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63・─じゃなかった!

 


「えっと…伯…おじさんです」



 その後、私が伯爵様にお金を無心しチョップされたのを見ていた少年が怪訝な顔をしていたので、ついでに紹介することに。

 二人は困惑したように顔を見合わせている。

 そりゃそうだよね。親子や親類だとしても全く似てないもん、私と伯爵様。

 一応保護者って付け加えといた方が良いのかな?


「えっと…保護者って事…なのかな?」


 シーナちゃんが視線をさ迷わせながら誰に問うでもなく溢す。


「…まぁ、そんなところだ」


 それに答えたのは伯爵様で、居心地悪そうに苦笑している。そして視線で私に訴えてきた。「話したのか?」と。


「?」


 なんの事?と首を傾げると伯爵様は嘆息を漏らし片手で顔を覆った。そして屈むと私の両方ほっぺをむいーんと伸ばしながら小声で「何しにここまで来たのかな?」と笑顔で凄んで来る。

 幼女虐待だー。


「あ。そっか、忘れてた」


 そうだそうだ、私には公爵様に頼まれた任務があるんだった。

 エルナたんにプレゼントする事ばっか考えてたら忘れてた。

 あ、でも突然「迎えに来たぜ!キラッ」何て言ったら警戒されそうなんだけど…。それにもしかするとこの村に定住するつもりかもしれないし。さて、どう切り出すかな…。


「えっとねぇ、お兄さんは──」


 グルオォォォォ…


 言葉を遮るようにして響き渡る獣(腹の虫)の唸り声に空気が固まる。


 ギュオォォォン…


「…………」

「…………」

「…………」


 三人の視線が私のぽんぽんに注がれた。

 そんなに見詰められるとテレるぜ。


「…お腹すいた」







 我がお腹の野獣が吠えた後、皆でご飯を食べたいと我が儘を言って、私と伯爵様の二人で買い出しに出掛けた。

 見るに困窮した生活の二人にさすがに何か食べさせてくれとは言えない。なので子供らしく「皆で食べたら美味しいよ!」と愛想を振り撒き、微妙な表情の伯爵様を無理矢理納得させる形で引っ張り出したのだ。



「お、お嬢ちゃん、パパとお買い物かい?」


 迷子防止のため伯爵様の腕に抱き上げられながら屋台が並ぶ広場を物色する。そんな中、串焼き肉を売る屋台のおじさんが私に焼きたてのお肉を試食にと食べさせてくれた。

 なんの肉なのかは解んないけどウマイ。

 伯爵様はおじさんのパパ発言に頬を引き攣らせている。


「ん?買うか?」


 伯爵様の問いにお肉をハムハムしながら頷く。


「じゃあ20本頼む」

「あいよ」


 おじさんが大きな葉っぱに焼きたての肉を乗せて行くのを見て、まだお肉をハムハムしていた私は指を3本つき出した。


「…悪い、30本にしてくれ」


 意図を察した伯爵様は直ぐに変更してくれたものの、顔が「食いきれるのか?」と物語っている。食べきれなかったらタッパーならぬ空間収納に保存すれば問題ないし。


 支払いを済ませて品物を受け取った伯爵様が私にそれを差し出す?なんだ?持てってか?


「空間収納に入れとけ。冷めたら旨くねぇだろ」


 あ、な~る。


 回りに人は沢山居るけど、私達の事を見ている人はいないので瞬きの間に空間収納に入れる。ふふん、どーよ。最近は慣れたもんだぜ。


 その後は次々に発見した美味しそうなものを買っては収納した。

 あれ?私荷物持ち扱いされてね?


「よし、だいたい揃ったな。後何か食いたいものはあるか?」

「ん~と…」


 お肉も買ったし、パンやスープ、飲み物も買った。後はデザートに甘いものが欲しいところだ。

 お菓子か果物のどちらかがあれば良いな。

 きょろきょろと見渡すと少し先に果物と野菜を広げたタープが見え、そこでリンゴを買ってあの子達の家に引き返す事にした。






「ただいまー!」


 伯爵様に抱えられたままあの子達の家の扉をノックすると直ぐに少年が顔を出した。


「おか…えり?」


 何故に疑問系。

 少年が不思議そうにしていた理由は直ぐに解った。手元を見て小首を傾げたからだ。

 買い物に行くと言ってたのに何も持ってなかったから不思議に思ったんだろう。


 家の中に入れてもらい、伯爵様と少年にお願いしてテーブルと椅子を一脚を部屋の端に退けてもらう。もう一脚の椅子にはシーナちゃんが座ったままだ。

 私は家具を移動してもらってる間に出しておいたピクニックシートを広げて床に敷く。その上に靴を脱いで上がり依れている四角を綺麗にした。

 そして空間収納からリンゴ箱四個ぶんはある大きなクッションを取り出してシーナちゃんの前に置く。これなら座りやすいと思うんだけど、どうかな。

 ちなみにこの大きなクッション、私のお手製だ。


 あれは冬の寒い日、魔の森の近くででっかい綿花を見つけたのだ。身の丈6mはあった気がする。

 綿が沢山あるとお布団も温かく出来る!と伐採しようとしたら何とこの綿花、花の真ん中がパカッと開いたと思いきや私を襲ってきたのだ。勿論ムカついたので圧し折って綿の部分をむしりとってやった。

 その頃はまだ空間収納魔法は使えなかったので綿花の部分を担いで家に持ち帰り、お陰で私のお布団はふかふかになった。いい思い出だ。

 その後、味をしめた私は両親と兄のぶんのお布団のために綿花を伐採しては持ち帰り、その余りで出来たのがこのでっかいクッション、と言う訳なのだ。


 クッションを座りやすい様に整えてドーゾと勧めると、少年とシーナちゃんは目が点になっているた。伯爵様は顔を半分掌で覆ってものすごーく深く嘆息を漏らす。

 なんや?どしたの。

 と、三人の様子を見ていたら伯爵様が口パクで「バカ」と言って来る。

 一瞬ムカついたけど、少年とシーナちゃんがクッションと私を交互に見ているのを見て、やっと気が付いた。


 ─そう言えば空間収納魔法の容量の事、伯爵様と二人の秘密だったっけ、と。


 ついっと伯爵様を見ると笑顔なのに眉間にガッツリと立て皺が…。何て器用な。


 どうやら伯爵様、自分が出したように見せ掛けるつもりだった様だ。そんなの事前に言ってくれなきゃ解んないんですけど。


「─君、凄いね。空間収納魔法って確か魔法学園に通わなきゃ教えてもらえないって聞いてたんだけど…」


 おや、魔法学園の事知ってるんだ?

 そこで習うって言うのは伯爵様にも聞いてたから間違いないんだろうけど、どうやら二人とも私が空間収納魔法が使えることに驚いただけのようで、容量については突っ込んで来ないところを見るに詳しくはないようだ。


 おっし、セーフ、セーーーフ。


 内心でほっとしていたら笑顔の伯爵様と目が合った。

 ピキッとこめかみが引きつっている。


 あ、アカン。これ怒られるヤツや。


 きっと二人きりになったら怒られるんだろうな、と思うと食欲が…。いや、食べるけどね。

 ま、今は良いや、忘れておこう。


「伯…おじさん、シーナちゃんをクッションに座らせてあげて」

「ん、任せとけ」


 伯爵様がシーナちゃんの体に腕を差し入れた瞬間、少年とシーナちゃんが同時に同じ単語を呟く。


「「…シーナ……()()()…?」」


 伯爵様も私もそれに目を瞬かせた。


「えっと…僕、男の子…だよ?」


 その何処かで聞いたことのある台詞に私と伯爵様はシンクロしてピシリと固まったのだった。


 僕っ娘…─じゃなかったのか!!




と言う事で僕っ娘ではなく美少女顔の男の子でした!爆


誤字、脱字がありましたらお知らせください(*^^*)

ブクマ&評価ありがとうございます!(*´ω`*)

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