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66・お引っ越し

 



 その後四人で話し合い、ジルとシーナちゃんはお引っ越しすることになった。

 伯爵様が数ヵ月前にドルティア族の子供を三人保護していることを伝えると、ふたりは自分達以外にも助かった者が居たことにホッとしたのか瞳にうっすらと涙を浮かべ、伯爵様に何度も頭を下げた。保護された子供達はどうやら伯爵様のお屋敷で下働きをしているらしい。

 私会ったことないんだけど?と言うと本人達の希望で完全な裏方仕事をしているそうだ。


 ジルとシーナちゃんは同郷の人間に再び会える事を今からとても楽しみにしているようだった。




 そして準備は進み─。



「荷物はこれで全部か?」

「はい。これで全部です」


 元々手持ちの荷物がそんなになかったからなのか、ジルとシーナちゃんのお引っ越し用の荷物は木箱ひとつしかなく、あっという間に準備は終わってしまった。

 ふたりの荷物は私が空間収納で保管済みだ。



 村の入り口で預けたていた伯爵様の愛馬シルバーに小さな荷台が装備されるのを私とシーナちゃんは二人で眺めている。ジルは伯爵様を手伝って居た。流石、手先が器用だねー。


 それにしても…。ふたりの頬にあるあの呪紋、何とかしてあげられないかなぁ。

 ジルはまた包帯を巻き直してあの呪紋を隠しているけれど、隠したって痛みが消えるわけでも、ましてや呪いが失くなるわけでもないのだ。


 実はこっそりジルに呪いを解く魔法【解呪】を試してみたのだけど、全く効果がなかったんだよな~。呪いなのに効かないってドユコト?


「むむむ………」

「どうしたの?ラピス」


 眉間にシワを寄せて唸っているとシーナちゃんが顔を覗き混んできた。


「う~ん…ふたりの呪紋をどうやったら取り除けるのかなぁ…って」

「……ラピスは優しいね」

「だって、痛いんでしょ?私この間いっぱい食べ過ぎてお腹痛くなっちゃって悲しかったから。痛いのってキライだもん」


 つい数日前に欲張ってお腹がパンパンになるまで食べて腹痛に苛まれたんだよね…。あれは苦しかった…。

 なので痛いのは嫌なんだよ。人間誰だって痛いのは嫌だと思う。…あ、いや、例外も居るかもだけどさ…。まぁそんな別世界の住民はさておき、二人が呪紋を嫌だって言うならどうにかしてあげたい気持ちはある。このままでいいって言われたらそれは仕方がないけど。


「そう言えば、その印はずっとほっぺに残ってるものなの?死んじゃっても消えない?」

「ううん。死んでしまったら消えるんだ。確かずっと前にお葬式で見た人の亡骸にはこの紋はなかったよ」

「そうなんだ」


 じゃぁその呪紋ってやつは寄生型なのかな。宿主が死ぬと一緒に死ぬ的な?…要するにこの呪紋は生き物って事か。

 んー、そうなると解呪より先にこの呪紋を捕縛しなきゃ駄目なんだろうか。捕縛…捕縛かぁ…。


「よーし、出発するぞ」


 悶々と考え事をしていると準備が整ったのか、伯爵様がシーナちゃんを荷台に座らせる。道中ガタゴト揺れると足に響くだろうからあの特大クッションの上に座ってもらった。ジルも一緒に荷台の端に腰かける。


 私は伯爵様の前に座らされ、4人で村を出立したのだった。







 長閑とはいえ、全く危険がないとは言えないのがこの世界。


 時には野生の狼の群れに遭遇したり、森から出てきた熊が闊歩していたり、なんて事もある。それらはまぁ言葉が通じないので仕方がない。

 野生の獣と魔物とでは危険度が大きく違うのだけど、襲ってこられたら戦うしかないのだ。


 と、言う訳で─。


「伯爵様ー、この熊さんどうする?」


 私の足元には体長3メートルはあるだろう野生の森の熊さんが地に伏していた。

 急に襲ってきたのでぼこぼこにしてあげました!エッヘン!


「あー、熊は獣臭くて食えないから要らん。燃やしとけ」

「アイサー!『業火(燃えろ)』」


 ボッ!と熊の全身が炎に包まれた次の瞬間にはザッ…と炭になって崩れ去る。


「『洗浄』」


 汚れた手を魔法で出した水で綺麗に洗い、伯爵様の前に飛び移った。


「野生の熊さんて臭ッさいねー!」

「だな。鼻が曲がりそうだ」


 以前も野生の熊さんと戦ったことがあるけど、そいつもやっぱり臭かった。熊さんて臭っさい生き物だって、この世界に来るまで知らなかったよ。


「よし、行くか」

「おー!」


「ちょ、ちょっと待て!なんか凄いものを見た気がするんだが…!?」

「えぇと…あまりに普通なんで僕等がおかしいの…かな…?」


 後ろの荷台から焦ったような声が聞こえて振り返ると、ふたりは狼狽えた様子で消し炭になった熊さんと私を交互に見比べている。


「…お前たちに1つ言い忘れていたことがある」


 そう言って真剣な顔で振り向いた伯爵様に、荷台のふたりがゴクリと息を飲む姿が見えた。


「コイツに取って【普通】ってのは何よりも遠いものだ。いいか、()()()普通なのであって()()()がおかしいんだ。解ったか?」

「………」

「………」


 あ、なぁる…。みたいな悟りを開いた様な顔で頷かないでほしいんだけど。


「失礼な!私だって普通だもん!」


 まるで私が珍獣みたいな言い方じゃないか!酷い!

 ブーッと頬を膨らませると横から伯爵様の指がプスッと空気を抜きにつついてくる。やめい。


「お前、普通の意味をちゃんと理解してるか?普通の子供はバカスカ魔法使わないし野生の熊を素手で倒したりしない」

「マルチス界隈では普通ですぅー!」

「嘘つけ!!」


 やいのやいのしていると荷台のふたりが吹き出し、声を出して笑い出す。

 あの村でのふたりは笑顔を見せてくれても、私にはそれがなんだか少し悲しげに見えていた。けれど今は本当に楽しそうに笑っている。


 私はそんな二人を微笑ましく思いながら見詰めた。伯爵様も同じ様に小さく笑みを浮かべて二人を見ている。私と同じ気持ちなのかもしれない。


 そして太陽が沈み夜の帳が追いかけて来た頃、私達は伯爵様のお屋敷に到着したのだった。




 帰ってすぐ伯爵様は執務室で公爵様への手紙を書き、早馬を走らせた。これで安心だろう。

 とは言えアンデッドの件が片付いた訳じゃないので解決って訳じゃない。


 それはそうとしてジルとシーナちゃんはお風呂に入れられピカピカになっていた。相変わらず顔には呪紋を隠す包帯が巻かれていたけど。


 お風呂でピカピカになったシーナちゃんは更に美少女度が上がっていて思わずメイド姿を想像してサムズアップしそうになった。ごちそうさまです。




登場人物表を作りました~(^-^)

「コイツ誰や!?」って時に役立てばいいかなぁと笑



誤字、脱字がありましたらお知らせください(*^^*)

ブクマ&評価ありがとうございます!(*´ω`*)


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