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81・疑念

 


「う~ん…無理、かな?」

「なんでッ!?!?」


 ……ん?あれ?なんかデジャビュ?


 逃げないと約束してくれたので拘束を解いた後、魔法使いのお兄さんに率直に「転移魔法教えて」とお願いしてみたが笑顔で却下されてしまった。

 つい最近同じようなやり取りをした気がして既視感を覚える。


「何でと言われても…」


 うぅぅん…と唸ったお兄さん。

 さすがエルナたんの次に綺麗だと思ったお兄さん。悩む表情も美しい。中性的な容姿だけど男の人なんだよね。

 しかし教えるだけなのにそんな難しい事じゃないと思うんだけどなぁ。それとも門外不出的な何かなのだろうか。てかケチケチせずに教えて欲しい。


「転移魔法は今のところ宮廷魔術師だけが使う事を許されているんだけど、知ってるかな…」

「そうなの?誰でも使えるんじゃないの?」

「残念だけど、転移魔法を修得する際の誓約で『誰にも教えてはいけない』っていうのがあって教授する事は不可能なんだよ」

「えぇぇ!つまんない!」


 思わずブー垂れた私を見てお兄さんは申し訳なさそうに「ごめんね」と眉尻を下げた。

 折角美味しそうなカモネギをゲットできたと思ったのに口惜しい。


「むぎぎぎ…ッ!─いいもん!こうなったら自分で転移魔法作るもん!お兄さんのケチんぼ!」


 よく考えてみれば今までだって色々と自作の魔法を作ってきたんだから不可能ではないはずだ。

 それに自作できたら既存の転移魔法での誓約で縛られることはない。

 せめてヒントくらい教えてほしかったけど無理そうなので仕方がないか。


「ぇ…いや、転移魔法、危ないよ?それに魔力も大量消費するしさぁ…やめておいた方が…」


 お兄さんは何故か私を宥めようと転移魔法のデメリットを次々にあげてゆく。

 決まった場所にしか転移できない、人に教授できない、魔力消費が多い、失敗する確率が高い、失敗すると大怪我する、等々。

 何でそんなに危ないのか解らない。まるで転移魔法を作った人間が態とそう作ったかのようだ。

 …………いや、もしかして態となのか?て事はつまり─。


「──悪用されること前提で作った魔法なのでは…?」

「……」


 ポロリと溢れた独り言のような呟きにお兄さんの表情がスッと変わった。

 その眼差しは私の深淵を覗くように、射抜くが如く突き刺さる。


「──君、何者?」


 思わず息を詰めた私にお兄さんは視線だけで何かを探る様に見つめてくる。

 今まで「子供らしくない」「幼女らしくない」「変わってる」「おかしい」とか色々と言われたけれど「何者?」とか聞かれたことはない。まるで魂を問うような言葉だ─。

 何て返したらいい?漬物?あ、ダメだ。この世界今のところ漬物なんて無いや。ギャグが通じねぇ。等としょうもない自問自答をしてしまう。


「君が使っていたあの魔法も、僕は知らない。それ以前に僕が転移してくるのが解っていたみたいに待ち伏せていたよね?」

「偶々っス」


 いやホント偶々っス。偶々私の魔力感知にかかっただけだし。嘘じゃない。


「それにさっきの魔法だけど、割りと本気で抜け出そうとしてもピクリとも動かなかったし……この僕でも」


 最後はボソリと囁くように小さく何か呟いたけど私の耳には届かなかった。


「見たところ君は4…?5歳くらいなのに、僕が言ったことを全て理解して転移魔法の真理を自ら導きだした。違う?」


 同意を求められても頷いて良いのか解らない。

 だってあんなにデメリットがあるのがそもそもおかしいのだ。

 魔法は便利に使えるもので、その便利さを享受するために利用者は魔力を代価として支払う。そりゃ危険を伴う魔法も中にはあるかもしれないけれど、そういう類いの魔法は呪術に関するものだ。人を呪わばナンチャラ…で、自身がリスクを負うことを納得した上での使用なので自業自得としか言いようがない。

 そう考えると転移魔法でのリスクは小さいものから大きなものまで、さっき教えられた物だけでも多すぎる。


「よく考えれば解る事だと思うんだけど…。だって違和感があるんだもん。今まで誰もその事に何も感じなかったって方が私には不思議と言うか…」


 恐らく転移魔法の陣はかなり巧妙に作られていて、本来なら受けなくてもいい誓約を態と受けなくてはならないように作られているのだと思う。しかもそれを簡単には看破出来ないような作りなのだろう。

 既存の私が知る魔法にはある程度使用者本人をガード出来る物が多い。例えば炎の魔法を使っても使用者本人が燃えることはないし、雷の魔法も本人が感電することはない。と言う様に魔法陣のなかに予めセーフティーバルブの役割が必ず組み込まれているのだ。それなのに聞いた話では転移魔法にはそれがないときた。だったらもうそれは態と、としか考えられない。


「………」


 私の感じた違和感をそう話すとお兄さんは綺麗なお顔には似合わないようなポカーンとした顔で固まった。


「…もしかして既存の魔法陣をひとつひとつ全部精査していったのかい…?」

「うん。気になったから」

「で、そこまで掘り下げ調べた…と」

「うん」

「なんて子だ…」


 お兄さんは呆れたような、それでいて感動したような…まるで見えない何かを頭からスポンと抜かれた様に呆然と私を見下ろした。


 ふっふっふっ…眠れる中二病(不治の病)疾患者を嘗めて貰っちゃ困るぜ、お兄さん。

 前世じゃ魔法なんて概念だけしか存在しなかったからね…そりゃ調べるでしょ。解らないものは分解してその構造を調べたくなるのが性ってもんよ。私の黒歴史が「コイツを調べるんだ!」と心の奥底で訴えるのだから仕方がない。うん、仕方がないのだよ。


「ところでお兄さん。転移魔法は宮廷魔術師しか使えないってことはお兄さんも宮廷魔術師なの?」

「…そうだよ」


 何か間があった気がするけど、突っ込まないでおこう。


「そうなんだ?でも前は旅の魔法使いだって言ってなかったっけ?」

「よく覚えてるね」

「物覚えは良い方だから。あ、でも興味がないと直ぐに忘れちゃうよ?」


 この前も国の名前を間違えてジル達に笑われたし。自分の興味のない事に関しては私の頭の中の梅干し脳ちゃんはとことんポンコツなのだ。それは自分が一番よく理解している。


「それは…人間なら誰しもそうなんじゃないかな?僕も昔は魔法しか興味なかったし。研究所に籠って日がな一日魔導書やら魔方陣とにらめっこしてたよ」

「引きニートだったの?」

「ヒキニ…?」

「あ、こっちの話です」


 気にしないでー、と返す。お兄さんは聞き慣れない単語に首を僅かに傾げる。

 いつの間にかさっきまでの探るような、警戒するような空気は霧散していた。


「─で、まぁ…世間知らずな大人になっちゃってね。このままじゃ人間として駄目になるのでは?って考えるようになったんだ。それで一念発起、旅に出よう!ってなって世界中を見て回っているんだ。 魔法にしか興味がなくて、魔法だけしか輝いて見えなかった僕の眼に、新しく輝くものが映るんじゃないかって─…」

「それで何か見つかったの?」


 何処か遠い目をして語るお兄さんの視線がおもむろに私を捉える。その目には子供が宝物を見付けたような輝きを宿していた。


「うん。やっぱり世界は面白いね」


 にこりと笑って頷いたお兄さんは、この時私の目には年相応の青年のものに見えたのだった。






ぎゃひぃぃ!!(歓喜)

またまた素敵レビューを頂いてしまいました!

┌(。A。┌ )┐←歓喜の舞w


まこ様!ありがとうございますぅぅ!!嬉しくて目を通してはニヤニヤしております!あ!引かないでぇぇ!泣( `;ω;)


私のカオス小説を誉めていただけてとっても嬉しくて悶絶しております(;//́Д/̀/)'`ァ'`ァ

これからも亀更新ですが喜んでいただけるようにがんばります!



と、言うことで…早くエルナたんのところへラピスを向かわせなきゃー!笑


誤字、脱字がありましたらお知らせください(*´ω`*)助かります!

ブクマ&評価ありがとうございます(///ω///)♪


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― 新着の感想 ―
[気になる点] 綺麗な宮廷魔術師さま、ソレは新しく輝いて見えるモノではなく、厨二病という病に侵された猪幼女が目新しく見えているだけなので、係ると胃薬がお友達になっちゃうかも!(((*≧艸≦)ププッ
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