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67・再会

 


「ジル!シーナ!無事だったのか!!」


 お風呂から上がった二人が通された部屋には3人の子供が居て、その内の一番年上だろう男の子がジルとシーナちゃんを見て慌てて駆け寄ってきた。


「良かった…!無事だったんだな」


 声を震わせながら二人を一緒にギュッと抱き締める。ジルもシーナちゃんもその子の背中に手を回して再会を喜んでいるみたいだ。

 到着する前、ふたりは伯爵様のお屋敷で保護している子の名前を聞いてはいたからか、驚きこそ少ないものの喜びは一入のようだ。


 扉の影から覗いていると奥に居たふたりの子が目をパチパチと瞬かせて抱き合ってる三人を見上げている。ふたりは女の子で、5歳くらいと10歳前後の子だった。その二人と私の視線がパチリと合う。


「にぃに、女の子がいるよ」

「え?あ、本当だ。ふたりの知り合いか?」


 解放されたふたりは振り返ると私に手招きした。

 とことこと近寄るとジルが私の肩に背後から手を添えてきた。顔を上げてジルを見上げると小さく笑みを浮かべて「実は…」と切り出す。


「この子のお陰なんだ。俺達がここまで来ることができたのは」

「…この子が…?」


 おぉ困惑してる。そりゃそうだよね。初見じゃ私はただの幼女にしか見えないもんね。


「ラピスです!」


 訝しげに見下ろされたので逆に笑顔で自己紹介してみると、面食らったように目の前の男の子が僅かにたじろぐ。


「ラピス。コイツはヤトーって言うんだ。俺より三つ年上で頼れる兄貴分だ」


 ジルに兄貴分だと紹介さたヤトーは満更でもないのかはにかんだ。

 その後ろから小さな女の子がとことこと近付くとヤトーの脚にしがみついてチラチラと私を盗み見てきた。全然隠れてないのが微笑ましい。


「ヤトーの妹のニアだ。ラピスよりひとつ下だぞ」

「……ニアよりちっちゃいのにお姉ちゃんなの…?」


 グサッと何かが刺さった気がした。気にしていることを…!


「ち…ちっちゃくないもん!」


 確かにニアの方が私よりほんのちょーっと大きいけど一歳差なんだからそんなものだろう。とは思うけど無意識にムキになって言い返してしまった。


「ちっちゃいよ?ほら」


 ニアは目の前まで来ると背を比べるように手のひらを頭上でスライドさせる。やめろ!現実を見せつけるんじゃない!子供ゆえの無邪気さがグサグサ刺さるじゃないか。



「ニア、ラピスは小さいけど、すごいんだぞ?魔法だって使えるし、力持ちだ」

「そーなの?」


 ジルの言葉に途端に瞳をキラキラ輝かせるニア。

 ふっ、崇め奉るが良い。これが年上の威厳ってもんよ。


「もう、ラピスの顔…ふふっ」


 年下の女の子にドヤ顔きめてたらシーナちゃんに笑われてハッとする。

 遥かに精神年齢が高いのにリアル幼女に張り合ってしまった…!アホか私。いたたまれなくて乾いた笑いが漏れる。


「シーナは、その…怪我、したのか…」


 クスクスと笑うシーナちゃんを見ていたヤトーが足元に視線をやり痛ましそうに顔を歪める。


「うん。でも結構前の事だから今は痛みはないよ。ただ歩くのはちょっと大変だけどね」


 そう言ってシーナちゃんは何でもないよ、とヤトーに笑いかけた。そうか、とヤトーもぎこちなく笑みを返す。


「ちょっとぉ、私との再会を喜んでくれないのぉ?」


 ひょこっとヤトーの背後からすねた顔をしている女の子が顔を覗かせた。


「リムリアも。無事で良かった」

「なによぉ。ついでみたいに言わないでちょうだい」


 つん、とそっぽを向く子はリムリアと言うようだ。間延びした喋り方が特徴の、シーナちゃんくらいの歳の女の子だ。


「いや…お前なら多分、いや…確実に大丈夫だと思ってたからな…」

「アハハ…」


 ジルとシーナちゃんはリムリアを見て何だかぎこちなく笑っている。その前でヤトーは何処か遠いところを眺めるように虚無ってた。


「もうっ、何なのよアンタ達はぁ!失礼しちゃうわ!」


 腕組みをしたままリムリアはぷんすこと唇を尖らせている。

 折角の再会に怒らせてしまうのはダメでしょ。男の子なんだから女の子には優しくしないと。


「ジル、女の子をいじめちゃダメだよ?」

「はぁ?!」


 私がそう嗜めるとジルは素頓狂な声をあげ、シーナちゃんは横で吹き出した。背中を向けたシーナちゃんの肩がふるふると震えている。

 あれ?何かおかしいこと言ったっけ?


「きゃー!ちょっとアンタ達聞いたぁ!?聞いたわよね!なんて可愛い子なのぉ!私はリムリア、花も恥じらう10歳よぉ!私の事はリムリアお姉ちゃん、て呼んでちょうだぁい!」


 両手を胸の前で組み、身体をくねくねさせてキャーキャー喜ぶリムリアを見て私は気がついた。

 ─あ。この人お姉さんじゃなくてオネェさんだ、と。

 うん、ジルとシーナちゃんとヤトーの反応が今理解できたわ…。




「本当にリムリアは全然変わってないね」


 シーナちゃんの言葉に同郷の皆はふっと吐息で笑った。あ、ニアだけは年上の子達を見上げて首をかしげてたけど。


 そしてひとしきり再会を喜び合った後、ジルが少し沈んだ表情でヤトーに向き直った。


「…ヤトー、俺とシーナが郷を出たのは3日後だった。ヤトーはニアと脱出したんだよな?…隠し通路には他に誰か居なかったのか…?」


 郷の隠し通路。ジル達はそこに隠れていたお陰で助かったと言っていた。

 隠し通路は郷の地下を掘り繋げて迷路状になっているけれど全部が繋がっている訳ではなく、所々に仕掛けがあってそれを解錠すると隣の通路への扉が開くそうだ。

 ヤトーとジルの隠れていた通路は其々違う場所にあって、互いの通路へ向かうにはいくつかの仕掛けを解錠しなければいけないらしく、ふたりともお互い必死だったのもあって確認は出来なかったと嘆いていた。


「やぁねぇ~辛気臭い顔しちゃって。私なんてひとりで此処まで着たのよぉ?か弱い私がひとりで生きてきたんだものぉ。きっと他にも脱出した人が居るに決まってるじゃない」

「か弱い…?」

「何か言ったかしら~シーナぁ?」

「いや…うん、まぁ郷の中じゃか弱い方だったよね…ハハハ…」


 蛇に睨まれたみたいにシーナちゃんが視線を逸らす。


「…あぁ見えてリムリアは運動神経抜群で幼い頃から大人達に付いて狩りに出ていたから、怒らせると面倒なんだ」


 ジルがこっそりと耳打ちしてくれた。てっきりオネェさんの迫力にたじろいでいるのかと思ってたけど、実質そこそこに強いから戦いてたんだね。


「ちなみに私の得意武器は暗器よぉ~?」


 ジルに視線を向け、語尾にハートが付き添うな感じで手のひらからシャキンと小型ナイフが出てきた。笑顔なのに目が笑ってない。怖っ。


「やめろ。物騒なものを出すな」

「はぁ~い」


 ヤトーに窘められリムリアは大人しくナイフを引っ込める。


「ところで皆はこれまでどうしてたんだ?今は伯爵様のお屋敷で働いていると聞いたが…」

「ん?あぁ、俺とニアは人目を避けて山道を進んで来たんだ。まぁ容易くはたどり着けなかったが…。今は裏方の仕事を手伝わせてもらってる。馬の世話から薪割りまで、出来ることは全部やらせてもらってるぞ!」


 ニアはまだ手伝いらしい事は出来ないから、二倍はヤル気で頑張ってるぞ!とヤトーは歯を見せてニカッと笑った。


「私も割りと早く着いたわよぉ?山道には慣れてるし、狩りをしながらゆっくり進んできた感じかしら? お屋敷じゃ私はお洗濯とか繕い物とかしてるわよぉ。針仕事もやってみると意外に楽しいものねぇ~。皆私の事はか弱い女の子だと思ってるみたいで力仕事なんかはヤトーに回されてるわぁ」


 そう言ってテーブルに広げられた繕い物を手繰り寄せヒラリと翳す。


「ただ繕うだけじゃつまらないから刺繍してみたの~。どぉ?」

「…ボロアードか?」

「失礼ね!!猫ちゃんよ!!」


 ジルの突っ込みにリムリアがムキーッ!と歯軋りした。

 残念。私にもボロアードにしか見えなかったよ…。


 繕われた布には大型魔物のボロアードさんが血塗れの姿を晒していた。

 リムリア曰く、「赤いリボンの猫ちゃん」らしい…。




濃いぃ子が出てきました笑


誤字、脱力がありましたらお知らせください(*^^*)

ブクマ&評価ありがとうございます!(*´ω`*)


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