59・一応、女の子ですから
「と、言う訳でコレ預かってきましたー!」
早速伯爵様のお屋敷に突撃して現在執務室。
執務室の扉を鬼ノックしたら怒られたけど気にしないもんね!
差し出された手紙を若干訝しげに見詰め、封を切り読み始めた伯爵様の眉間に皺が寄る。
「……よし、解った。─で、アーチェスは他に何か言ってたか?」
「えーと…私にその子を保護して伯爵様の所まで案内するように言われました」
「そうか…」
伯爵様は顎に手を添えて何か考えているのか、ほんの少し沈黙が続いた。
「…実はな、一年ほど前に2人、半年前に一人のドルティア族の子供を領内で保護してるんだ」
「へ~…」
「へ~って…お前はエルディアナ以外の事は本当に反応が薄いな…。まぁいい…。─それでその子供達だが、三人とも「仕事に出てきた」と言っているが手ぶらな上に飲まず食わずの生活を続けていたのか痩せ細っていた。理由を聞いても仕事としか答えなくてな…」
あの子も年の割には細かったけど、ちゃんとご飯が食べられない状態なのかな…?まぁあの村じゃ満足に食料の買い物も出来ないのかもしれない。
伯爵様が言うにはそもそもドルティア族は排他的な一族で滅多なことでは人里に降りないし、受け入れることもないのだそう。
なんだそれ。どっかのファンタジーなエルフかよ。
「うちの領内はともかく、ただでさえ迫害の対象だからな…子供が単独で里を出るとは考えられない。里へ送り届けると告げても首を振るばかりでどうしたものかと思案に暮れていたんだが…」
伯爵様は後頭部をガシガシと掻き毟ると嘆息を溢す。
「里に何か問題が起こったのかも知れないが、あの地は微妙な位置にあって俺からは手を出せないんだ。手紙にアーチェスの方で調査してくれるって書いてあるから、知らせを待つしかないな」
「そっかぁ…」
まぁ私には解んない貴族のあれやこれなんだろう。深くは突っ込むまい。
「取り敢えずその見付けたって子供を先に保護するか」
伯爵様は勢いよく立ち上がると執務室の扉をバーンと開いてひとりで何処かに向かった。と、思ったら戻ってきて一言「待ってろ」と告げて執事さんを連れて今度こそ本当に何処かに消えたのだった。
何だったんだ?
待ってろと言われたので仕方なく執務室の応接ソファーに座って待つことにした。
「…あ、そだ。伯爵様にお金かしてもらわなきゃ」
昨夜あのブローチとペンダントトップを眺めていたら段々欲しくなってきたのだけど、如何せん幼女の私が持つ金銭なんて精々おやつを買える程度。そんなちょびっとのお金じゃ流石にこのアクセを買うことなんて出来ない。そしてどうやってお金を工面するか考えた結果「伯爵様に借りればよくね?」だった。
血判状でも何でもかいてやるぜ。だから金貸してくれ。返金は出世払いにでもしてくれるとありがたい。
「綺麗だなぁ~」
空間収納の中からハンカチに包んだアクセサリーを取り出し眺める。このペンダントトップがエルナたんに似合うと思うんだよねぇ~。お揃いで作って貰えるなら是非とも注文したいものだ。
陽に翳して細石を覗くとプリズムがキラキラと輝く。
私だって一応女の子だからね、綺麗なものや可愛いものは好きな方だ。ただ今の年齢的には似合わないってのが実状だけど。
伯爵様を待つこと数分。シャーロット様が扉から顔を覗かせた。お腹回りのゆったりしたドレスを着ている。後ろにはニィナさんが付いてるからお散歩かな?
「まぁまぁ!ラピスちゃん、ひとりでどうしたの?もう…ジョシュアったら…」
呆れた様子で執務室に入ってきたシャーロット様がニィナさんに手伝われながら隣にゆっくりと腰かける。
「旦那様は何処へ行ったのかしら…」
「執事さんと何処かに行っちゃったので解らないです。ただ待ってろって」
「そうなの?それにしても女の子をひとりで部屋に置き去りにするなんて…」
もう、とシャーロット様が溜め息を吐き、少しふっくらしたお腹を撫でながら「困ったお父様ですね~」と苦笑を溢した。
「そう言えばラピスちゃんは何を見ていたの?とても嬉しそうだったけど」
「あ、これです」
思い出したように顔を上げたシャーロット様に、ハンカチに包んでいたペンダントトップとブローチを見せる。
「あら…」
瞳をパチパチと瞬かせたシャーロット様は「手にとって見ても良い?」と確認してきたので、私はハンカチごとシャーロット様の手のひらに乗せてあげた。
「あらあら…まぁまぁまぁ…素敵ね~…」
シャーロット様は恍惚とした表情で陽に翳したり裏返したりと色んな角度から何度も眺めてはうっとりと息を吐く。
うんうん、確かに素敵だよね~。私もそう思う。
「本当に素敵ね…特にこの花の見事な彫金。まるで本物の花のようだわ。見て、ニィナ。まるで花束をそのまま銀で包んだみたいだわ」
「本当に…素敵ですね、奥様」
女性2人が眼を輝かせて二つのアクセサリーを交互に手に取り見比べている。シャーロット様は貴族なのでもっとおっきな宝石とか付いたアクセサリーを好むのかと思ったけどそうじゃないのかな。
「これを作ったのは何方なの?」
「ええっと…」
え、言って良いのかな?ドルティア族の子が多分作ったんだと思うけど…。シャーロット様はそんな人じゃないって信じてるけど、もし嫌な表情されると今後どういう顔して良いのか解らなくなりそうで怖い。
「─ん?どうした、シャーロット」
「あら、旦那様」
ぐるぐると頭の中で答えを探しているといつの間にか伯爵様が帰ってきていた。
その姿を見たシャーロット様が瞠目している。
「どうした、変か?」
「いえ、…そうではなく」
シャーロット様が戸惑うのも仕方がない。だって伯爵様はいつものきっちりした服装じゃなくて、どちらかと言うと若干粗野っぽさが漂うような…まぁストレートに言えば下町のヤンキー風だからだ。そりゃシャーロット様も驚くよ。
「そうか。なら良いんだが。─どうした?」
ニヤッとひとり納得した顔で頷いた伯爵様はシャーロット様の手の中にある物を見てそれを覗き込んだ。
「ほぅ…良い仕事をするみたいだな。ラピス、これは例の子供が作ったものか?」
作ったかどうかはまだ解らないけど、多分そうじゃないかと思い問い掛けに頷くと伯爵様は満足げに口角を上げる。
「旦那様はこれを作った職人をご存知なの?」
「あぁ、今から保護しに行く子供だ。アーチェスの手紙によるとドルティア族の子供がどうやらひとりでハンディスに居るらしいからな」
「まぁ、ひとりで?それは大変!すぐに迎えに行ってあげてくださいませ」
「おう!まかせとけ」
何気に私が迷った事をさらっと口にした伯爵様にも驚いたけど、やっぱり伯爵様が選んだだけある女性だ。シャーロット様の眼には蔑みの色は無くて、心底心配しているのが解る。
因みに職人の村にはちゃんとハンディスと言う名前があったようだ。
「私、是非ともこのアクセサリーを作った子に会いたいわ!で、オーダーさせていただくの!」
ふん!と鼻息が荒くなってるシャーロット様に笑顔のまま伯爵様の表情が固まる。そして「これは重大任務だな」と苦笑した。
「さて…もうすぐ準備が整うぞ、ラピス」
「はえ?」
何が?と首をかしげる。
そう言えばさっきドルティア族の子供を保護しに行くって伯爵様言ったような…?
ん?あれ?もしかして私と一緒に行くってこと?
「では行ってくるぞ。留守を頼む」
「はい、お任せください。行ってらっしゃいませ」
私がひとり頭にハテナを浮かべているとガシッと粉袋を持ち上げるように抱えあげられた。
そのままズンズンと中庭を抜けて厩舎へと辿り着く。そこでは鞍を装着された黒くて大きな馬と執事さん、それに何故かアー君が待っていた。アー君は何だか不服そうな顔をしている。私何かしたっけ?
シャーロットはジョシュアのオラついた服装にときめいただけです笑
誤字脱字がありましたらお知らせください(*^^*)
ブクマ&評価ありがとうございます!(*´ω`*)




