溶け、キャラメル練乳の余韻を残す。たまらん…!
「ちゅめたーい!でもおいしーね!氷って美味しいんだね!」
ニアの声に我に返った皆がかき氷をキラキラした目で見始めた。かき氷器を作っていた最初は「氷なんて食べてどうするんだ?味なんてないだろ」と疑心暗鬼だったみたいだけど、どうやらその考えは払拭されたようだ。
皆にこにこと笑顔を浮かべて二口目に行こうとしている。
「エルナたん、どう?」
「すっっごく美味しいわ!氷を食べる経験は初めてだけど、こんなに美味しいなんて…」
エルナたんは頬を両手で包んでうっとりとかき氷越しに私を見つめている。
「よかったぁ!暑いから冷たいものにしたんだぁ~」
うんうん、エルナたんが喜んでくれたなら大成功だ。
それから皆がそれぞれのシロップを味見し合った。エルナたんは最初はおずおずとスプーンを伸ばしていたけれど、最終的には皆で仲良く食べ合いっこをした。
意外なのは私の食べていたキャラメル練乳味のかき氷が真っ先に食べ尽くされた事だ。皆あんなに胡乱気に眺めてたくせに。と言うのもエルナたんがキャラメル練乳に手を伸ばした後、大絶賛したためそれまで懐疑的に見ていた皆の目が変わり、それぞれが一口食べた後まるで雷でも落ちたような表情をしたかと思えばあっという間に平らげられてしまったのだった。
ちなみに私は一口しか食べていなかった。
ムカついたのでエルナたん以外の皆のかき氷を片っ端から掻き込んでやった。当然頭がキーンてなってエルナたんに心配されてしまった。頭ナデナデしてくれたからそれはそれで良しとしよう。
「それにしても氷を削って食べるなんて発想、ラピスが思い付いたの?」
「え」
しまった。そういうの考えてなかった。
どうしよう。前世じゃ普通に食べてたものだからなぁ…。
「んとね~…ほ、本で見たよう、な…?」
あ、無意識に視線がお空に!自分で言うのもなんだけど怪しすぎる!
「そうなの。お勉強頑張ってるのねラピス」
「ぇ、えへ、えへへ…」
浮気がバレたみたいな怪しい笑い方する私にエルナたんはわざと突っ込まないで笑顔で誉めてくれた。良心が雑巾絞りされてる気分だよぅ…。本当はエルナたんに嘘は吐きたくないけどこればっかりは仕方無い。異世界から転生しました、なんて言ったら頭おかしい子だと思われちゃうよ。
「お嬢様。こっちは試作品で、もうひとつ完成品があるので是非持ち帰ってください」
「まぁ。いいの?」
「はい」
「うれしい!ありがとう、皆さん」
ヤトーが部屋の奥から木箱に入った完成品のかき氷器を持ってきた。実はエルナたんに持ち帰ってもらうためにもうひとつ作ってもらっていたのだ。
「この道具もラピスが考えたの?」
「そうですよ」
ジルが私の描いた適当なかき氷器のイラストをエルナたんに見せる。それを見たエルナたんが微笑みを浮かべた。エルナたんに見られるって解ってたらもっと丁寧に描いたのにぃ!
「本当にラピスは凄いのね」
「そ、そんなことをないよぉ~…」
ヤバイ。私の笑い方今めっちゃ気持ち悪い!酔っ払ったスケベなおっさんの笑い方みたいだった!
そんなキモキモな私の頭をナデナデしてくれるエルナたんは多分、いや確実に女神に違いない。
「そう言えばこの氷のおやつに名前はあるの?」
言われてみれば皆にはこれを『かき氷』って言ってなかったっけ。
エルナたんも氷を食べるのは初めてって言ってたって事は、取り敢えずこの世界には今のところかき氷って食べ物は存在しないって事だよね。それなら新しい名前もアリなのでは?
と言うことならエルナたんのために作ったものなんだし、どうせならエルナたんに名前をつけてほしいかも!
「ないよ!エルナたんがつけてくれたら嬉しいな」
「私が?けどラピスが考えたものなんでしょう?いいの?」
「うん!」
正確には私が考えたものじゃないんだけど、前世のかき氷くんもこの世界で新しくエルナたんが名前をつけてくれるとなれば喜ぶに違いない。つか喜べ。
「そうね…雪みたいに真っ白で綺麗だから『雪氷』でどうかしら?…」
「雪氷!うん、良いと思う!」
新しい名前をつけてくれたエルナたんはそこはかとなく恥ずかしそうに肩を竦ませ小さく笑った。
そしてこの世界に新しいおやつが誕生した訳だけど、その後お勉強でお招き出来なかったアー君に「ズルイ!」と拗ねられたのだった。
お久しぶりです~(,,><,,)
ノロノロ更新で申し訳ない!泣
はよ夏終わらんかな…いやガチで…_(´ω`_)⌒)_
箸休め(?)で短編の悪役令嬢物をチマチマ書いてるので完成したらあぷしますね!いつになるかは期待せずに待っててくだせぇ…ふへへ
(;°;ω;°;)
誤字、脱字がありましたらお知らせください!助かります(*´ `*)
ブクマ&評価ありがとうございます!(*´ω`*)




