77・魔晶石
ある日の昼下がり。
私はジルたちのアトリエにお邪魔していた。
「おぉ~…!」
遂に、遂に完成したよ!
「しゅごい…!皆天才だね!」
両手に持って掲げているのは今し方完成したドライヤーである。
前世の物に比べると部品なんかがほぼ無い感じなのでとっても軽い。おまけに音も殆ど無くてお喋りしても声を遮ることもない。しかもコードレス!
「すごーい!すごーい!えへへへ~」
ジル達がお手伝いしてくれると約束してくれたので早速魔道具作りを開始して数日。
ジル達が賢いのか、それとも私のエルナたんへの愛の成せる説明のお陰なのか、ドライヤー1号が完成したのだった。
これでエルナたんの御髪を乾かしてあげられる!
ドライヤーを手にエルナたんの綺麗な髪を乾かしている自分の姿を妄想しつつ、握り手の部分にある起動用の魔石二つの内の片方に触れる。
するとほわぁ~と温かい風が前髪を舞い上がらせた。
─うん、暑い!そりゃ今真夏だもんね。あっついわ!
そしてもう片方の起動用魔石に触れると今度は冷風が顔にかかった。
「すずひぃ~…」
涼しいと言ってもエアコン並みとかそう言うのではなくて、あくまでも外気温と変わらない。うちわの風みたいなものだ。
贅沢を言えばマイナスイオンとか出たら良いんだけど、仕組みがさっぱり解らんからね。
温、冷風機能が付いてるし、改良は後々するとしてもドライヤーは完成だ。
取り敢えず日々伯爵様にはホウレンソウを守れと言われているので後でちゃんと報告しなくては。
「これ、良いわねぇ~」
リムリアは感心したように私とドライヤーを眺めている。さすがオネ…いや、美容男子。関心ありまくりだ。
「髪は自然乾燥だと傷んでパサパサになるからね。素早く乾かしてあげると痛みにくいし、髪がキレイになるんだよ」
「そうなの?」
目から鱗と言わんばかりにリムリアが瞬いた。
キューティクルとか言われても多分解らないだろうから、端折って説明するとリムリアの目がキラキラと輝き出す。
「ジル!私にも作ってちょうだい!」
「あ、あぁ…いいぞ」
クワッ!とリムリアに距離を詰められたジルが頬を引き攣らせながら頷く。
「ただ、他の材料は有るが魔晶石がそんなに余裕がない。採取を頼めるなら作れる」
「解ったわ!魔晶石ね!」
ふん!ふん!とリムリアが鼻息荒く拳を握っている。
─ところで魔晶石とはなんぞや?
魔石は解るけど魔晶石と言うのは解らない。
「ねぇねぇ、魔晶石って何?」
「ラピスは魔晶石を知らないのか?」
「うん」
頷くと「そうか」とジルがゴソゴソと戸棚から何かを持ってきて私の前にコトリと置いた。小指の先程の小さな石だ。
「こっちが魔石で、こっちが魔晶石」
「同じに見える…」
二つの石は私には見分けがつかない。どちらも同じ薄い青色の石だった。
「見た目はそんなに変わらないが、手に持つと解るぞ。魔力感知は出来るよな?」
「うん。出来るよ」
「さすがラピス」
そう言ってジルは魔石を私の手に乗せた。
魔石を退けて次に魔晶石を乗せる。
「…どうだ?」
「よくわかんないけど、魔石はトゲトゲしてて、魔晶石はふんわりしてる気がする…ような?」
私の答えを聞いたジルが納得したように頷く。
「魔石はラピスが知る通り、魔物からごく稀に採れる。長く生きれば生きるほど、その大きさも成長して行く。それが魔石だ」
ジルの言う通り、魔石はごく稀に魔物の体内─心臓にあたる部分から採取される。お値段は大きさで変わるけど、宝石のようにキラキラと輝く美しい石なので装飾として貴族には人気だ。大きな物はお値段が高くて庶民には手が届かない。
なので平民の間ではお手頃な半貴石、前世ではパワーストーンと呼ばれた石を装飾として使う。ちなみに小豆大の大きさの魔石は価値が低いので半貴石の細石と同価値だったりする。多分保有魔力が少ないからかな?
ついでに言えば勿論ダイヤモンドやエメラルドみたいな宝石も勿論存在するけれど、魔石と比べると値段は5分の1ほどになる。更にその下の半貴石は宝石の300分の1くらいだ。
「で、魔晶石は魔物の体内から生まれる訳じゃなくて、自然に結晶化する石だ」
「自然に?どうやって出来るの?」
頭の中では塩が結晶化する様子が浮かんだけれど、魔晶石は石だし、違うのかな?
「魔晶石は清浄な場所で生まれそして魔石と同じ様に成長して行く、魔素の結晶体だ」
魔素って確か空気と同じでその辺に漂ってる物だけど、そんな副産物も産み出すのか…知らなかった。
ジルによると、魔道具作りには魔晶石が必須で、私にはよく解らないけれど簡単に言うと魔石は魔力を流し込んで操る為の物で、魔晶石は電化製品で言うところの基板の様な働きをする物らしい。
価値としては半貴石よりやや高めの値段。採れる場所が限られているので職人はそれぞれの採取場所を秘密にしているようだ。
魔晶石は魔道具師には価値あるものだけど、そうでない者にはただの石に等しい。魔力を保有していても、それを有効活用できる業を持つのは魔道具師に限られるからだそうだ。
「私達の故郷は北の霊峰から濃い魔素が流れ着く場所にあったから、魔晶石の採れる場所は結構あったんだけど…この辺にあるかしらぁ…?ラピスはそう言う清らかな場所って知ってる?」
「ん~…清らか…かぁ…」
何処かにそんな場所あったっけ…?
伯爵様の領地は半分は森だから、森の中をくまなく探せばもしかしたらマイナスイオンがゴリゴリの場所もあるかもしれない。
「森の中で探しておくよ」
「あらぁ、それなら私も連れて行ってくれない?」
探索にリムリアが挙手する。そう言えばリムリアは狩りが得意なんだっけ。
「いいよ!これから行く?」
「勿論!」
リムリアは片目をぱちんと閉じると「準備してくるわ」と自室に駆けていった。
「リムリアとふたりで心配ないのか?」
「ないな」「ないね」
ヤトーが心配そうにリムリアの後ろ姿を見て溢すと、ジルとシーナちゃんの声が重なる。そう言えばふたりは私が熊をボコボコにしたのを見てドン引きしてたっけ。
「危ないところには行かないから大丈夫だよ」
「余り遠くには行くなよ?」
「はーい」
手を挙げて返事するとヤトーは私の頭を優しく撫でた。
程なくリムリアが矢筒と弓、短剣を持って戻ってきたのでふたりで村を出る。月桂樹の囲いを抜けて心当たりの場所へ向かった。少し先に小さな小川が流れていて、薬効のある植物が自生している場所があるからだ。ジル達の言う清浄な場所と私の思い浮かべるイメージは違うかも知れないけど、まぁ行くだけ行ってみる。
小川に着いて辺りを見回したけどそれらしいものはなかった
残念…と肩を落とすと、リムリアが顎に指を添えて小川を観察している。水を掬い上げてみたり、川辺の石を持ち上げたりしている。私には解らない何かを観察しているみたいだ。
「…まだ解らないけど…上流に行ってみましょうか」
「うん」
一頻り観察し終え満足したのか、リムリアと上流を目指して歩き出す。小川は進むごとに細くなって行き、最初2m幅程だった小川は今は幅60cm程になっていた。このまま進むと小川が消えるんじゃないだろうか?と思っていたら、終着点は小さな、本当に小さな滝と、その下にやはり小さな滝壺のある泉に辿り着いたのだった。
結構長い間この辺りを駆け回っていたけれど、こんな場所があるなんて初めて知った。
野生動物の水呑場でもあるのか、泉の回りは草木が生えておらず、半円状にひらけている。そしてその泉を囲むように所々地面にキラキラと輝く物が見えた。
「あらら…動物に踏みつけられて地面にめり込んじゃってるわぁ」
リムリアがキラキラした地面に鏃をさくさくと突き立て土を退けると、そこにはオパールみたいに輝くスイカくらいの大きさの魔晶石が現れたのだった。
ちょっと更新が遅くなりました…申し訳ない(,,><,,)
やっと魔道具作りに到着しました~(ФωФ)
これからラピスのストーカーぶりがニョキニョキします笑
誤字、脱字がありましたらお知らせください(*´ω`*)いつも助かってます♡
ブクマ&評価ありがとうございます!(*^^*)




